平成21年度 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例2(マーケティング・流通を中心とした経営戦略・経営管理に関する事例)・平成21年度 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例3(生産・技術を中心とした経営戦略・経営管理に関する事例)

与件文

B社は、X市の中心部にあるX銀座商店街の一角に本店店舗を構えるスポーツ用品店である。資本金3,000万円、従業員数20名、年商5億円で、隣接する市に2店舗支店を持つ。本店を含めいずれの店舗においても、地域の学校や団体との関係を深め、緻密な商品供給とサービスに力を入れてきた。また、従業員の顧客対応に関しても住民からの評判が良かった。なおB社は、本店裏にかつて倉庫と駐車場であった土地を保有しており、その再利用を考えている。

 X市は大都市近郊にあり、人口30万人を抱え、古くから城下町として栄えてきた歴史と文化や伝統を持つ商業都市である。市の中心に位置する城跡公園は市民に親しまれているだけではなく、史跡や街中の寺院を訪れる観光客の数も多い。この公園を中心に市庁舎や企業のオフィス街があり、X銀座商店街も伝統と近代化の流れの中で時を刻んでいる。100年ほど前の大火事の経験から、耐火建築の蔵造りが注目され、今日の「蔵造りの町並み」が築かれている。公園から商店街を通って徒歩10分ほどのところにX駅があり、都心部と鉄道で直結している。駅には専門店やレストランとホテルが入った駅ビルが隣接している。B社にとって幸いだったのは、駅ビルの中にはスポーツ用品店はなかったことである。

 X市内には、小・中学校と高校の他に、中心部を外れたところに複数の大学のキャンパスもあり、X市は昔から教育水準が高いとされている。B社は、長年にわたって、市内の学校の体操着やクラブ活動のユニフォーム、大学のサークルのユニフォームなどの注文を一手に受けてきた。また、B社本店には、市内の草野球リーグやママさんバレーボールリーグの事務局が置かれ、試合会場の手配などをB社はボランティアで引き受けている。その関係でユニフォームや用品の受注も安定している。B社が毎月発行するミニコミ誌やホームページには、地元スポーツの試合結果が掲載されている。最近では、大学生を中心にフットサル(問題文の末尾参照)の人気が高まり、市内でリーグ戦ができるほどにチーム数も増えている。それに伴いフットサル用品の需要も増えてきている。

 数年前、X市の郊外に大型小売業がディベロッパーとなるショッピングセンター(以下「SC」という。)が出店した。この影響で、X銀座商店街全体の売り上げも少しずつ減少し始めた。SC内の競合店に客を奪われた店舗の中には、後継者問題も絡んで閉店を考えようとするものも出てきた。SC内には2つのスポーツ用品店があり、1つは大手チェーンのスポーツ用品店で、もう1つはファッション重視のスポーツ用品店である。大手チェーンのスポーツ用品店は、各種スポーツのプロ志向の需要にも応えようとする品揃えをしている。また、もう1つのスポーツ用品店は、若者向けスポーツカジュアルのファッションに重点を置いた品揃えを行っている。

 最近、X市の中心部では、出社前や昼休み、そして早朝や夕方に公園周辺をウォーキングやジョギングする人が増えている。週末や休日になると、さらにその人数は増加しており、高齢者の割合が増えてきている。

 このようなランナー達のグループ作りが盛んになっており、企業や大学のサークルだけではなく、お互い面識も無いのに1人で走っているうちに顔見知りとなり、グループを作って一緒に走る者も増えている。

 ランナー達の悩みは、着替えとシャワーであるが、商店街の裏通りにある銭湯がランナー達のニーズに応えている。また、夕方になると銭湯が社交場となって、グループ同士で近隣の居酒屋へ出掛けていく者たちも多い。しかし、この銭湯は昔から人気があり、高齢者を中心に数多くの人々が利用してきた。ランナー達がこの銭湯をりようすることにが増えるにつれ、銭湯が非常に混み合ってきている。そこで、この銭湯は何か事業ができないか模索している。

 そのような状況の中で、X市は伝統に配慮した道路整備を行い、城下町であるが故に見通しの悪い入り組んだ道路をできるだけ広くするために、電線の地中化を進めている。また、商工会議所を中心に「街おこし」としての企画を考えていた。そしてその1つとして、全国各地で定着しつつある「市民マラソン」を計画している。「健康」と「観光」を融合させ、「歴史と文化を走りぬけよう」というテーマで、城跡公園がスタートとゴールになり、5km、10km、ハーフマラソンの距離別で、初心者、親子から本格的ランナーまでが楽しめる大会を目指している。特に、5kmでは高齢者の参加希望者が多い。X銀座商店街も、もちろんそのコースの中に入っている。電線の地中化により広くなった蔵造りの町並みの中を、市民と全国から参加するランナーたちが歴史と文化の香りの中を、颯爽と駆け抜ける光景は、毎年秋に行われる祭りと同様の活気を見せるであろう。

 さて、少子高齢化の波はX市内の学校の生徒数の減少にも表れてきている。都市部から交通のアクセスが良いことで、マンション建設も増えてはいるが、その影響による生徒数の増加は一時的なもので、長期的に見れば安定的なものとはいえない。また、高齢者の割合も増え、草野球人口も少しずつ減少してきた。B社の売り上げは徐々にではあるが低下してきている。

【フットサル】

「フットサル(futsal)」は、基本的に室内で行われる5人制のミニサッカーのようなもので、ピッチ(コートのこと)の広さはサッカーの約1/7~1/8である。また、スライディングタックルなどの接触プレーは禁止されているので、ジュニアから中高年、女性まで気軽に参加できるスポーツとして人気が出てきている。

与件文&問題読込8分。

第1問(配点20点)ショッピングセンター内の2つの競合店に対してB社の強みを活かした差別化戦略は、具体的にどのようなものか。80字以内で2つ答えよ。

問題の制約条件が「ショッピングセンター内の 2 つの競合店に対して」で、2 つの競合店があり差別化戦略を 2 つ答えよという指示がなされていますので、2 つの競合店それぞれについての差別化戦略を答えるべきでした。

解答構成記入10分、配点20点中自己採点12.5点。

第2問(配点10点) B社が需要拡大のために、これからターゲットとすべき顧客層とはどのようなものか。30字以内で2つ答えよ。

1 つには、フットサルと限定するよりも「新しく人気が出てきたスポーツ」とした方が、B 社がターゲットとする意図が明確になり、需要の拡大という観点からも、より広い顧客層を対象とするべきでした。もう 1 つは、高齢者も楽しむスポーツをする層を対象とすることが、需要の拡大につながるとすべきでした。

解答構成記入7分、配点10点中自己採点5.5点。

第3問(配点40点)B社は顧客の拡大と自社へのロイヤルティ(愛顧)を高めるために、新しい事業を考えている。どのような事業が考えられるか。(設問1)B社は自社だけで行えるサービスを考えている。それはどのようなものか、120字以内で答えよ。

ほぼ記載できましたが、ランナー達の悩みが着替えとシャワーであり、そのニーズも取り込むべきでした。新規事業では、どのようなターゲット顧客に、どのような商品・サービスを、どのように提供するかという 3 点を明確にすると整理された解答になると考えるべきでした。

解答構成記入13分、配点20点中自己採点17.5点。

設問2)B社は商店街の裏通りにある銭湯との共同事業を考えている。どのようなサービスが考えられるか、120字以内で答えよ。

新規事業を提案する問題には唯一の正解は存在しないので、与件文と問題文から妥当性のある解答を導いて、部分点は確保できました。

現在の市場状況でスーパー銭湯が苦戦していることと投資費用が大きいことから採用しませんでしたが、銭湯がランナー達の社交場となり、グループ同士で近隣の居酒屋へ出掛けており、飲食をしながらの交流を望んでいることから、銭湯、交流スペース、飲食を兼ね備えたスーパー銭湯と書いても試験上は相応しかったです。

解答構成記入22分、配点20点中自己採点17.5点。

第4問(配点30点)B社はインターネットを使って、自社のPRだけではなく、地域内外の人々と何らかのコミュニケーションを図ろうとしている。それはどのようなものが考えられるか、150字以内で答えよ。

あえて「地域内外の人々」と指示されているため、地元の人々とのコミュニケーションと地域外の人々とのコミュニケーションを分けて、さらに、それぞれのコミュニケーションを行うことによる効果も記載するべきでした。また、ホームページで一方向のコミュニケーションにおわらせず、SNS等で双方向コミュニケーションを記載すべきでした。

解答構成記入9分、配点30点中自己採点20点。

読込&全記入76分(4分余裕)、自己採点73点。

今回は比較的易しかったのか合格ラインには載せれましたが解答ロジックの論理化緻密化をもっと向上すべきことが課題です。

与件文

【C社の概要】

 1980年創業のC社は、ダイニング用テーブル、チェア、スツールなどを主力にする木製家具製造業である。資本金は5,000万円、従業員は総務・経理部門6名、営業部門12名、製品開発・設計部門18名、製造部門84名の合計120名である。なお、営業部門は販売業務のほか、製品在庫管理、製品出荷業務を担当している。

 木製家具製造業は、一般に生産地または消費地の家具問屋を経由して小売店に販売している。その中で、家具専門の中小小売店では総じて売り上げが低迷しているが、消費者に対してライフスタイルの提案を積極的に展開しているインテリア用品・生活用品を扱う小売店や、製造小売型(SPA)の大型小売店の売り上げは比較的好調である。このような木製家具業界にあって、C社は全国の小売店約300社に直接販売している。その販売先の約80%は、主にインテリア用品・生活用品を取り扱う小売店が占め、家具専門の小売店数が少ないのが特徴である。販売先の小売店では、C社製品の一部を展示しその他の製品はカタログによって販売活動を行っている例が多い。販売実績が大きな有力販売先では、C社製品を中心に生活空間を演出する展示スペースを設けている。現在、この有力販売先の一つである大手インテリア用品小売チェーンから、OEM製品の取引打診があり、先方から製品アイデアの提供を受けて製品化を進めようとしている。

 C社製品は、塗料や接着剤に有害物質が含まれていないものを使用し、消費者の健康、安全志向にマッチした製品である。ダイニング用テーブル、チェアのセットの平均販売価格は15万円前後と比較的高額であるが、幼い子供を持つ若い主婦層に受け入れられている。近年の低迷する木製家具業界にあって、C社の収益には大きな増加は見られないものの、年商は約18億円前後で推移している。現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンからのOEM製品受注が現実のものになると、年間で約1割程度の売り上げ増が見込まれている。

【新製品開発と製品アイテム】

C社の新製品開発のコンセプトは「20~30歳代の主婦に喜ばれる家具」である。新製品開発情報は、各営業担当者がそれぞれ担当する販売先の小売店から消費者の嗜好、要望などを情報として入手し、製品開発・設計部門に提案している。このような新製品に関する多くの提案によって、積極的な新製品開発を進めており、その結果、現在の自社ブランド製品は使用する木材の品種違い、塗装の色違いを含めて170アイテムと多くなっている。製品はカタログに掲載され、販売先や消費者に配布されているが、その中には出荷頻度および出荷数量が極端に少ない製品も見られる。

【生産の現状】

 小売店からの注文に対しては、その当日に製品を出荷することを取引の基本としている。そのため、製品は見込生産であり、製品ごとにロット生産している。C社の生産工程は、部品切断加工⇒部品機械加工⇒部品仕上げ加工⇒組立て⇒塗装・仕上げ⇒梱包の6工程である。そのうち、部品機械加工の一部と販売数量の少ない製品によっては完成までを外注工場に依存している。

 毎月中旬に開かれる営業部門との製販会議で翌月の販売予測数量が提示され、生産計画では、それを参考に翌月の生産品目、生産順が決められている。生産計画作成後は、営業部門との定期的な情報交換は行われていない。

 生産工程上のボトルネック工程は部品機械加工工程である。この工程における段取り作業回数を減らし稼働率を上げるために、生産ロットサイズは部品機械加工工程の1日で加工可能な数量にて決定されており、現在は約100~150個である。この生産ロットサイズは営業部門の月販売予測数をどの製品も上回っている。その結果、製品在庫は全体で月平均出荷量の2倍以上常に存在し、少しずつ増加している。しかし、製品によっては欠品が発生し、販売先に即納できないこともしばしば生じている。毎月後半になると、営業部門から欠品している製品の追加生産依頼があり、生産が不安定になる。製造部門の責任者は生産計画の変更、それに伴う原材料の確保、各工程能力の調整、外注工場への生産依頼など、その日その日の調整作業に追われている。

 日々の作業指示は第1工程の部品切断加工着手日を計画して指示するが、その後の工程の作業指示は特になく、現場対応で進められている。生産着手から生産完了までのリードタイムは、最短のもので半月、最長のものでは1ヵ月半となっている。このため、注文の際に製品在庫が不足している場合には、納品までに1ヵ月以上顧客を待たせる事態も時には生じているが、幸いにも欠品により注文がキャンセルされる確率は低い。

 このような生産工程の状況下で、製造部門は、経営上問題となっている過大な製品在庫の削減、および製品の欠品問題の改善を経営者より指示され、対策に苦慮している。また、現在進めようとしている大手インテリア用品小売チェーンのOEM製品では、従来の見込生産とは違い、受注生産で一括納品する方向であり、受注後の納期の回答が求められる。

与件文&問題読込11分。

第1問(配点10点)低迷する木製家具業界にあって、C社は安定的な業績を維持している。その考えられる理由を120字以内で述べよ。

販売先の多くが比較的好調であること、健康・安全志向にマッチした製品を提供していること、消費者の嗜好・要望に応じた新製品を開発していることと記載すべきでした。

解答構成記入12分、配点10点中自己採点6点。

第2問(配点40点) C社では、経営上大きな問題となっている過大な製品在庫および製品の欠品について改善を検討している。次の設問に答えよ。(設問1)過大な製品在庫と製品の欠品が生じている理由を100字以内で述べよ。

生産ロットサイズが大きすぎるため、アイテム数が多く出荷の少ない製品の在庫も抱えているため、の記載もすべきでした。

解答構成記入12分、配点20点中自己採点7点。

(設問2)製品の在庫問題を解決するために、生産面で必要な対策を120字以内で述べよ。

ボトルネックである部品機械加工工程の外段取り化等の改善を行うことの記載もすべきでした。

解答構成記入13分、配点20点中自己採点17点。

第3問(配点40点)C社では、大手インテリア用品小売チェーンからOEM製品の取引要請があり、共同で製品化を進めようとしている。(設問1)大手インテリア用品小売チェーンとのOEM製品取引は、C社にとってどのようなメリットがあるのかについて80字以内で答えよ。

一定の生産量の確保による稼働率の向上、OEM先からの製品アイデアの提供による製品開発力の向上、も記載すべきでした。

解答構成記入5分、配点20点中自己採点10点。

(設問2)C社のOEM事業推進において考えられる課題とその対応策について120字以内で述べよ。

課題は納期の回答だけでなく遵守、対応策は、工程管理を徹底で、具体的には、全工程で作業日程計画を作成し、作業指示と進捗管理、これにより、生産リードタイムを安定させ、正確な納期回答とその遵守を図る、と記載すべきでした。

解答構成記入10分、配点20点中自己採点10点。

第4問(配点10点)C社の自社製品は見込生産であり、現在製品化を進めようとしているOEM製品は受注生産で対応する予定である。C社の見込生産と受注生産の違いを、重視すべき情報と管理ポイントの視点から80字以内で述べよ。

在庫数と書きましたが生産計画の作成と見直し、納期日回答というよりも納期を遵守するため、生産数達成よりも工程管理を行って進捗を管理することと記載すべきでした。

解答構成記入9分、配点10点中自己採点6点。

読込&全記入74分(6分余裕)、自己採点56点。

またもや今ひとつ点数が伸びませんでした。より丁寧な解答ロジック作成が課題です。

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