企業経営理論 企業戦略 事業戦略 経営法務 事業再編と持分会社 戦略の策定と企業戦略 経営と戦略の全体像 中小企業経営・政策 経営基盤の強化

バランス・スコアカード

 バランス・スコアカードは、4つの基本的視点から多角的な業績評価指標を選定し、それらをバランスよく向上させて企業成長を図るための経営手法である。バランス・スコアカードは戦略そのものを策定するだけでなく、戦略を実現するための具体的な計画を設定、統制することで、組織全体をより戦略的なものに変えるための枠組みを提供する。このバランス・スコアカードの4つの視点として、最も不適切なものはどれか。

ア 財務の視点〇「財務の視点」では、企業が従業員や株主などのステークホルダーからの期待にこたえるために利益や財務の安定といった財務上の目標を明確にします。具体的には、「利益性の向上」、「低コスト」、「売上拡大」といったような戦略目標を設定します。

イ 顧客の視点〇「顧客の視点」では、「財務の視点」で設定した戦略目標を実現するために、お客様の立場から企業が何をなすべきか明確にします。具体的には、「高品質」、「低価格」、「顧客満足度の向上」といったような戦略目標を設定します。

ウ 業務プロセスの視点〇「業務プロセスの視点」では、「財務の視点」、「顧客の視点」で設定した戦略目標を実現させるために、どのような業務プロセスを備えておくべきか明確にします。具体的には、「接待サービス品質の向上」といったような戦略目標を設定します。

エ 有効性の視点×「学習と成長の視点」は、「財務の視点」、「顧客の視点」、「業務プロセスの視点」を達成させていくため必要な従業員の育成や情報システムといったインフラの整備を明確にします。具体的には、「販売人員の教育システムの構築」といったような戦略目標を設定します。なお、「学習と成長の視点」は「人材と変革の視点」と呼ばれることもあります。

バランス・スコアカードの4つの視点は、次のものです。

財務の視点

 財務的業績の向上のために、株主に対してどのように行動すべきか

顧客の視点

 戦略を達成するために、顧客に対してどのように行動すべきか

業務プロセスの視点

 株主と顧客を満足させるために、どのような業務プロセスを実施することが求められているか

学習と成長の視点
 戦略を達成するために、どのようにして変化と改善のできる能力や環境を維持するか

競争優位を生み出す戦略のアプローチ

 競争優位を生み出す戦略のアプローチに関する説明として、最も不適切なものはどれか。


ア 競争優位を獲得する上で、ポジショニングベース型の戦略論は比較的に短期的な視点を持ち、リソースベース型の戦略論は比較的に中長期的な視点を持っている。〇

イ ポジショニングベース型の戦略論を提唱している代表的な学者であるポーターは、競争優位を獲得する方法について、外部環境を重視した。〇

ウ リソースベース型の戦略論を提唱している代表的な学者であるバーニーは、競争優位を獲得する方法について、内部環境を重視した。〇市場における立ち位置のみでは困難であることを指摘

エ 現代はポジショニングベース型の戦略論からリソースベース型の戦略論に移行しており、外部環境を考慮することなく経営資源を重視することが求められている。×相互に補完される関係

経営資源と競争優位

 経営資源と競争優位に関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア 一般に、経営資源には、ヒト、モノ、カネ、情報といったものが挙げられるが、このうち、近年において最も重要であると言われているのはヒトである。×近年において重要視されているのは無形のものである「情報」

イ バーニーは、5フォースやバリューチェーンという考え方を提唱し、持続的な競争優位を築くための経営資源の要件を整理した。×5フォースバリューチェーンという考え方を提唱したのは、J.B.バーニーではなく、M.E.ポーターです

ウ バーニーによると、経営資源が模倣困難であるほど持続的な競争優位を築くことができるとされる。〇希少性(R)が高ければ一時的には競争優位が得られるからです。更に持続的に競争優位性を築くには、模倣がされにくく(I)、かつ、組織的に経営資源を蓄積・活用(O)することが求められます。

エ バーニーによると、持続的な競争優位を築くために最も重要なのは、その経営資源が経済的価値を生み出すかという点である。×持続的な競争優位性を築くために、経営資源に関する4つの要件のうち特に重要なのは、その経営資源は模倣されにくいかという点です。4つの要件のうち特に重要なのは、模倣困難性、つまり、競合する企業が簡単に真似したり入手できたりしないことです。例えば、新規に参入しようとする企業が必要な経営資源を保有していない場合、模倣するためのコストは多くかかり、模倣困難性が高くなります。一般的なヒトや、モノ、カネといった有形資産は、経済的価値(V)はあっても、希少性(R)が低く、模倣困難性(I)が低いです。模倣困難性が低いものは、持続的な競争優位性になりにくいと言えます。

VRIO分析

 VRIO分析に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

  1. 企業の強みに稀少性がない状態を競争均衡という。〇競争均衡は、競争劣位ではない、という低いレベルの強みがあるという状態です。その強みは一時的な競争優位性も持続的競争優位性もありません。
  2. VRIO分析のVRIOはValue、Rarity、Inimitability、Organizationの頭文字である。〇Value(価値)Rarity(稀少性)Inimitability(模倣困難性)Organization(組織)です。
  3. 稀少性を有することで、持続的競争優位性を保有することができる。×稀少性だけでは、一時的競争優位性しかありません。なぜならば、稀少な資源は他の企業が調達ルートの発見、開発などによって、市場における稀少性が低下するためです。
  4. 暗黙知の方が形式知より模倣困難性が高い。〇形式知は業務マニュアル等のように文書化された知識です。詳細な業務マニュアルを何らかの方法で入手すれば、模倣は容易になります。しかし、ノウハウ、秘訣、コツ等の暗黙知は文書化できず、模倣は困難です。

情報的経営資源

 情報的経営資源に関する説明として、最も適切なものはどれか。

  1. 情報的経営資源とは、企業が社外に発信する情報をいう。×企業が社外に発信する情報は、情報的経営資源を作りだす要因にはなりえますが、それ自体が情報的経営資源とは言えません。企業が選ばれるための特異性を有している必要があります。
  2. 情報的経営資源は企業努力だけで作り出せるものばかりではない。〇情報的経営資源は、企業外部からの信用のように、企業内外で醸成されるものです。
  3. 情報的経営資源は企業の中核的な経営資源で、企業内部でなければ醸成されない。×。企業の中核的経営資源は正しいのですが、企業内部だけでなく、企業社内外で醸成されます。
  4. 情報的経営資源には企業の外部に蓄積された信用、イメージ、ブランドは含まれない。×企業外部に蓄積された信用、イメージ、ブランドは典型的な情報的経営資源です。

情報的経営資源は経営資源の中核です。それは企業固有の経営資源であり企業が顧客から選ばれるための源(特異性)となります。どのようなものが情報的経営資源かというと、例えば企業の内部に蓄積されたノウハウ、技術、熟練、顧客情報や企業の外部に蓄積された信用、イメージ、ブランド等です。従って、相手からの評価を含むため企業努力だけでは作り出すことができません。事業を行う過程で、企業内だけでなくサプライヤー、取引先、顧客により醸成されます

コアコンピタンス

 コアコンピタンスに関する説明として、最も不適切なものはどれか。

ア 顧客に特定の利益をもたらすことのできるものは、コアコンピタンスに該当しない。× 顧客に特定の利益をもたらすことのできるものは、「顧客価値の向上」という1つ目の条件を満たしているので、コアコンピタンスに該当します。コアコンピタンスは顧客に利益をもたらす一連のスキルや技術、競争優位を生み出す源泉であり、顧客が認める価値を生み出し、顧客に認知される価値を高めるものだからです。

イ 競合他社と比較してわずかに優れた能力では、コアコンピタンスに該当しない。〇競合他社と比較してわずかに優れた能力では、コアコンピタンスに該当しません。なぜなら、「独自の競争能力」という2つ目の条件を満たしていないからです。競合他社と比較してわずかに優れた能力では、競合他社に模倣されてしまいます。コアコンピタンスに該当するためには他社が真似しにくいことが必要であり、競合他社に模倣されないよう競合他社と比較して数段優れた能力である必要があります。

ウ 個別のスキルや技術が対象とされており、事業や製品ごとにしか適用されないものは、コアコンピタンスに該当しない。〇個別のスキルや技術が対象とされており、事業や製品ごとにしか適用されないものは、コアコンピタンスに該当しません。なぜなら、「新製品・サービスへの展開力」という3つ目の条件を満たしていないからです。コアコンピタンスに該当するためには様々な用途に広く展開できることが必要であり、新しい製品やサービスにも活用することができなければなりません。また、コアコンピタンスは、事業や製品ごとに存在するものではなく、適用範囲は広いものです。

エ コアコンピタンスに似た用語にケイパビリティがあるが、これは、企業が持つ組織的能力のことである。〇ケイパビリティ(Capability)とは、「企業が持つ組織的能力」もしくは「企業が得意とする組織的能力」のことで、リソースベース型戦略論の1つの考え方です。例としては、トヨタ自動車におけるサプライヤーとの緊密性や、ソニーや本田技研工業における顧客との緊密な関係によって生まれた顧客ロイヤリティーが挙げられます。多くの欧米企業がトヨタ自動車とサプライヤーとの関係性を模倣しようとしても失敗したように、これらのケイパビリティは模倣困難性が高く、持続的に競争優位をもたらす要因となっています。

コアコンピタンスに該当するためには、次の3つの条件が満たされる必要があります。

顧客価値の向上

 顧客に価値を提供するのに役立つ

独自の競争能力

 他社が真似しにくい

新製品・サービスへの展開力

 様々な用途に広く展開できる

 「強み」や「コアコンピタンス」と似た言葉に「ケイパビリティ(Capability)」があります。これは、「企業が持つ組織的能力」もしくは「企業が得意とする組織的能力」を表し、リソースベース型戦略論の1つの考え方です。

経営計画の策定と実行 【平成25年 第1問】

経営計画の策定と実行について留意すべき点に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 経営計画策定時に用いられる業績に関する定量的なデータを収集して分析することによって、新機軸の戦略を構築することができる。×新機軸の戦略は、これまでにない革新的なものですので、これまでのデータだけでは構築できないからです。また、新機軸の戦略は、当初から業績がいいものはそうはありませんから、業績に関する定量的なデータだけでは、新機軸の戦略を構築することはできません

イ 経営計画になかった機会や脅威から生まれてくる新規な戦略要素を取り入れていくには、計画遂行プロセスで学習が起こることが重要になる。〇経営計画段階で、起こりうるすべての機会や脅威についてあらかじめ適応できる戦略を構築することはできません。経営計画になかった機会や脅威から生まれてくる新規な戦略要素を取り入れていくには、その都度、経営計画を修正し、的確な意思決定をする必要があります。そのためには、計画遂行プロセスにおいて、的確な意思決定ができるだけの学習が起こることが重要になります。

ウ 経営計画に盛り込まれた戦略ビジョンは、予算計画や下位レベルのアクション・プランと連動させるとコントロール指針として機能するようになり、戦略行動の柔軟性を失わせる。×経営計画に盛り込まれた戦略ビジョンを、予算計画や下位レベルのアクション・プランと連動させたからといって、戦略行動の柔軟性を失わせることにはなりません。例えば、戦略ビジョンを経営計画に盛り込むことにより、戦略を重要成功要因→業績評価指標→アクション・プランというように現場の業務まで反映させていくと、従業員は日々の業務がどのように経営計画の達成に影響するのかを意識することができます。また、経営者は経営計画の目標達成までの進捗を管理することができます。経営者は戦略の遂行状況をみながら、企業の組織力や競争力を成長させていくことができます。そのため、戦略行動の柔軟性を失わせることにはならないのです。

エ 経営計画の策定に際して、将来の様々な場合を想定した複数のシナリオを描いて分析することによって、起こりそうな未来を確定することができる。×経営計画の策定に際して、将来の様々な場合を想定した複数のシナリオを描いて分析したからといって、起こりそうな未来を確定することまではできません。想定外のことが起きてしまうのが世の常だからです。

オ 経営計画の進行を本社の計画部門と事業部門が双方向的にコントロールすることは、事業の機会や脅威の発見には無効であるが、部門間の齟齬を把握するには有効である。×経営計画の進行を本社の計画部門と事業部門が双方向的にコントロールすることは、事業の機会や脅威を発見する上で有効になります。本社の計画部門だけでは想定できない事業の機会や脅威であっても、より現場に近い事業部門は把握することができることがあるからです。しかし、経営計画の進行を本社の計画部門と事業部門が双方向的にコントロールしたからといって、部門間の齟齬(そご)を把握できるとは限りません。本社の計画部門は企業全体の利益を追求しており、事業部門は独立採算制である事業部だけの利益を追求しているからです。個々の最大の総和が全体の最大にはならないという合成の誤謬が生じる可能性があります。

ドメイン【令和元年 第1問】

 多角化して複数の事業を営む企業の企業ドメインと事業ドメインの決定に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  1. 企業ドメインの決定は、個々の事業の定義を足し合わせるのではなく、外部の利害関係者との間のさまざまな相互作用の範囲を反映し、事業の定義を見直す契機となる。〇外部の利害関係者とは、企業ドメインを示すことで収益性の源泉、競合する部分、お互いに補える部分、有機的な相乗効果が生じる部分の理解共有をすることができます。この相互作用の範囲を反映し、企業ドメインの範囲内で事業を柔軟に見直すことが可能となります。
  2. 企業ドメインの決定は、新規事業進出分野の中心となる顧客セグメント選択の判断に影響し、競争戦略策定の出発点として差別化の基本方針を提供する。〇×顧客セグメントの選択判断に直接的影響するのは事業ドメインです。さらに、競争戦略策定の出発点として差別化の基本方針を提供するのも事業ドメインです。
  3. 事業ドメインの決定は、将来手がける事業をどう定義するかの決定であり、日常のオペレーションに直接関連し、全社戦略策定の第一歩として競争戦略に結び付ける役割を果たす。×将来手掛ける事業の定義を決定するのは企業ドメインです。また、事業ドメインが全社戦略策定の第一歩となるのではなく、企業ドメインの決定が全社戦略策定の第一歩となります。
  4. 事業ドメインの決定は、多角化の広がりの程度を決め、部門横断的な活動や製品・事業分野との関連性とともに、将来の企業のあるべき姿や経営理念を包含している存続領域を示す。×
  5. 事業ドメインの決定は、特定市場での競争戦略に影響を受け、将来の事業領域の範囲をどう定義するかについて、企業が自らの相互作用の対象として選択した事業ポートフォリオの決定である。〇×将来の事業領域の範囲の定義は企業ドメインの対象です。また、企業自らの相互作用の対象として選択した事業ポートフォリオの決定は企業ドメインによる

企業の強み・弱み、経営資源 【平成23年 第3問】

 企業の強みと弱みに関する分析フレームワークについての記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 経営資源の模倣には直接的な複製だけではなく、競争優位にある企業が保有する経営資源を別の経営資源で代替することによる模倣もある。〇

イ 経営資源やケイパビリティが競争優位を生じさせており、企業の内部者にとって競争優位の源泉との関係が理解できない場合、経路依存性による模倣困難が生じている。×

経験の積み重ねがないと蓄積できない経営資源は「経路依存性」があるといいます。例えば、企業独自のノウハウやブランドのように、過去の経験の上に時間をかけて積み重ねられた経営資源は、模倣することが難しいため、持続的な競争優位につながります。

 また、「ケイパビリティ」は、「企業が持つ組織的能力」を表します。例えば、「製品開発のスピードの速さ」や「高品質」など、組織全体として優れている能力がケイパビリティです。経営資源だけでなく、ケイパビリティも競争優位の源泉になります。

経路依存性がある競争力については企業の内部者であれば競争優位の源泉であると認識ができるはずです。なぜなら、経路依存性は競争優位を築くための意識的な試行錯誤であるからです。 

企業の内部者にとっても競争優位と個々の経営資源の関係が不明確になるのは因果関係不明性です。企業にとって当然のことであったり、個別に分離しにくいものであったりすると企業の内部者でさえ競争優位の源泉との関係が理解できないことから生じる競争優位性です。例えば日本の自動車産業の強みは企業文化にまで昇華された絶え間ないカイゼン活動であると言われますが、企業の内部者にとっては入社したときから当たり前の活動になってしまっていること、他社と比較する機会がなかなか無いこと等からカイゼン活動が競争優位の源泉となっていることに気づかないということが生じます。

ウ 経営資源やケイパビリティに経済価値があり、他の競合企業や潜在的な競合企業が保持していないものである場合、希少性に基づく競争優位の源泉となりうる。〇

エ 経済価値のない経営資源やケイパビリティしか保持していない企業は、経済価値を有するものを新たに獲得するか、これまで有してきた強みをまったく新しい方法で活用し直すかの選択を迫られる。〇

オ 成功している企業の経営資源を競合企業が模倣する場合にコスト上の不利を被るのであれば、少なくともある一定期間の持続的な競争優位が得られる。〇

経営資源と戦略 【平成20年 第2問】

 経営資源と企業の戦略に関する記述として、最も不適切なものはどれか。


ア ある経営資源を保有しない企業は、すでに保有している企業に比べて、その複製が困難であると、コスト上の不利益を被りやすい。〇

イ 企業が特定の経営資源を獲得、開発、活用する能力は、企業の歴史的経緯に依存しているので、先行企業は持続的な競争優位を得やすい。〇

ウ 企業の競争優位と個々の経営資源の関係が不明確になるのは、内部者にとってその経営資源があまりに当然なものであったり、経営資源が個別に分離しにくく一体となって競争優位をつくり出しているからである。〇

「内部者にとってその経営資源があまりに当然なもの」というのは、たとえば企業文化などがあります。「常に改善を心がける企業文化」という経営資源は、内部の人にとっては当たり前に見えます。

 また、「経営資源が個別に分離しにくく一体となって競争優位をつくり出している」という状況は、例えば、企業文化や技術ノウハウなどが一体となって競争優位となっている状況です。トヨタの企業文化と技術ノウハウなどを思い浮かべると良いでしょう。

 このような場合は、企業の外部から見ると、「企業の競争優位と個々の経営資源の関係が不明確」になるため、模倣するのが大変難しくなります。つまり、一部分だけ真似してもうまくいかない、ということになります。



エ 競争優位の源泉である特殊な経営資源の外部からの調達可能性が高く、その調達コストが低いほど、それを調達する企業はコスト上優位になり、競争優位性を長期的に維持できる。×

オ 保有する経営資源が希少であることは大事であるが、そのような経営資源は特殊であるため、顧客の価値と合致しないことが起こりやすくなるので、これだけでは競争優位にはつながりにくい。〇希少な経営資源であっても、顧客の価値と合致しない場合は、競争優位性にはつながりません。例えば、アパレルメーカーが「特殊な新素材」を開発しても、商品化して顧客に価値を提供することができなければ、競争優位性にはつながらないということです。

VRIOフレームワーク 【平成29年 第3問】

 企業の経営資源に基づく競争優位性を考察する VRIO フレームワークに関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 外部環境の機会を適切に捉え脅威を無力化する経営資源は、業界内において希少でないときに、企業の一時的な競争優位の源泉となる。×

イ 希少で価値がある経営資源を保有する企業は、他の企業がその経営資源を別の経営資源で代替するコストが小さい場合、持続的な競争優位を確立する。×

ウ 組織内の事務作業を効率化する固有のノウハウは、業界内で希少でない場合、企業の一時的な競争優位の源泉となる。×

エ 独自に長い年月をかけて開発した価値ある経営資源を保有する企業は、その資源が業界内で希少でないとき、資源をいかす組織の方針や体制が整わない中でも持続的な競争優位を確立する。×経営資源に希少性がなければ一時的にも競争優位を築くことはできませんし、競争優位を発揮するために組織がなければ持続的競争優位を最大化することはできません。

オ 予測が困難な環境変化が起きない場合は、希少で価値があり模倣が難しい経営資源は企業の持続的な競争優位の源泉となる。〇予想困難な環境変化は競争優位の源泉に大きな影響を及ぼし、それまでの競争優位性を得られなくなる可能性があります。しかし、そのような場合でなければ希少性と模倣困難性を有した経営資源は企業の持続的優位の源泉となります。

模倣困難性 【平成30年 第3問】

 企業の経営資源に基づく競争優位を考察するVRIOフレームワークにおける模倣困難性は、持続的競争優位を獲得するために必要な条件とされている。この模倣困難性に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア A社が、模倣対象のB社が保有する経営資源やケイパビリティと、B社の競争優位の関係を理解しているか否かは、A社がB社の模倣を行う時のコストに影響を与える要因にならない。×「A社が、模倣対象のB社が保有する経営資源やケイパビリティと、B社の競争優位の関係を理解しているか否か」はA社がB社における「因果関係不明性」、「独自の歴史的経緯」を理解しているかを示す表現です。理解していなければ、A社はB社の競争優位性が、その経営資源やケイパビリティにおいて、どの点が模倣困難であるのか、それを利用していかに持続的競争優位性を得ているのかを理解していないことになります。つまり、因果関係不明性が解明されていないということになります。その解明には時間がかかり模倣するための技術などを取得するコストに影響を与えることになります。従って、模倣困難性の要因となります。

イ C社が、新規事業に必要不可欠な経営資源を、その将来における最大価値を下回るコストで入手した場合、競合会社D社が、C社より相当に高いコストでも同様の経営資源を獲得できる限り、C社の経営資源に模倣困難性はない。×

ウ 最先端の機械Eを使いこなすために熟練技能者同士の協力関係が必要であり、かつ、熟練技能者同士の協力関係の構築に相当な時間とコストを必要とする場合、最先端の機械Eを所有しているだけでは、模倣困難性による持続的競争優位の源泉にはならない。〇

エ 相当な時間を要して獲得したF社のノウハウやネットワークが、優れた製品を生み出すための重要な要素で希少性もあり、また競合会社が短期間で獲得するにはコスト上の不利が働くとしても、F社の模倣困難性を持つ経営資源にはなりえない。×

情報的経営資源 【平成24年 第3問】

 現代の企業において、経営資源の利用と蓄積は、経営戦略の策定と実行にとって重要である。経営資源は、通常、人的資源、物的資源、資金、情報的資源に区別される。情報的資源に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 企業活動における仕事の手順や顧客の特徴のように、情報的資源は日常の企業活動を通じて経験的な効果として蓄積される。〇

イ 企業活動における設計図やマニュアルのように言語や数値化されているような情報は、熟練やノウハウなどよりも模倣困難性が高くない。〇

ウ 企業にとって模倣困難性の低い情報的資源が競争にとって重要ならば、特許や商標のような手段で法的に模倣のコストを高める必要はない。×

エ 企業の特定の事業分野における活動で蓄積された情報的資源の利用は、その事業に補完的な事業分野に限定されない。〇

オ 企業のブランドやノウハウのような情報的資源は、その特殊性が高いほど企業に競争優位をもたらす源泉となる。〇

ドメインの意義・種類

 ドメインの意義や種類に関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア ドメインは、事業を行う領域を表し、具体的には、何を提供するのかを定義することである。×ドメインは、事業を行う領域を表します。具体的には、誰に、何を、どのように提供するのかを定義するのがドメインになります。ここでポイントは、「何を」だけではないということです。つまり、商品の分野を決めるだけでなく、「誰に」という顧客の視点を持つことが重要です。記述には、誰に、どのようにという点が不足しています

イ 意思決定を明確にすることがドメインの目的であり、これにより、トップマネジメントをはじめとして従業員全員の迅速な意思決定を図ることができる。×意思決定を明確にするために、ドメインは定義されますが、その目的はこれだけではありません。その他に、ドメインを定義する目的として、経営資源を集中できる組織を一体化できるという点が挙げられます。

ウ ドメインには、企業全体を表す企業ドメインと、事業単位のものである事業ドメインがある。〇

エ 複数の事業を展開している企業においては、企業全体の統一性を図るために事業ドメインは不要であり、企業ドメインを定義する必要がある。×

ドメインの定義

 ドメインの定義に関する説明として、最も不適切なものはどれか。


ア ドメインを定義する方法には、ドメインをモノとして定義する物理的な定義と、ドメインをコトとして定義する機能的な定義がある。〇

イ ドメインを定義する際に、市場軸、機能軸、技術軸の3つの軸を切り口として定義するものがある。〇

ウ 市場軸によってドメインを定義するものは、マーケットの規模によってドメインを定義する方法である。×

エ ドメインは、ひとたび定義したら変えてはならないものではなく、環境変化に適応して、時代にあわせて変更することが必要である。〇

アンゾフの成長ベクトル

 アンゾフの成長ベクトルに関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア アンゾフは、企業が新しい製品市場分野に参入する場合における、新製品市場分野と旧製品市場分野との間に結合する効果を、成長ベクトルと名付けた。×H.I.アンゾフは、企業成長の方向性を成長ベクトルと名付けました。これは、企業が新しい製品市場分野に参入する場合における、その新製品市場分野と旧製品市場分野との間に結合する効果ではありません。製品について新製品か現有製品かの2通り、市場について新市場か現行市場かの2通りで、2×2=4通りの組み合わせで示されるものです。

イ アンゾフは、企業が現行の市場に対して現有の製品を継続しながら売上高や市場占有率の拡大を図っていく戦略を、市場開拓戦略とした。×市場浸透戦略

ウ アンゾフは、企業が新規の市場に対して現有の製品を投入することで売上高や市場占有率の拡大を図っていく戦略を、市場浸透戦略とした。〇×市場開拓戦略

エ アンゾフは、企業が新規市場に対して新製品を投入することで市場を開拓していく戦略を、多角化戦略とした。〇

関連型多角化と水平的多角化

 多角化戦略に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

ア 関連型多角化では関連性の深い事業への多角化であるため、既存事業と新規事業のシナジー効果が高い収益性をもたらす。〇相互の事業間の有機的な組み合わせにより掛け算的効果、つまりシナジーが生み出されます。

イ アンゾフの水平型多角化は現在の顧客と同じタイプの顧客を対象にして、新製品を投入する多角化である。〇ここでいう水平型とは、市場が似ているという意味です。

ウ アンゾフの集成型多角化はコングロマリット型多角化であり、既存市場、製品とほとんど関連がない市場に新製品を投入する。〇新製品投入が既存の市場、製品と関係が薄いという点で、コングロマリット企業が様々なタイプの事業を買収している姿と重ねて理解

エ 非関連多角化は一般性が高い経営管理スキルや財務資源以外、関連性が希薄な多角化であるが、不調な事業の損失を好調な事業の利益が補うシナジーが発揮される。×相補(コンプリメント)効果

 多角化の誘因

多角化の誘因に関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア 関連多角化とは、企業が既存の事業と関連のない事業に新たに進出することをいう。×

イ 企業が関連多角化を行う主な目的は、企業全体としてのリスク分散を図るポートフォリオ効果を得るためである。×

ウ 企業が非関連型多角化を行う主な目的は、複数の関連する要素を結びつけて各要素の持つ力の総和を超えた力を出すシナジー効果を得るためである。×

エ シナジー効果とは、企業が新しい事業に進出する場合に、新しい事業と既存の事業との間に生じる相乗効果のことであるが、これは常にプラスに働くとは限らない。〇

BCGによるPPM

 BCG(ボストンコンサルティンググループ)によるPPMに関する説明として、最も適切なものはどれか。


ア PPMは、ヒト、モノ、カネ、情報という経営資源のうち、情報についてみたものである。×

イ PPMの理論によると、「金のなる木」から得られた資金を、将来の「花形」や「金のなる木」に育成するために将来性のある「問題児」に投入することが有効な投資策となる。〇

ウ PPMでは、縦軸に市場成長率をとり、経験曲線効果を前提として横軸に絶対的市場シェアをとって4つのセルに分類されるが、そのうち「問題児」とは低い市場成長率-低い絶対的市場シェアのものをいう。×縦軸に市場成長率をとり、横軸に相対的市場シェア

エ PPMは、新規事業開発に関して具体的な戦略を提供することができる分析ツールである。×

 PPMとキャッシュ・フロー

 PPMに関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア PPMの考え方では、資金の流入と流出は市場と自社事業との成長率で決定される。×PPMは自社事業の成長性は考慮していませんあくまで市場の成長性である点注意しましょう。資金の流入と流出は、主に横軸の相対的市場シェアによって決定されます。

イ 「負け犬」事業からの撤退を進めるためには「花形」からのキャッシュ・フローが重要である。×

ウ 「負け犬」事業からの撤退の検討に加え、資金投入によって成長市場でシェアの拡大が見込める「問題児」の選択が重要である。〇

エ PPMは、外部からの資金調達を考慮していないが、事業の財務面を重視した事業間のシナジーを考慮している。×

経験曲線効果と経済性概念

 経験曲線効果と経済性概念に関する次の文中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 企業である製品の累計生産量が2倍になると、1製品あたりのコストが20 %~30 %程度減少するという経験則のことを、( A )という。

 また、生産規模が大きくなるほどコスト面で有利になることを( B )といい、企業が1つの事業を行うよりも、複数の事業を行う方がコスト面で有利になることを( C )という。そして、( D )とは、ある商品やサービスの消費者にとって、自分以外の消費者の数が増えるほど、自分の満足度がより一層高まる効果のことをいう。



A:経験曲線効果〇 B:規模の経済性〇
C:範囲の経済性 D:ネットワーク効果


A:経験曲線効果 B:範囲の経済性
C:規模の経済性 D:ネットワーク効果


A:規模の経済性 B:経験曲線効果
C:範囲の経済性 D:ネットワーク効果


A:規模の経済性 B:範囲の経済性
C:ネットワーク効果 D:経験曲線効果

M&Aの手法

 M&Aの手法に関する説明として、最も不適切なものはどれか。

ア TOBとは、株価と期間を表明して、証券取引所から大量に株式を買い付けることをいう。×

イ MBO(マネジメントバイアウト)とは、現在の経営陣が、自社や事業を買収することをいう。〇

ウ MBI(マネジメントバイイン)とは、企業の外部の経営陣による買収のことをいう。〇

エ LBOとは、買収される企業の資産や将来性を担保に、資金を金融機関から借り入れて、その資金で買収することをいう。〇

垂直的統合

 M&Aのタイプについて、最も不適切なものはどれか。

ア 垂直的統合は、自社の商流における上流や下流の企業を買収することであり、自社が川下企業であれば、川上企業や川中企業を買収することである。〇

イ 垂直的統合では、範囲の経済性が発揮しやすいが、サプライチェーンの管理は困難である。×サプライチェーン(川上~川中~川下)の統制がしやすくなります。

ウ 水平的統合とは、同業他社との合併や買収により、市場シェアを高めることを目的としている。〇

エ 水平的統合によって、規模の経済性を得ることができる。〇

MBO(Management Buy Out、マネジメントバイアウト)

 オーナー社長が経営する企業の事業承継の方法として MBO(Management Buy Out)がある。MBO に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア オーナー社長は、外部の投資ファンドに株式を売却し、新たな役員を外部から迎えて経営を引き継がせる。×

イ オーナー社長は、役員ではないが、創業時から勤務する企画部長と営業部長に株式を売却して、経営を引き継がせる。×

ウ オーナー社長は、社外の第三者に株式を売却して、役員ではない従業員に経営を引き継がせる。×

エ 営業担当役員と総務担当役員は、金融機関から融資を受けてオーナー社長から株式を買い取り経営を引き継ぐ。〇

アウトソーシング

アウトソーシングに関する説明として、最も不適切なものはどれか。


ア アウトソーシングとは、企業が自社の業務を外部に委託することをいう。〇

イ アウトソーシングは、近年、経理、人事など間接部門全般、そして物流、開発業務、製造プロセス、電力供給などあらゆる分野に拡大してきている。〇

ウ アウトソーシングの目的のひとつに、自社の得意分野への経営資源を集中することが挙げられる。〇

エ 作業プロセスの設計業務も任せ、自社で行う以上の成果を受け取ることはアウトソーシングとはいわない。×経営手法としてのアウトソーシングは、当該業務の企画・設計段階から高い専門性を持つ企業に任せ、業務管理自体も任せるものを指す場合があります。すなわち、重要度が低い定型業務をよりコストの低い企業に委託するのがいわゆる「外注」や「下請け」ですが、経営手法としてのアウトソーシングは、重要な業務であっても外部企業の専門性に期待して外部化することを含んでいます。

事業の再構築

 事業の再構築に関する次の記述を表す用語として、最も適切なものはどれか。


 事業構造を再構築して経営の仕組みを変革することであり、企業のビジョンを達成するために、事業構造を変革したり、効率的な経営の仕組みをアウトソースしたりすることなどを含めて再検討すること。

ア アライアンス×

イ 会社分割×

ウ リストラクチャリング〇

エ ビジネスプロセスリエンジニアリング×ビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR:Business Process Re-engineering)とは、業務プロセスに着目して従来のプロセスを根本的に変革することをいいます。リストラクチャリングは企業全体のレベルであるのに対し、ビジネスプロセスリエンジニアリングは業務プロセスのレベルのものです。

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