企業経営理論 戦略の策定と企業戦略 事業戦略 現代の戦略

ドメイン 【平成23年 第1問】

 ドメインは全社レベルと事業レベルに分けて考えられるが、ドメインの定義ならびに再定義に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア D.エーベル(Abell)の「顧客層」「顧客機能」「技術」という3次元による事業ドメインの定義では、各次元の「広がり」と「差別化」によってドメインの再定義の選択ができる。×〇

イ 事業ドメインは将来の事業展開をにらんだ研究開発分野のように、企業の活動の成果が外部からは見えず、潜在的な状態にとどまっている範囲も指す。〇

ウ 自社の製品ラインの範囲で示すような事業ドメインの物理的定義では、事業領域や範囲が狭くなってT.レビット(Levitt)のいう「近視眼的」な定義に陥ってしまうことがしばしば起こる。〇

エ 全社ドメインの定義によって企業の基本的な性格を確立できるが、製品やサービスで競争者と競う範囲は特定できない。×複数の事業を展開している企業では、企業ドメインは、複数の事業ドメインを包括することになります。この場合、企業ドメインは、企業の戦う範囲を限定することに役立ちます。

オ 単一事業を営む場合には製品ラインの広狭にかかわらず事業レベルの定義がそのまま全社レベルの定義となるが、企業環境が変化するためにドメインも一定不変ではない。〇企業環境が変化した場合は、ドメインの見直しが必要であることは変わりません。

成長戦略(多角化等) 【平成20年 第4問】

 企業の成長をめぐる戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 自社が優位を占める成長分野への他社の参入を防ぐために、積極的に生産の増強を図ったり、広告宣伝などのマーケティング活動を展開して、市場支配力を強める戦略を追求する。〇

イ 社内の研究開発能力が不十分な場合、外部から技術導入を図ったり、重要な技術部品を社外から調達せざるをえないので、低価格戦略しかとりえなくなる。×この場合でも、提携により、技術導入したり、重要な技術部品を社外から調達することができれば、高付加価値な製品を提供できる場合があります。そのため、必ずしも低価格戦略を取る必要はありません。

ウ 多角化は成長には有効であるが、総花的な戦略を強めて、企業の競争優位を喪失させるので、収益を悪化させることになる。×多角化は、必ずしも収益を悪化させるとは限りません。例えば、関連する事業に多角化することで、シナジーや、範囲の経済性を発揮できれば、収益を増加させることも可能です。

エ リストラクチャリングは自社の強みを喪失させるので、既存事業分野の価格競争や技術開発競争が激化しているときには回避しなければならない。×

リストラクチャリングは、事業構造を変革することです。例えば、不採算分野から撤退したり、成長分野に経営資源を集中することで、競争力を高めることを目的としています。

 そのため、記述にある「既存事業分野の価格競争や技術開発競争が激化しているとき」には、リストラクチャリングが求められるときです。

多角化における事業間の関連性 【平成29年 第1問】

 多角化した企業のドメインと事業ポートフォリオの決定に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 多角化した企業の経営者にとって、事業ドメインの決定は、企業の基本的性格を決めてアイデンティティを確立するという問題である。×

イ 多角化した企業の経営者にとって、事業ドメインの決定は、現在の活動領域や製品分野との関連性を示し、将来の企業のあるべき姿や方向性を明示した展開領域を示す。×

ウ 多角化した事業間の関連性を考える経営者にとって、企業ドメインの決定は、多角化の広がりの程度と個別事業の競争力とを決める問題である。〇×個別事業の競争力は【企業ドメイン】ではなく、【事業ドメイン】①事業範囲②事業の見方との関連が強いと考えられます。

エ 多角化した事業間の関連性を考える経営者にとって、事業ドメインの決定は、全社戦略の策定と企業アイデンティティ確立のための指針として、外部の多様な利害関係者との間のさまざまな相互作用を規定する。×

オ 多角化を一層進めようとする経営者は、事業間の関連性パターンが集約型の場合、範囲の経済を重視した資源の有効利用を考える。〇集約型多角化はルメルトの多角化戦略で「範囲の経済」を重視しています。

【アンゾフの多角化戦略】

  • 水平型多角化:現在の顧客と同じタイプの顧客を対象として、新製品を投入
  • 垂直型多角化:現在の製品の川上や川下に対する多角化。川下への多角化は「前方的多角化」、川上への多角化は「後方的多角化」という(前方は顧客から見て近い商流、つまり流通業を指し、後方は顧客から見て遠い商流、つまり製造業を指す。)
  • 集中型多角化:現在の製品とマーケティングや技術の両方、またはいずれか一方に関連がある新製品を新たに市場に投入
  • 集成型多角化:コングロマリット型多角化で、現在の製品と既存の市場の両方にほとんど関連がない

【ルメルトの多角化戦略】

  • 集約型多角化:事業間の関連性が網の目状に緊密で、範囲の経済を重視
  • 拡散型多角化:現在保有する経営資源を利用して次々に新しい分野に進出するが、事業全体として緊密なつながりを持たない資源展開

多角化の誘因 【平成30年 第1問】

企業の多角化に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 外的な成長誘引は、企業を新たな事業へと参入させる外部環境の条件であるが、主要な既存事業の市場の需要低下という脅威は、新規事業への参入の誘引となりうる。〇既存の市場の需要低下は脅威(Threat)に該当し、別の市場に進出する誘因となります。

イ 企業の多角化による効果には、特定の事業の組み合わせで発生する相補効果と、各製品市場分野での需要変動や資源制約に対応し、費用の低下に結びつく相乗効果がある。×逆

ウ 企業の本業や既存事業の市場が成熟・衰退期に入って何らかの新規事業を進める場合、非関連型の多角化は、本業や既存事業の技術が新規事業に適合すると判断した場合に行われる。×本業や既存事業の技術が新規事業に適合すると判断した場合に行われるのは関連型多角化です。

エ 事業拡大への誘引と障害は、企業の多角化の形態や将来の収益性の基盤にまで影響するが、非関連型の多角化では、既存事業の市場シェアが新規事業の市場シェアに大きく影響する。×非関連型多角化は既存事業とは関連性が希薄であり、既存事業の市場シェアは新規事業の市場シェアには影響を及ぼしません。

オ 内的な成長誘引は、企業を多角化へと向かわせる企業内部の条件であり、既存事業の資源を最大限転用して相乗効果を期待したいという非関連型多角化に対する希求から生じることが多い。×既存事業の資源を最大限転用して相乗効果を得るのは、非関連型多角化ではなく関連型多角化です。

シナジー効果 【平成26年 第5問】

シナジー効果に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 動的なシナジーよりも静的なシナジーをつくり出せるような事業の組み合わせの方が望ましい。×動的シナジーは時間経過に応じて効果が高まることから静的シナジーを作り出す事業の組み合わせよりも望ましいといえます。

イ 範囲の経済の効果とは別個に発生し、複数事業の組み合わせによる費用の低下を生じさせる。×シナジー効果は、範囲の経済性効果を生じるため、別個に発生するものではありません。

ウ 複数事業の組み合わせによる情報的資源の同時多重利用によって発生する効果を指す。〇シナジー効果は複数事業の組み合わせによる情報資源の同時多重利用により発生します。

エ 複数の製品分野での事業が互いに足りない部分を補い合うことで、企業全体として売上の季節変動などを平準化できる。×相補(コンプリメント)効果の説明です。

シナジー効果が時間に依存するのが動的シナジーであり、依存しないのが静的シナジーです。時間経過により生み出される動的シナジーには組織学習や技術革新などであり、時間経過と共に企業成長への影響が大きくなります。このような動的シナジーを得られる事業の組み合わせは静的シナジーを得られる事業の組み合わせよりも大きくなります。

規模の経済性・経験曲線 【平成26年 第7問】

規模の経済と経験曲線および経験効果に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 規模の経済と経験効果は連続的に生じ、コスト低下の効果が生じない停滞期間が存在することは少ないが、物理的な特性が効率性の向上の水準を制限する場合もある。×経験効果連続的に生じますが、規模の経済は水平的M&Aや大規模設備投資等によるため、連続的に行うことはできず停滞期間が生じます。物理的な特性が効率性向上の水準を制約するとは、例えば、生産量の上限に至ったときに、新たな設備投資をしなければなりませんが、新設備の稼働には人員の配置や製品の広告宣伝費用のような収益性を阻む固定費が発生し、投資効率を低下させることをいいます。

イ 規模の経済の追求には相当額の投資が必要であり、多くの場合、特殊化した資産が投資対象となって長期間にわたって実現されるコストの減少を通じた投資回収を目指す。〇特殊化した資産の稼働率が高まることで、製品ごとに占める固定費が少なくなり、「損益分岐点売上高」が低下します。売上と損益分岐点の差である利益が増加することで投資回収が進みます。

ウ 規模の経済は、ある一定程度の総生産量が増加することによるコストの低下を指し、大規模な工場施設の建設などで模倣することはできるが、経験効果の構築にはある程度の時間を必要とする。〇経験効果累積生産量比例します。単年度の生産量増加はその年の生産量を増加させることですぐに効果がでますが、累積生産量の増加は過年度の累積生産量の影響を受けるため効果を得るまで時間がかかります。

エ 規模の経済は、業界内において利益をあげられる企業数の上限を決定する一因となり、市場規模に対する生産の最小効率規模が大きいほど、当該業界に存在できる企業数は少なくなる。〇

オ 経験曲線は累積生産量の増加に伴ってコストが低下することを表し、累積生産量に対応する技術の進歩や改善等の要因からも生じるが、生産機能において生じる経験効果に限定されない。〇全社的な取組みで生産機能に限られない要因から経験効果が生じるものもあります。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM) 【平成24年 第7問】

 戦略事業単位とプロダクト・ポートフォリオ・マトリックスに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 資金の投入によって成長市場で競争優位の実現を期待できる「金のなる木」の選択は重要であり、競争優位性を期待できない「負け犬」事業からは事業担当者へのインセンティブを考慮して撤退を検討する必要がある。×「金のなる木」の事業は、自社のシェアは高いですが、市場成長率は低くなっている事業です。これは、成熟期の事業であり、安定的に収益を上げられますが、大きな投資をしても成長が見込めない事業です。

イ 戦略事業単位の責任者は、当該事業の成功に必須の技術、製造、マーケティングに関して、計画の範囲内で自由に対処できる。×〇戦略事業単位は、企業の計画の範囲内で、独立的に運営することができます。

ウ 「花形商品」の事業は、「負け犬」ではなく「問題児」の中の特定の事業に対する集中的な投資の主要な資金供給源として重要である。×

エ プロダクト・ポートフォリオ・マトリックスの考え方は、外部からの資金調達を考慮して低コスト戦略を重視している。×PPM では、「金のなる木」の事業で得た資金を、「問題児」や「花形」の事業に投資するのが基本です。そのため、外部からの資金調達ではなく、内部的な資金調達を前提としています。

オ プロダクト・ポートフォリオ・マトリックスの考え方は、主として事業の財務面だけではなく、事業間のマーケティングや技術に関するシナジーも重視している。×PPM では、事業の財務面を中心に扱います。また、事業間のシナジーが考慮されていません。これらは、PPM の問題点として指摘される点です。

事業再編と買収 【平成30年 第4問】

企業の事業再編と買収の戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 企業の一部門を買収するタイプの買収は、通常、狭義のレバレッジド・バイアウトと呼ばれ、もともとは経営資源の拡大を意図したが、マネジメント・バイアウトやエンプロイー・バイアウトとは異なる範(はん)疇(ちゅう)の手法である。〇×企業の一部門に限らず全体を買収することもあり一部門としている点が誤った記述です。企業の一部門の買収はLBOに限らず自社にはない経営資源の獲得を目的とすることもあり、経営資源の拡大を意図したものである点は正しい記述です。しかし、MBOやEBOはLBOを利用して行われることもあり、異なる範疇の手法とはいえません。

イ 事業規模の縮小は、通常、売却、企業の一部門の分離独立であるスピンオフ、 企業の中核事業に関連しない部門の廃止などの手法を指し、事業ポートフォリオを変えて短期的には負債の削減につながる。〇×「事業規模の縮小」は販売量や従業員の削減等の経営資源の削減をいいます。スピンオフや非中核事業からの撤退は「事業範囲の縮小」に該当します。

ウ 事業範囲の縮小は、企業買収によって期待した価値を実現できない際の買収見直しに用いられ、通常、従業員数や事業部門数の削減を伴い、事業規模の縮小と同様に事業ポートフォリオを変えることになる。×従業員数や事業部門数の削減は、「事業範囲の縮小」ではなく、「事業規模の縮小」です。

エ 自社資産を担保に調達した資金によって、オーナーではない経営者が自社を買収するタイプの買収は広義のレバレッジド・バイアウトの一形態であり、通常、買収後には経営の自由裁量の確保や敵対的買収に対する防衛などのために株式を非公開とする。〇オーナーではない経営者による買収はMBOであり、通常、買収後に経営の自由裁量の確保や敵対的買収に対する防衛のために株式を非公開にします。MBOの必要資金を買収対象である自社資産を担保に調達すればLBOに該当します。従って、広義のLBOの一形態ということができます。

オ プライベート・エクイテイ投資会社が、企業の資産の大部分を買い取って当該企業を非上場化するレバレッジド・バイアウトでは、通常、当該企業の業務を維持し、資産の売却は長期的な計画の下で行う。〇×プライベート・エクイティ投資会社(PE)は、長期的な計画のもと、非上場企業を買収し、収益性を高めて上場させ、上場後に売却してリターンを得ます。買収により非上場化することが目的ではありません。

市場占有率 【平成25年 第26問】

 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 清涼飲料水の中のあるカテゴリは、年間を通して様々な機会に私たちが楽しむ飲み物としてすっかり定着している。その生産量もこの10年あまりの期間に10 倍以上にも増加した。他の主要な飲料カテゴリと比較しても群を抜く伸びである。飲料メーカーX社は2年後を目途にこのカテゴリへの新規参入を検討している。

 それに先駆けて、X社のマーケティング部門では、①このカテゴリの製品市場における市場占有率(金額ベース)についてのデータ分析を行った。それをもとに、この市場の上位メーカーへの集中度がどのような状態になっているのかを検討することにした。この時のデータを簡易的に整理したものが下表である。表中の「その他」を分解してみると、30 社がそれぞれ1%ずつの市場占有率を持つ構図が見られる。

順位 メーカー名 市場占有率(%) 
(金額ベース)
1A社25
2B社15
3C社15
4D社10
5E社5
その他30
合計100

 文中の下線部①に示す「市場占有率」に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 ア X社が参入を検討している製品市場での上位5社による累積占有率は70%に達している。この市場で第4位に位置するD社の占有率は10 %である。これをいわゆるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでの相対シェアとして換算すると0.55 となる。×

1位が25%
4位が10%
「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)でのD社の相対シェア
=D社の市場シェア÷1位の企業のシェア
10% ÷ 25% = 0.4

 イ 寡占度が高い市場では、追随者(フォロワー)としての新規参入が比較的容易である。×

 ウ 国内のある製品市場においての個別メーカーによる金額ベースの市場占有率を算出するためには、a:「自社の当該製品の国内向け出荷額」、b:「当該製品に関する国内の全事業者による出荷額」、c:「当該製品に関する海外への輸出額」を用いる。算出式は、市場占有率(%)={a/(b+c)} ×100 となる。×
市場占有率(%)={a/(b-c)}×100
となります。{a/(b+c)}×100ではありません。

 エ 表中のE社はこのカテゴリにおいて極めて差別化水準の高い新製品を開発し、高価格の小売形態を中心とする販売経路政策を通じて、価格プレミアム化に成功した。このことから、出荷数量ベースでの同社の占有率は、売上高ベースのそれと比べて低い値となっている。〇

MBI(Management Buy-In) 【平成26年 第4問】

 A 社は、現社長が高齢化したために、家族や親族以外の者への事業承継を MBI(management buy-in)によって行うことを検討している。MBI に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 現社長と役員は、投資ファンドから資金を調達し、現経営陣を支援してもらう。×現経営陣が経営をするため、MBIではありません。

イ 現社長は、社外の第三者に自社株式を買い取らせ、経営を引き継いでもらう。〇MBI

ウ 現社長は、投資ファンドに自社株式を買い取ってもらい、経営を外部から監視してもらう。×社外の投資ファンドに株を買い取ってもらいますが、経営を監視するだけであり、経営者になるわけではありません。よって、MBIではありません。

エ 現社長は、長く勤めた営業部長に自社株式を買い取らせず、経営を引き継いでもらう。×誰にも株を買い取らせないためMBIではありません。

オ 現社長は、長く勤めた営業部長や経理課長に自社株式を買い取らせ、営業部長に経営を引き継いでもらう。×EBO

●MBO(Management Buy Out、マネジメントバイアウト)

 現在の経営陣が、株を買い取り、自社や事業を買収することを表します。これにより、経営陣が自社の経営権をもつオーナー経営者になります。

●MBI(Management Buy In、マネジメントバイイン)

 MBIは、MBOの派生版といったものです。MBIは企業の外部の経営者が、株を買い取り、経営権を取得するものです。

MBO(Management Buy Out) 【平成29年 第6問】

 オーナー社長が経営する企業の事業承継の方法としてMBO(Management buy-out)がある。MBO に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア オーナー社長は、外部の投資ファンドに株式を売却して、役員を刷新して経営を引き継がせる。×MBOは現在の経営陣が自社の株式や部門を買い取るものです。外部の投資ファンドは現在の経営陣ではありません。また、MBOにおいて役員を刷新するとは限りません。

イ オーナー社長は、勤務経験が長いベテランで役員ではない企画部長と営業課長に株式を売却して、経営を引き継がせる。×EBO 企画部長と営業課長は役員ではなく、従業員であるため、MBOではなく、EBOとなります。

ウ オーナー社長は、社外の第三者に株式を売却して、役員ではない従業員に経営を引き継がせる。×MBOは社外の第三者に株式を売却するものではなく、また、役員ではない従業員ではなく現在の経営陣に経営を引き継ぐものです。

エ 財務担当役員と同僚の役員は、投資ファンドの支援を受けることなどを通じてオーナー社長から株式を買い取り経営を引き継ぐ。〇MBO 資金面での必要な支援を投資ファンドから得たとしても、現在の経営陣である財務担当役員と同僚の役員が株式を買い取り、経営を引き継ぐことはMBOになります。

オ 役員ではない企画部長と営業課長は、金融機関から融資を受けてオーナー社長から株式を買い取り、役員と従業員を刷新して経営を引き継ぐ。×EBO 従業員である企画部長と営業課長が株式を買い取るものであるため、MBOではなく、EBOです。また、MBOにおいては役員と従業員を刷新するとは限りません。

企業の経営陣ではなく従業員がその会社の事業を買収したり、経営権を取得することをEBO(Employee buy-out)

アウトソーシング 【平成28年 第9問】

 企業は市場の変化に対応するため、限られた経営資源を特定の事業や事業領域に集中特化し、事業活動の一部をアウトソーシングすることがある。企業のそのような戦略対応に関する記述として最も適切なものはどれか。

ア アウトソーシングすることによって、自社能力の適用の幅が狭くなり、顧客ニーズへの対応力も弱まるので、新規顧客の開拓が難しくなる。×これまで製品を生産していた企業が生産という業務をアウトソーシングすることによって、自社の経営資源をマーケティングに集中するといった場合、顧客ニーズへの対応力は強化され、新規顧客の開拓も可能となります。顧客ニーズへの対応力が弱まり、新規顧客の開拓が難しくなるとはいえません。

イ アウトソーシングする事業領域と自社で取り組む事業領域を峻別して経営資源を集中特化することによって、特定事業領域で独自能力の構築を目指すことが可能になる。〇アウトソーシングする事業領域と自社で取り組む事業領域を峻別して経営資源を集中特化することにより、限られた経営資源をコアコンピタンスに集中することができます。効率的な経営をすることができるため、特定事業領域で独自能力の構築を目指すことが可能になります。

ウ アウトソーシングによって外部の専門能力を利用する傾向が強まると、同種の社内能力を維持強化しようとする能力構築の動きが強まり、企業活動が活性化する。×アウトソーシングによって外部の専門能力を利用する傾向が強まると、同種の社内能力を維持強化しようとする能力構築の動きがなくなるため、アウトソースした業務のノウハウが蓄積できないことになります。同種の社内能力を維持強化しようとする能力構築の動きが強まるわけではありません。アウトソースした業務のノウハウが蓄積できないことというのが、アウトソーシングのデメリットです。

エ アウトソーシングを行い生産から販売まで一貫した事業に統合化することによって、事業の伸縮自在性が高まるので、外部環境の急激な変化に対応することができる。〇×アウトソーシングを行うことで生産から販売まで一貫した事業に統合化することはできません。これは、事業活動が社内で完結しないからです。一方、事業環境が悪化した場合には、アウトソーシング契約を解除するなどにより対応することができるため、アウトソーシングにより事業の伸縮自在性は高まります。

リストラクチャリング 【平成27年 第10問】

 リストラクチャリング(事業構造の再構築)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア リストラクチャリングの一環として事業売却を行う場合は、対象となる事業の従業員に時間をかけて納得してもらい、ボトムアップで売却ステップを検討していくことが課題となる。×納得してもらうためにはどれだけ時間をかけてもいいというわけではありません。時間をかけすぎることなくリストラクチャリングを円滑に進めるためには、ボトムアップではなく、トップダウンで売却ステップを検討していくことが必要となります。

イ リストラクチャリングの一環として事業を子会社として独立させる場合は、各子会社に大幅に権限を委譲し、意思決定の迅速化を図ることが課題となる。〇リストラクチャリングの一環として事業を子会社として独立させる場合は、経営成績に責任を持つ独立採算制を採らせることとなります。そのため、本社から各子会社に大幅に権限を委譲し、意思決定の迅速化を図ることが課題となります。

ウ リストラクチャリングを円滑に進めるうえでは、既存の取引先との取引量を増やすことを目的に、リベートや割引販売などの販売促進策を積極的に行うことが課題となる。×既存の取引先との取引量を増やすことを目的に、リベートや割引販売などの販売促進策を積極的に行うことが課題となるのは、市場浸透戦略を円滑に進める場合です。リストラクチャリングを円滑に進めるうえでの課題ではありません。

エ リストラクチャリングを円滑に進めるうえでは、業務プロセスを抜本的に見直すことによって業務を再設計し、業務の効率化を図ることが課題となる。×BPR 業務プロセスを抜本的に見直すことによって業務を再設計し、業務の効率化を図ることが課題となるのは、リエンジニアリングを円滑に進める場合です。リストラクチャリングを円滑に進めるうえでの課題ではありません。

オ リストラクチャリングを円滑に進めるうえでは、従業員のモチベーションを上げていくために、ストックオプションを導入していくことが課題となる。×従業員のモチベーションを上げていくために、ストックオプションを導入していくことが課題となるのは、経営参画を円滑に進める場合です。リストラクチャリングを円滑に進めるうえでの課題ではありません。

リエンジニアリング

 リエンジニアリングは、業務プロセスを抜本的に見直すことによって業務を再設計し、業務の効率化を図ることです。より正確には、BPR (Business Process Reengineering)といいます。

 リストラクチャリングは企業の部門が対象であり、会社全体の構造を変える戦略レベルのことです。これに対し、リエンジニアリングは業務のプロセスが対象であり、業務のプロセスを変える運用レベルのことです。

戦略グループ

 戦略グループに関する説明として、最も適切なものはどれか。


ア 戦略グループとは、親会社の企業理念のもとに同じ戦略をとる企業グループのことをいう。×同じ業界に存在する企業の中で、同じような戦略を採用している企業のグループのことをいいます。

イ 移動障壁とは、同じ業界で、ある戦略グループから別の戦略グループに移動する際の障壁のことをいう。×〇

戦略グループとは、同じ業界に存在する企業の中で、同じような戦略を採用している企業のグループのことをいいます。

 同じ業界でも、異なる戦略グループに属する企業は、市場ターゲット、製品、価格、流通、プロモーションなどの方法が異なります。結果的に、戦略グループが異なれば、収益性も異なってきます。

 戦略グループ間を移動するときには移動障壁が存在します。移動障壁は、同じ業界で、ある戦略グループから別の戦略グループに移動する際の障壁のことです。

 「参入障壁」と「移動障壁」の違いを理解しておきましょう。「参入障壁」は、業界の外から新たにその業界に参入するときの障害のことです。これに対して、「移動障壁」は、同じ業界内でのことであることに注意

ウ 同じ業界であれば、異なる戦略グループに属する企業であっても、収益性は同じとなる。×同じ業界でも、異なる戦略グループに属する企業は、市場ターゲット、製品、価格、流通、プロモーションなどの方法が異なります。そのため、戦略グループが異なれば、収益性も異なってきます。

エ 同じ業界であれば、異なる戦略グループに属する企業であっても、ある戦略グループに移動しようとする際に障害となるものは同じとなる。×同じ業界にあっても、ある戦略グループに移動しようとする企業にとって、移動する際に障害となるものは戦略グループごとに異なります。移動障壁の大きさは、戦略グループによって異なるのです。この相違が、業界内での収益率の差を生み出す一因となっています。

撤退障壁

撤退障壁に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

ア 事業に対する経営者の愛着や従業員への思いやり。〇事業に対する経営者や従業員への思いやりは、撤退障壁となります。

イ 不採算に陥っている部門を撤退させる仕組みが社内にない。〇×撤退を躊躇する原因の一つに社内での撤退の意思決定ルールがない、個別事業は撤退の条件を最初から決めていないことが多い、ということはあります。しかし、あくまで「躊躇する原因」にしかすぎず、撤退障壁というレベルではありません。

ウ 特定の業種にしか利用できない資産は清算価値が低く、移動や他に流用しようとするときのコストが高い。〇特定の業種しか利用できない資産は、買手がその業界の企業に限定されるため低価格でしか売却できないことがあります。また、設備の機能が適合しないなど他の事業への流用は困難なこともあります。

エ 不採算に陥っている部門を撤退させると他の部門の不利益を招く。〇部門相互のシナジーが発揮されている場合、一方の部門から撤退するとシナジーが失われ、これまで通りの強みが発揮できなくなります。

撤退障壁は、事業の収益性が低い状態であっても、その業界にとどまらざるを得なくする要因、つまり障壁です。

ポーターの3つの基本戦略

 ポーターの3つの基本戦略に関する説明として、最も適切なものはどれか。


ア ポーターは、コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、フォロワー戦略の3つの基本戦略を示した。ポーターは、競争優位の源泉として、低コストと差別化を挙げ、戦略対象の幅を勘案し、コストリーダーシップ戦略差別化戦略集中戦略の3つの基本戦略を示しました。集中戦略であって、フォロワー戦略ではありません。

イ コストリーダーシップ戦略とは、価格以外の点で自社の製品は競合企業の製品と異なるものであることをアピールしようとする戦略のことである。×

ウ 差別化戦略とは、競合企業よりも同種製品を低いコストで生産・販売できるようにし、価格という点で差別化しようとする戦略のことをいう。×価格以外の点で自社の製品は競合企業の製品と異なるものであることをアピールすることにより、差別化優位を獲得しようとする戦略のことをいいます。この差別化を生み出すものとして、技術、デザイン、ブランドイメージ、アフターサービス、支払条件等のサービスなどがあります。ファーストフードのハンバーガー業界でいえば、価格は高くともおいしさを追求するモスバーガーが採用している戦略です。ちなみに、集中戦略は、チキンバーガーというものに特化したバーガーを提供するケンタッキーフライドチキンが採用している戦略です。

エ コストリーダーシップ戦略と差別化戦略の両方を同時に追求することは一般には難しいが、技術進歩の激しい先端技術産業においてはこの両方を同時に追求することが可能となる場合がある。〇コスト優位と差別化優位はトレードオフの関係にありますので、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略の両方を同時に追求することは、一般には難しいものとなります。コストリーダーシップ戦略と差別化戦略の両方を同時に追求し、失敗するケースを、スタック・イン・ザ・ミドル(Stuck in the Middle)といいます。しかし、M.E.ポーターは、技術進歩の激しい先端技術産業においてはこの両方を同時に追求することが可能となる場合があると指摘しています。例えば、腕時計の製造業界では、高機能の付加価値を付けながら価格の安い製品を生み出すことに成功しました。また、パソコンにおいても、同様に、ほんの2年前のモデルのものよりも高い機能が備えられていながらも価格の安い製品が販売されています。

M.E.ポーターは、競争優位の源泉として、低コスト差別化を挙げ、戦略対象の幅を勘案し、次の3つの基本戦略を示しました。

コストリーダーシップ戦略(低原価戦略)

 業界全体をターゲットにして、低コストにより競争優位を築く戦略

差別化戦略

 業界全体をターゲットにして、差別化により競争優位を築く戦略

集中戦略焦点絞り込み戦略

 特定のセグメントに競争範囲を狭めることによって、自社の経営資源を集中的に活用する戦略

差別化戦略

 差別化戦略に関する記述として、最も不適切なものはどれか。


ア ポーターの3つの基本戦略の考え方によると、特定のセグメントに絞り込み、他社と差別化した製品により競争優位を得ようとするものは、集中戦略ではなく、差別化戦略に分類される。〇×他社と差別化しても、特定のセグメントに絞り込む場合は、差別化戦略ではなく、集中戦略(もしくは差別化集中戦略)に分類されます。

イ 業界全体をターゲットにして、強力なマーケティング力によりブランドロイヤルティを確立することは、差別化戦略の1つである。〇

ウ 業界全体をターゲットにして、顧客のクレームに細心の注意を持って対応し、顧客のニーズにあったサービスの充実を図り、繰り返してそのサービスを受けてもらうようにすることは、差別化戦略の1つである。〇

エ 競合企業よりも同種製品を低いコストで生産・販売できるようにし、価格という点で差別化しようとする戦略は、差別化戦略とはいわない。〇競合企業よりも同種製品を低いコストで生産・販売できるようにし、価格という点で差別化しようとする戦略は、差別化戦略ではなく、コストリーダーシップ戦略です。

価値連鎖

 価値連鎖に関する次の文中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 価値連鎖とは、M.E.ポーターが提唱した概念で、製品が消費者に届くまでの付加価値を生む一連のプロセスのことをいう。これは、( A )と( B )からなり、( A )は、主活動と支援活動に分けられる。主活動は、( C )、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービスの順に構成され、支援活動は、全般管理(インフラストラクチャ)、人事・労務管理、技術開発、( D )からなる。価値連鎖により、経営活動の過程を細かく分けて分析し、競争優位の源泉や課題を明らかにすることができる。

ア 
A:価値活動〇 B:マージン〇
C:調達活動 D:購買物流

イ 
A:価値活動〇 B:マージン〇
C:購買物流〇 D:調達活動〇

ウ 
A:マージン B:価値活動
C:購買物流 D:調達活動

エ 
A:マージン B:価値活動
C:調達活動 D:購買物流

M.E.ポーターは、企業が基本戦略を実行するためには、企業の様々な活動を戦略に沿って実行していく必要があり、価値連鎖という考え方を示しました。

 価値連鎖バリューチェーン)とは、企業の内部の活動によって、付加価値が生み出される流れを表します。価値連鎖では、次の図のように、企業の活動を5つの主活動と4つの支援活動に分解します。これらの活動のことを価値活動(価値創造活動)と呼びます。これらの価値活動全体が生み出す価値は、顧客が商品を購入しようとする金額で測定できます。また、マージン、つまり利益は、価値活動が生み出す価値と、各活動のコストの差で表されます。

価値連鎖のフレームワークを使うことにより、どの価値活動が付加価値を生み出しているか、もしくは生み出していないか、どの価値活動でどれぐらいコストをかけているかを分析できることが企業にとって重要となります。さらに、活動間の連鎖、つまり連携が重要です。活動間の連携をうまく行い、全体で最適化することによって、より模倣困難な競争優位性を築いていくことができます。

競争地位別の戦略

 コトラーの競争地位別の戦略に関する説明として、最も適切なものはどれか。


ア コトラーは、競争地位によって、企業をリーダー、チャレンジャー、ニッチャー、キャッチャーに分類した。×コトラーは、競争地位によって、企業をリーダーチャレンジャーニッチャーフォロワーに分類しました。

イ コトラーによると、リーダーは、市場の規模を拡大させるために、常にコストリーダーシップ戦略をとるべきとされる。〇×市場拡大 リーダーは、市場の規模を拡大させるために、常にコストリーダーシップ戦略をとるというわけではありません。リーダーの戦略のポイントは、市場を拡大することと、同質化を図ることです。リーダーはナンバー1のマーケットシェアを持つ企業ですので、市場が大きくなれば最も恩恵を受けることができます。リーダーは経営資源も豊富ですので、市場を拡大していくために、コストリーダーシップ戦略以外にも、例えば、フルライン戦略を取ることがよくあります。また、他の企業が新しい製品を出したり、様々な差別化を仕掛けてきたりした場合には、それに追随して同質化をする戦略をとります。リーダーは最も経営資源が多いため、自分よりもマーケットシェアが小さい相手が行うことを真似していれば、自然に勝てるからです。

ウ コトラーによると、チャレンジャーは、リーダーのマーケットシェアを奪うために、リーダーが追随できない差別化戦略をとるべきとされる。〇コトラーによると、チャレンジャーは、リーダーのマーケットシェアを奪うために、リーダーが追随できない差別化戦略をとるべきとされます。チャレンジャーとは、マーケットシェアがリーダーに次ぐ大きさを持つ企業のことをいい、リーダーを追い越そうとしている企業のことです。チャレンジャーは、リーダーとなるために、製品、価格、流通、広告などの点でリーダーと異なる差別化戦略を採用することになります。

エ コトラーによると、ニッチャーは、特定市場でのミニリーダーになるために、まずはすべての市場に対してコストリーダーシップ戦略をとるべきとされる。×コトラーによると、ニッチャーは、特定市場でのミニリーダーになるために、ニッチ(隙間)市場、すなわち、競争相手がいないか、ごく少数の小さな市場でミニリーダーになるために、特定市場に経営資源を集中させる集中戦略を採用します。ニッチャーは経営資源に乏しいわけですから、すべての市場に対してコストリーダーシップ戦略をとることは難しいです。

5つの競争要因 【平成22年 第10問】

 マイケル・ポーターは、競争戦略を策定する際に考慮すべき産業の利益率や競争に影響を与える要因として、下図の5つを指摘している。この図に関する説明として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ。


ア 買い手への対応は、消費者のクレームや消費者行動の変化に対処しつつ、高いマージンに結びつく市場との良好な関係を構築することが重要である。〇

イ 供給業者については、資金や原材料の供給先や労働市場との交渉力の保持が重要であるので、そのためには特定の資源の供給者に強く依存することなく、常に代替的な資源の開発に取り組むなど外部への依存性が強くならないようにしておくことが重要である。〇

ウ 競争業者との戦いは、マージンの高いドメインに自社を位置づけて、そこでの防衛的な地位を保つために、徹底した差別化戦略を展開することが第一に重要である。〇×他にも取り得る戦略があります。例えば、他社よりも低コストを実現するコストリーダーシップ戦略を採用する企業もあり、企業によって最適な戦略は異なります。

エ 新規参入については、その可能性や参入を受けた場合の競争の変化を分析して、自社の市場への参入障壁をどのように築くことができるか、日ごろから注意しておかなければならない。〇

オ 代替品は、大きな技術の変化や消費者のニーズの変化によってこれまでにない新商品として登場し、既存の商品に取って代わる脅威になることがあるので、技術や市場のマクロなトレンドを見失わないように注意しなければならない。〇

業界構造分析 【平成30年 第5問】

 マイケル・ポーターによる業界の構造分析に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 価値連鎖(バリューチェーン)を構成する設計、製造、販売、流通、支援サービスなどの諸活動において規模の経済が働くかどうかは、その業界構造を決定する要因であり、多数乱戦(市場分散型)業界では、すべての諸活動において規模の経済性が欠如している。〇×すべての諸活動において規模の経済性が欠如しているとは限りません。価値連鎖においては、規模の経済性よりも、諸活動間の連鎖、つまり連携が重要であり、連携により競争優位性を築いていくことができるとされています。また、諸活動間の連携が強まることによって、規模の経済性が働くことも考えられます
  2. 継続的に売り上げが減少している衰退業界においては、できるだけ早く投資を回収して撤退する戦略の他に、縮小した業界においてリーダーの地位を確保することも重要な戦略の 1 つである。〇縮小した業界においては競合も縮小傾向にある可能性が高く、リーダーの地位を確保することは比較的実現性が高いことが考えられますので、重要な戦略の 1つであると言えます。いわゆる、ニッチャー戦略であり、ポーターの3つの基本戦略の中では、集中戦略です。
  3. 成熟業界においては、新製品開発の可能性が少なく、成長が鈍化するために、多くの企業は、プロセス革新や現行製品の改良に力を入れるようになり、企業間のシェア争いは緩やかになる。×
  4. 多数乱戦(市場分散型)業界は、ニーズが多様であること、人手によるサービスが中心であることが特徴なので、集約・統合戦略は、この業界には適さない戦略である。×人手によるサービスが中心であることは業界特有の特徴とは限りません。また、集約・統合戦略は、多数乱戦業界においては規模の経済を働かせることにより、業界を制圧することが可能であり、この業界には適さない戦略というわけではありません

ポーターの提唱する業界構造のパターンとして、以下の5つ。

多数乱戦(市場分散型)業界:競合企業が多数存在し、激しい競争が繰り広げられている業界。

先端業界:新たに生まれたばかりの業界や再編されたばかりの業界。

成熟業界:ビジネスのルールや製品などが定着し、総需要が低下、成長スピードが鈍化した業界。

衰退業界:全体の売上規模が減少している業界。撤退が有効な戦略の1つ。

国際業界:大企業のように、自国市場だけでなく、外国市場にも事業展開ができて多額の売上を上げられる業界。

撤退障壁 【平成26年 第3問】

 業績が悪化している事業から撤退すべきであっても、なかなかそれができないのは、撤退を阻む障壁が存在するからである。そのような撤退障壁が生じている状況に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 自社の精神ともいうべき事案への創業者や従業員の思い入れが強く、現状で踏ん張らざるを得ない。〇

イ 生産過剰で収益率が悪化しているが、業界秩序を守る協定が存在しているので同業者数に変化はなく、市場競争は平穏である。×一般的に事業撤退を阻む協定は考えづらく、あったとしても金銭的な解決手段が用いられるはずです。また、同業者数が全く変化しないような協定は現実的ではありません。「協定が存在しているので同業者数に変化はなく、市場競争は平穏である」、からはカルテルが締結されていることが考えられますが、カルテルは一般的には違法であることや前述のようにカルテルは参入障壁にはなりますが撤退障壁にはならない

ウ 撤退のための社内再配置等のコストがかさむので、撤退の判断が難しくなる。〇

エ 特定の業種しか利用できない資産のために清算価値が低く、それを移動したり流用しようとすると、そのためのコスト負担が新たに大きくのしかかる。〇

オ 不採算に陥っている事業であっても、他の事業との関連性が強いために、撤退すると他の事業の不利益を招き、自社の戦略上の強みを失いかねない。〇管理会計では撤退判断の基準は限界利益(=売上高-変動費)が赤字となった場合、と学習します。しかし、現実にはどのような影響が生じるか事前に把握することがむずかしく撤退判断を先延ばししてしまいがちです。

戦略グループ【平成20年 第3問】

 競争を通じて、同業者は似通った戦略をとるグループを形成することがある。このような現象や成立の理由に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

ア ある製品分野の生産のために垂直統合を強めると、企業の生産体制や製品ラインは似通ってくるので、戦略グループが生まれやすくなる。〇製品の製造のみを行っていた企業が、原材料や部品の製造も行えるように垂直統合を図った場合を考えます。この場合、この戦略の有効性が評価されれば他の企業群も同様の戦略行動をとるでしょう。結果的に、同様の戦略を採用した企業群とそうでない企業群とで、自然と別々の戦略グループに分かれることになります。


イ いったん戦略グループが形成されると、そのグループから他のグループヘの移動は難しくなりがちであるが、グループ内では競争関係は緩和される。×


ウ 顧客層と製品ラインの幅を考慮して、最適生産規模を追求したり、共通コストの節約を図ると、次第に一貫した戦略行動になるので、似通った企業の集団が生まれやすくなる。〇


エ 同一産業内に複数の戦略グループが存在することが少なくないが、これは市場の広がりと製品ラインの絞り込み等が異なるからである。〇


オ 同一産業内の戦略グループ間で収益が異なるのは、それぞれの戦略グループが直面する脅威と機会が異なるからである。〇

業界競争と協業 【平成21年 第3問】

 業界の競争や取引関係は、限られた市場の争奪という側面ばかりではない。逆に市場を奪い合わずに自社の売り上げや利益を増やす関係になることもある。そのような状況に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 新しい駅ビルに、これまで以上に多様な小売業者の入店を図るとともに、映画館やアスレチック施設、さらに大学のサテライト教室なども入れて来客数を増やす。〇


イ ゲーム業界ではゲーム機器メーカーがゲームソフトを買い取ると同時にゲームの開発指導を行うため、ゲームソフト開発メーカーの起業が活発になり、業界の発展を促している。×


ウ コストダウンは自動車部品供給業者の利益を圧迫するが、それが自動車会社の販売力に結びつくと、自動車生産量を増加させることになるので、長期的に見れば供給業者に有利に働く。〇


エ 新製品の市場規模がまだ小さい場合、ライバル企業の参入によって当該製品をめぐって市場での競争が起こり、その結果その製品の市場は拡大する可能性をもつ。〇


オ 宅配業者がコンビニエンスストアを取次店とする集配を始めたので、コンビニエンスストア間の荷物発注客の増加をめざした競争は、宅配市場を掘り起こす効果をもたらした。〇

 競争戦略と持続的な競争優位 【平成29年 第7問】

 企業の競争戦略と持続的な競争優位に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 競争戦略の実行に不可欠な独自の経営資源を持ち、製品市場における規模の経済を実現できるのであれば、代替製品の脅威は事業の収益性に影響を与えず競争優位の源泉となる。〇×製品差別化は既存製品市場で有効な戦略ですが代替品に対しては有効ではありません。そのため携帯電話メーカーは機能面を最小限に絞り込み、価格を下げることで対抗しました。その結果、携帯電話メーカーの収益性は著しく低下しました。従って、「代替品の脅威が事業の収益性に影響を与えず競争優位の源泉となる」という記述が不適切です。

イ 経路依存性のある経営資源は、模倣を遅らせることで市場における競争者の脅威から先発者を保護する。〇

ウ 顧客からの強い支持をうける製品差別化は、競合他社との間の競争に勝ち抜く手段である以上に、他社との競争を可能な限り回避できる自社市場構築の手段となる。〇

エ 差別化した製品と標準的な製品の機能的な差が小さくなるほど、差別化した製品を選好する顧客の割合は低下するが、標準的な製品よりも高い価格を設定し、差別化した製品で高い収益性を確保しようとする場合、できるかぎり多くの顧客を対象とすると戦略上の矛盾を生み出す。〇

オ スイッチング・コストの発生する状況では、買い手側は、現在使用する製品やサービスと他の代替的な製品・サービスと価格や機能が同じであったとしても、別のものとして見なす。〇

差別化戦略 【平成24年 第5問】

 差別化戦略は競争者に対抗するための基本的戦略の1 つである。商品の属性と製品差別化に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
 ア 売り手の信用をもとに安全性を確認するような信用的な属性については、物理的な差異による製品差別化よりも広告や宣伝活動による製品差別化が有効である。〇、「信用的な属性」について述べられています。これは簡単に言えば、企業の信用力によって差別化をすることを表しています。こういった差別化を図る場合は、製品の物理的な機能を差別化するよりも、広告宣伝活動を通じたブランドイメージを形成することが有効です。


 イ 購入前に調べてみれば分かるような探索的な属性については、広告や宣伝活動による製品差別化よりも物理的な差異による製品差別化が有効である。〇購入前に調べれば容易に分かる属性で差別化できる場合は、広告宣伝活動でブランドイメージを形成するよりも、物理的な属性をアピールした方が有効です。


 ウ 実際の消費経験から判断できるような経験的な属性については、物理的な差異による製品差別化よりも広告や宣伝活動による製品差別化が有効である。〇×

現代の成熟した市場では、単なる製品の機能による差別化は効果が低くなってきました。そこで、顧客の消費「経験」を重視する考え方が出てきました。例えば、コーヒーショップで言えば、価格やコーヒーの味で差別化するだけでなく、会社や家とは別の場所でくつろげるといった経験的価値を提供することで差別化することができます。(これは、スターバックスの例です。)

 このような経験的な属性で差別化するには、製品はもちろんですが、顧客とのすべての接点を重視し、顧客に経験的価値を提供する視点が求められます。広告や宣伝活動による差別化が有効とは言えないため、記述は不適切です。


 エ 製品差別化は特定の売り手の製品に関する買い手の主観的な判断をベースとしている。〇差別化は、売り手が決めるものではなく、あくまで買い手が主観的に判断するものです。

価値連鎖と垂直的統合 【平成25年 第6問】

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

①企業の価値連鎖の中の活動にどこまで携わるかによって、垂直統合の程度は異なる。垂直統合は、企業が経済的な取引を管理・統治する重要な方法であるが、企業によっては活用可能な管理・統治のための選択肢のひとつにすぎない。

文中の下線部①に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数は一定で安定する必要があるが、価値連鎖上で高付加価値を生み出している活動は垂直統合に適している。〇×企業の価値連鎖における活動のうち、どれを自社独自に行ない、どれを他社に任せるかについて、企業は意思決定することができます。企業が価値連鎖の中で携わる活動の数は一定で安定する必要はありません。

イ 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数は一定で安定する必要があるが、清涼飲料水の生産者が独立したフランチャイジーだったボトラーと戦略的な提携を始めるように前方垂直統合を行う例もある。〇×企業が価値連鎖の中で携わる活動の数は一定で安定する必要はありません。

ウ 企業が価値連鎖の中で携わる活動の数はその増減から垂直統合度は推測できないが、価値連鎖で統合されている活動に関する情報開示があれば垂直統合度のおおよその見当はつく。×企業が価値連鎖の中で携わる活動の数はその増減から垂直統合度は推測できないわけではありません。

エ 自社の境界外に当該事業にかかわる価値創出活動の多くを出している企業は売上高付加価値率が低く、垂直統合度は低いレベルにある。〇自社の境界外に当該事業にかかわる価値創出活動の多くを出しているわけですから、企業が携わる価値活動の数が少ないので、垂直統合度は低いレベルです。また、自社の境界外に当該事業にかかわる価値創出活動の多くを出しているわけですから、この企業が新たに付加している価値は小さいといえ、企業の売上高付加価値率は低くなります。

前方垂直統合・後方垂直統合

 垂直統合が製品やサービスの最終顧客とより直接的に接触する方向に進む場合を、前方垂直統合(川下垂直統合)といいます。これに対して、製品やサービスの最終顧客と遠ざかる方向に進む場合を後方垂直統合(川上垂直統合)といいます。

バリュー・チェーン 【平成28年 第8問】

 競争優位の源泉を分析するには、バリュー・チェーン(価値連鎖)という概念が有効である。バリュー・チェーンに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 差別化の効果は、買い手が認める価値と、自社のバリュー・チェーンのなかで作り出した特異性を生み出すためのコストが同水準になった時に最大化する。×買い手が認める価値=バリュー・チェーンのコストとなってしまっては差別化によって生じる超過収益はゼロとなってしまいます。また、その時に差別化の効果が最大化されるものではありません。

イ バリュー・チェーン内で付加価値を生み出していない価値活動に関して、アウトソーシングなどによって外部企業に依存する場合、企業の競争力を弱めてしまう。×

ウ バリュー・チェーンの各々の価値活動とともに、それらの結び付き方は、企業の独特な経営資源やケイパビリティとして認識することができる。〇ケイパビリティとは、独自の能力を生み出す組織力のことです。バリュー・チェーンの個々の価値活動は、密接な結びつきにより模倣困難性や独自性を生じさせることから、企業の独自の経営資源やケイパビリティとして認識することができます。

エ バリュー・チェーンの全体から生み出される付加価値は、個別の価値活動がそれぞれ生み出す付加価値の総和であり、各価値活動の部分最適化を図っていくことが、収益性を高める。×部分最適ではなく、全体最適を図ることで個々の価値活動の総和を超え、収益性を高めることになります。

競争地位別の戦略 【平成24年 第6問】

 企業は自社の業界における相対的な地位を踏まえて競争戦略を展開することが重要である。そのような競争戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア チャレンジャーは、リーダーの高い技術力が生み出した差別化された製品と同質な製品を販売し、リーダーの差別化効果を無効にすることを狙うべきである。×

イ ニッチャーは特定の市場セグメントで独自性を発揮できる戦略を遂行して、強い市場支配力を狙うことが必要である。〇×〇小さく限定された市場セグメントの中で、ミニリーダーになることを狙います。特殊なニーズを満たす製品やサービスを提供し、そのニーズの中でナンバーワンの企業になることが重要です。

ウ フォロワーは特定市場でリーダーの製品を模倣しつつ、非価格競争によって収益をあげることが基本戦略になる。×フォロワーは、リーダー企業などを模倣して追随する企業グループです。ただし、模倣するため、価格競争になりがちです。そのため、「非価格競争によって収益をあげることが基本戦略」とは言えない

エ ライバル企業に比べて技術力や生産能力に劣るニッチャーの場合、価格競争に重点をおいた販売戦略を幅広い市場で展開することが重要になる。×

オ リーダーは周辺の需要を拡大することによって、売り上げの増加や市場シェアの拡大を図ることができるが、その反面で新製品の投入を遅らせてしまうことになる。〇×新製品を次々に投入し、幅広い品揃えにするフルライン戦略が有効です。

経験効果と規模の経済性【令和元年 第7問】

 経験効果や規模の経済に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 経験効果に基づくコスト優位を享受するためには、競合企業を上回る市場シェアを継続的に獲得することが、有効な手段となり得る。〇経験効果が競合企業を上回る市場シェアの継続的獲得、つまり継続的に規模の経済が働いている状態は、一定期間の効果であることが分かります。従って、競合企業より累積生産量が多いことを示し、経験効果によるコスト優位を享受することが可能になりえる
  2. 経験効果は、ある一時点での規模の大きさから生じるコスト優位として定義されることから、経験効果が生じる基本的なメカニズムは、規模の経済と同じである。〇×経験効果をある一定時点での規模の大きさとしていることから不適切
  3. 生産工程を保有しないサービス業では、経験効果は競争優位の源泉にならない。×サービス業においても、累積サービス提供量や提供時間をもって、学習曲線効果が生じ、経験効果が得られる
  4. 中小企業では、企業規模が小さいことから、規模の経済に基づく競争優位を求めることはできない。×特定の部品の販売シェアが業界トップの中小企業は存在しますし、特定の地域で業界トップのスーパーマーケットも存在します。したがって、特定の市場や製品に経営資源を集中投下することで、ニッチ市場におけるコストリーダーシップを得ることは可能であるため、規模の経済にもとづく競争優位を得ることは可能です。
  5. 同一企業が複数の事業を展開することから生じる「シナジー効果」は、規模の経済を構成する中心的な要素の1つである。×シナジー効果を規模の経済を構成する中心的な要素の一つとしていますが、範囲の経済が正しい。なお、規模の経済を得るために企業統合をすることでシナジー効果は発生することがありますが、規模として企業統合前の両者の売上を合算するほどの売上を統合後実現できるケースは必ずしも多くありません。

規模の経済と経験効果は相互に関係しますが、規模の経済は一定の時点における規模の大きさに起因する経済性であるのに対し、経験効果は、累積生産量(サービス業であれば累積提供量や累積時間)に比例的に生じる効果ですので一定の期間による効果となる点に違いがあります。

イノベーション

 イノベーションに関する説明として、最も不適切なものはどれか。


ア イノベーションとは、製品開発に関わるものであり、新しい技術を発明したり、新製品を開発したりすることである。×J.Aシュンペーターは、イノベーション(革新)を、企業者が市場、技術、経営資源などの新結合によって創造的破壊を行うことと定義しました。これは、単に新しい技術を発明したり、新製品を開発したりするだけでなく、それが顧客や社会に新しい価値を提供するということまで含めた考え方です。いわゆる製品に関する技術革新だけのことではないことに注意してください。

イ 製品自体の革新のことをプロダクト・イノベーション、生産工程の革新のことをプロセス・イノベーションと呼ぶ。〇プロダクト・イノベーション(製品革新)とは、製品に関する革新のことをいいます。W.アバナシーの技術革新モデルによると、この革新は、製品が発明されてからその製品の標準的かつ優勢な仕様(ドミナント・デザイン)が決まるまでに主にみられます。製品ライフサイクル上では導入期と成長期の前期のものです。一方、プロセス・イノベージョン工程革新)とは、工程に関する革新のことをいいます。アバナシーの技術革新モデルによると、この革新は、ドミナント・デザイン決定後に主にみられます。製品ライフサイクル上では成長期の後期と成熟期の前期のものです。

ウ インクリメンタル・イノベーションとは、製品や生産工程における積み重ねられ進歩していく小さな革新のことをいう。〇インクリメンタル・イノベーション積み重ね革新)とは、製品や生産工程における積み重ねられ進歩していく小さな革新のことをいいます。アバナシーの技術革新モデルによると、この革新は、プロセス・イノベーションの後に主にみられます。製品ライフサイクル上では成熟期の後期のものです。なお、脱成熟とは、製品を成熟期から再び成長期に戻す革新のことをいいます。アバナシーの技術革新モデルによると、この革新は、インクリメンタル・イノベーションの後に主にみられます。

エ イノベーション・ライフサイクルは、一般に、S字型の軌跡を描き、次のイノベーション・ライフサイクルに移行するときには、連続的ではなく、不連続に移行する。〇イノベーション・ライフサイクルは、S 字型の軌跡を描くという点と、後発の技術に移行するときには、連続的ではなく、不連続に移行するという点が、特徴です。

W.アバナシーは、時間の経過に従って、革新の影響度が製品、生産工程、積み重ねというように小さいものが中心になることを、生産性のジレンマといいました。

イノベーションのマネジメント

 イノベーションのマネジメントに関する説明として、最も不適切なものはどれか。


ア 持続的イノベーションとは、既存の製品を継続的に改良するもので、インクリメンタル・イノベーションとも呼ばれる。〇

持続的イノベーション (Sustaining Technologies)

 既存の製品を継続的に改良するもの

 インクリメンタル・イノベーションと呼ばれることもある

イ 破壊的イノベーションとは、既存の技術をすべて否定し、全く新しい技術で高機能な製品を供給する革新のことである。×高機能でなければならないというわけではありません。破壊的イノベーションは、安くて単純であり、高機能・性能を必要としない技術により、主流の市場以外の別の市場に根付き、やがて、主流の市場を飲み込んでいくものを含みます。

破壊的イノベーション(Disruptive Technologies)

 全く新しい価値を提供するようなイノベーション

 ラディカル・イノベーションと呼ばれることもある

ウ 技術進歩のレベルが顧客の実際の二一ズと活用能力をはるかに超えることは、必要最低限の機能を満たし、低価格の製品を供給する新興企業へ乗り換えられる機会を与えることとなる。〇

エ 前の世代のリーダー企業が、次の世代の破壊的イノベーションに対応できないという現象を、イノベーションのジレンマと呼ぶ。〇イノベーションのジレンマという用語は、米国ハーバード・ビジネス・スクールのC.クリステンセン教授が、1997年、その著書『イノベーションのジレンマ‐技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』で呼称したものです。同書では、過去の優良企業が没落した理由が研究されています。イノベーションのジレンマを回避する方法の一つとして、例えば、WikipediaやLinuxなどのように、オープンイノベーションの考え方を採用し、社内のみならず社外や研究者コミュニティからも広く意見や技術を取り入れることにより、視野を広げイノベーションを実現するという方法があります。

ベンチャー企業

 ベンチャー企業に関する説明として、最も適切なものはどれか。


ア ベンチャー企業とは、大きなリスクを取る代わりに高いリターンを求める企業のことをいう。〇×ベンチャー企業とは、新技術などでイノベーションを起こして急成長を志向する中小企業のことをいいます。これは、企業家精神旺盛な社長が独自の技術・ノウハウを強みに高い成長を遂げる中小企業のことであって、大きなリスクを取る代わりに高いリターンを求める企業ということではありません。

イ ベンチャー企業の成長ステージとして、導入期、成長期、安定期、衰退期の4つが挙げられるのが通常である。シード期スタートアップ期急成長期安定成長期です。導入期、成長期、安定期、衰退期の4つが挙げられるのは、製品ライフサイクルの話です。

ウ ベンチャーキャピタルとは個人投資家のことであり、ベンチャーに出資する投資ファンドはエンジェルと呼ばれる。×ベンチャーキャピタル(VC:Venture Capital)とは、ベンチャー企業が行おうとするリスクの高い事業の将来性を専門的な知識とノウハウで評価し、資本を投じる投資会社のことです。その資金源は年金基金、財団、企業、金融機関などです。ベンチャーキャピタルは、投資基準を満たした企業に投資を行って、ベンチャー企業の株式が公開されたときにキャピタルゲインを得ることで利益を獲得します。一方、個人投資家は、エンジェルと呼ばれます。

エ 商品を市場に投入し、販売網を整備し、競合に打ち勝っていく困難のことを、ダーウィンの海と呼ぶ。〇商品を市場に投入し、販売網を整備し、競合に打ち勝って事業として軌道に乗せていく必要があります。この困難のことは、ダーウィンの海と呼ばれます。これに対し、技術シーズを商品化する前に資金が尽きてしまう状況のことは、死の谷と呼ばれます。

事業化に対する障壁

 事業化に対する障壁に関する次の文中の下線部の状態を表す語句として、最も適切なものはどれか。

 ベンチャー企業が自社開発の技術の成果を商品化し、事業化するまでには、いくつかの障壁がある。研究段階から事業化に至るまでの障壁には、基礎研究で開発されたシーズの社会的な有用性が識別しにくいことによる障壁がある。

ア デビルリバー〇基礎研究から製品化のための開発段階に進む際の障壁
 基礎研究で開発されたシーズが社会的に有用かどうかを識別しにくいといった障壁

イ デスバレー〇×製品開発段階から事業化段階に進む際の障壁
 十分な資金や人材などの資源を調達できないといった障壁

ウ ダーウィンの海×

エ ブルーオーシャン×

社内ベンチャー

社内ベンチャーに関する説明として、最も適切なものはどれか。


ア 社内ベンチャーとは、社内で新会社の社長を公募して、新規事業を独立させて展開することをいう。×

イ 社内ベンチャーは、優秀な人材のスピンアウトを防止し、技術力が流出するのを防ぐのに役立つ。〇

ウ 社内ベンチャーは、チャレンジ精神を持つ人材を育成することが難しく、社内の既存資産を有効活用することが困難である。×

エ 社内ベンチャーは、事業の開始や展開が迅速に行われるため、既存事業を脅かすようなビジネスも容認されやすい。×

企業の社会的責任

 企業の社会的責任に関する説明として、最も適切なものはどれか。


ア 企業には説明責任があるが、企業は投資家向けに自発的に情報を開示するものに財務諸表や有価証券報告書がある。×企業にはアカウンタビリティーといわれる説明責任があります。ディスクロージャーには、財務諸表や有価証券報告書など制度的なものや、投資家向けに自発的に情報を開示するインベスターリレーションズIR: Investor Relations)があります。投資家向けに自発的に情報を開示するものは、インベスターリレーションズです。財務諸表や有価証券報告書などは制度的な情報開示です。

イ コンプライアンスは、法令などの規則を守ることをいうが、これには社会的なルールや倫理を守ることまでは含まれない。×

ウ コーポレート・ガバナンスの観点からみると、一般に、日本では、外部からのチェックが働きにくく、逆に長期的視点で経営することが可能であるといわれる。〇

エ フィランソロピーは企業の社会貢献活動のうち、特に文化・芸術分野での活動のことをいい、メセナは企業による社会貢献活動や慈善的な寄付行為などのことをいう。×フィランソロピーは、「慈善」や「博愛」を意味する言葉であり、一般には、企業による社会貢献活動や慈善的な寄付行為などのことをいいます。これに対して、メセナは、フランス語で「文化・芸術支援」を意味する言葉であり、企業の社会貢献活動のうち、特に文化・芸術分野での活動のことをいいます。

アライアンス 【平成21年 第17問】

 イノベーションを目的とするアライアンス関係の代表的な形態には、下請関係、ライセンシング、コンソーシアム、ジョイントベンチャーなどがあり、それぞれ長所と短所を持っている。これらのアライアンス関係に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア コンソーシアムは、基礎研究のように不確実性の高い場合に、複数の企業が共同出資することで投資リスクを低くする効果を持っているが、コンソーシアム解散後の企業間の差別化が困難になるという問題を持つ。×

コンソーシアムとは、2 つ以上の個人や企業等から成る共同体・共同事業体のことで、共同で特定の目的のために活動します。例えば、民間企業で大学とコンソーシアムを形成し、共同で研究開発するなどの例があります。コンソーシアムは一般に緩やかな提携関係のため、コンソーシアム解散後については、それぞれの企業の戦略を実行します。また、テーマが基礎研究である場合は、製品化については、それぞれの企業が独自に行うため、「差別化が困難になる」とは言えません。


イ 下請関係は製品製造コストの削減には有効であるが、新製品の開発や技術革新については取引コストが高くついてしまう。〇×

下請関係は親企業と下請企業の間の提携関係です。日本の製造業は、大企業と中小企業の間で下請関係を作ることにより発展してきました。「取引コストが高く」つくとありますが、下請関係は、通常、強固な信頼関係に支えられており、親企業から下請企業に対する技術支援や生産方法の改善指導なども行いやすく、「取引コストが高くつく」とはいえません。


ウ ジョイントベンチャーは、比較的長期にわたり同質的な技術をもつ企業同士が提携することであるが、組織文化の対立などによってコントロールを失う可能性もある。×

ジョイント・ベンチャーという言葉は、合弁事業(合弁会社)や、主にマーケティング面での戦略的提携を表します。本問では、合弁事業の意味で使われています。

 合弁事業では、一般に、複数の企業が共同で合弁会社を設立し、共同で新規事業を推進します。合弁事業にすることにより、各企業の経営資源やノウハウなどを持ち寄り、1 社では実現できないような事業を推進できます。「同質的な技術をもつ企業同士が提携」とありますが、合弁事業では、お互いに不足している技術を持ち寄ることができるのがメリットです。


エ ライセンシングは、短期間に技術を獲得するのに有効であるが、獲得した技術を自社が自由に利用する権利が制約されるリスクがある。〇

ライセンシングは、特許や商標などの知的財産権やノウハウなどを別の企業に提供し、その対価としてライセンス料を受け取る契約です。例えば、ある製品を製造する技術が無い場合でも、他の企業から技術に関する特許やノウハウについてライセンスを受けることで、製造・販売することができます。

 これが ライセンス契約の場合は、権利者(ライセンサー)は、ライセンスした企業(ライセンシー)には、権利自体を譲渡せずに使用権を付与するのが一般的です。また、その際に権利を使用できる範囲や制約を設ける場合が多いため、技術を自社が自由に利用する権利が制約されるリスクがあります。

国際化戦略 【平成23年 第11問】

 グローバル化の進展とともに日本企業が海外に工場を開設する動きが活発化している。しかし、海外進出は国際化に必要な経営資源が不足する中小企業にとっては容易ではない。そのため中小企業では商社に仲介を受けながら、現地パートナーと合弁企業を営む例が見られる。そのような海外進出で考慮すべき点の記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 現地のパートナー企業の技術力が弱い場合、商社を介在して高品質の原材料を持ち込んだり、進出企業による現地での技術指導を通じて製品の品質が低下しないようにすることは重要な経営のポイントになる。〇



イ 現地のパートナー企業や現地国はわが国の企業の進んだ技術の移転を求めているが、自社技術の保護の観点から、商社等に協力してもらって、合弁事業開始前に、守るべき技術や製品の模倣禁止等に関して詳細な規定を含む合弁事業契約をパートナー企業と締結しておくことが重要になる。〇



ウ 合弁事業の出資割合は出資企業がその比率に応じて合弁事業の経営に努力を傾注する程度を示すが、商社や現地企業は概してその経営努力とは無関係に配当を要求することでトラブルになることに注意することが重要になる。〇×



エ 商社が、情報能力を活かして進出企業に現地の各種情報を伝えたり、現地の法務等の対応を図ってくれるので、進出企業は現地国で工場のオペレーションに経営努力を傾注できる利点がある。〇



オ パートナー企業の合弁事業以外での業務実態について見落とすと、守秘義務条項や競合禁止条項が破られ、製品の模倣が行われ、現地市場を失うばかりか、進出企業の信用を失墜しかねないので、現地駐在社員の現場の監視能力の向上を図ることが重要である。〇

企業の社会的責任 【平成22年 第5問】

 企業は経済社会の一員として多面的に社会的な責任や期待を負いつつ、経済活動を展開している。そのような社会的存在としての企業の経営行動に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 企業価値は株式時価を中心に測定されるが、株価は企業が直接操作できない証券市場で形成されるため、企業価値は具体的な数値目標で表される目的にはなりにくいので、株価にとらわれない自社のビジョンに基づく経営を維持するべく上場を廃止する例が見られるようになった。〇



イ 企業の利益極大化の追求は、納品業者や販売業者さらには労働者に厳しいコスト削減を強いることになるので、利益計画は公表しないことにしている。×



ウ 長期の不況の中で賃金コストの抑制が図られ、安価な労働力として非正規雇用が増えたが、企業は雇用不安を抑えるべく、近年ではワークシェアリングを盛んに導入している。×



エ 日本では同業者間で同質な技術や商品の開発競争が激化しやすく、その競争を一挙に海外でも展開する傾向があり、集中豪雨的な進出として批判されることがあるばかりか、技術力の低下が起こっている。×そのような状況の中で技術や商品の開発競争が盛んに行われた結果、技術力の向上という効果をもたらしたことも否定できません。

イノベーション2【平成30年 第9問】

 技術のイノベーションは発生してから、いくつかの特徴的な変化のパターンをとりながら進化していく。イノベーションの進化に見られる特徴に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

  1. 技術システムが均衡状態にあることが、技術開発への努力を導く不可欠な力になるので、技術間の依存関係や補完関係に注意することは重要である。×前の世代のリーダー企業は、次の世代の破壊的イノベーションに対応できないという現象を「イノベーションのジレンマ」と呼びますが、前の世代のリーダー企業は、既存の主流顧客の要望に応える改良、すなわち持続的イノベーションを重ねていくうちに、新しい技術に対応できず、次の世代の破壊的イノベーションを起こす企業に足元をすくわれてしまう、ということがよく発生します。この持続的イノベーションを重ねている間は、技術システムは均衡状態にあると言えます。この状態は、技術開発への努力を導くのではなく、妨げる力となっていることがわかります。
  2. 技術進歩のパターンが経時的にS字型の曲線をたどることがあるのは、時間の経過とともに基礎となる知識が蓄積され、資源投入の方向性が収斂(しゅうれん)するからである。〇技術進歩が経時的にS字型の曲線をたどるのは、初めのころ不確定だった技術や(基礎的な)知識が、時間の経過とともに(経時的に)蓄積されて確立してくるため、技術進歩が一気に進み、資金や人材などの資源投入の方向性もひとつの方向に集められる(収斂する)ことの現れと言えます。
  3. 優れた技術が事業の成功に結びつかない理由として、ある技術システムとそれを使用する社会との相互依存関係が、その後の技術発展の方向を制約するという経路依存性を挙げることができる。〇
  4. 製品の要素部品の進歩や使い手のレベルアップが、予測された技術の限界を克服したり、新規技術による製品の登場を遅らせることもある。〇製品の要素部品の進歩や使い手のレベルアップとは、イノベーションのジレンマにおける「持続的イノベーション」と言えます。このことが、予測された技術の限界克服や、新規技術による製品の登場を遅らせるのは、まさにイノベーションのジレンマによる現象
  5. 連続的なイノベーションが成功するのは、漸進的に積み上げられた技術進化の累積的効果が、技術の進歩や普及を促進するからである。〇連続的なイノベーションは「持続的イノベーション」を指しており、順を追って(漸進的に)積み上げられた技術進化の累積的効果が、技術進歩や普及を促進することによって、持続的なイノベーションは成功します

企業統治(コーポレート・ガバナンス) 【平成26年 第20問】

 企業経営における意思決定の不正を防止したり、企業価値の向上を目指すために企業統治(コーポレート・ガバナンス)の重要性が高まっている。企業統治を強化するために有効な方法として、最も不適切なものはどれか。

ア 業務に関係して違法行為や背任行為を起こさないよう内部統制制度を導入する。〇内部統制とは、組織の目的を適正に達成するために、組織の内部において適用されるルールや業務プロセスを整備し運用することです。内部統制制度を導入すると、業務に関係して違法行為や背任行為を起こさないようにすることができ、企業統治を強化することができます。日本では、金融商品取引法において内部統制報告制度が定められており、上場企業は、内部統制報告書の作成、報告をしなければなりません。


イ 取締役会に社外取締役を、監査役会に社外監査役を導入する。〇取締役会に社外取締役を、監査役会に社外監査役を導入すると、外部の視点により企業経営のチェック機能を果たすことができるため、企業統治を強化することができます。


ウ 取締役会の中に指名委員会、監査委員会、報酬委員会を設置する。〇指名委員会、監査委員会、報酬委員会を設置する会社は、委員会設置会社です。委員会設置会社は、企業統治を強化し、経営の透明性を高めるために、経営の監督機能と業務執行機能を分離した会社です。そのため、取締役会の中に指名委員会、監査委員会、報酬委員会を設置すると、企業統治を強化することができます。


エ 取締役のほかに執行役員をおき、取締役会に参加させる。×執行役員とは、取締役や取締役会が決定した重要事項や方針・戦略を、実行(執行)する役割や責任を担う者のことです。したがって、取締役のほかに執行役員をおき、取締役会に参加させたとしても、企業統治を強化することにはなりません。

オ 倫理憲章や行動規範などを作成周知し、社員の意思決定における判断基準として制度化する。〇

危機管理 【平成29年 第12問】

 自然災害や大事故などの突発的な不測の事態の発生に対応することは、企業にとって戦略的な経営課題であり、停滞のない企業活動の継続は企業の社会的責任の一環をなしている。そのような事態への対応に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア カフェテリア・プランは、多くの場合、ポイント制によって福利厚生メニューを自主的に、また公平に選択できるようにしているので、突発的な災害などの支援に活用できるメニューは盛り込めない。×

イ クライシス・マネジメントは、想定される危機的事象を予測し、事前にその発生抑止や防止策を検討して危機への対応を図ろうとするものである。×

ウ コンティンジェンシー・プランでは、不測の事態や最悪の事態を想定して、その事態が与える業務間の影響を測るべく、事業インパクト分析を重視して危機対応の計画を策定するのが一般的な方法である。〇×事業インパクト分析とは事業継続計画(BCP)において業務停止させることでどのような影響が生じるかを把握する分析で、事業インパクト分析に基づいて継続業務を決定します。コンティンジェンシー・プランは、予期しない事態が起きた時のために、事前に対応方法などを定めておく計画のことを言います。コンティンジェンシー・プランでは継続業務を決定する際、必ずしも事業インパクト分析を行なうわけではありません。

エ 事業継続計画(BCP)では、事業停止の影響度を評価分析して、業務の中断が許される許容期限を把握して業務の復旧優先順位を導くために事業インパクト分析の実施が行われる。〇×〇事業継続計画(BCP)では事業インパクト分析に基づいて、業務の中断が許されるべき許容期間を把握し、業務の復旧優先順位を導きます。

オ 事業継続計画(BCP)は、災害時のロジスティクスの確保を重視した企業間ネットワークの構築を目指すものとして策定されている。×災害時のロジスティクス確保が不必要な、規模が大きくないサービス業等あらゆる業種において事業継続計画(BCP)は必要とされるので、事業継続計画(BCP)が必ずロジスティクス確保を重視した企業間ネットワークの構築を目指すわけではありません。

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