経営法務 事業再編と持分会社 契約とその他の法律知識

事業再編と持分会社

問題 1 吸収合併 【平成23年 第3問】

 A株式会社(以下「A社」という。)と、B株式会社(以下「B社」という。)は、A社を吸収合併消滅会社、B社を吸収合併存続会社として、おおむね以下のスケジュールで吸収合併を実施する予定である。その際、A社の吸収合併の手続に関する記述として最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、A社の定款には、関連する事項についての特段の定めはなく、また、A社は、発行する株式の全てが譲渡制限株式であり、かつ、取締役会設置会社であるものとする。

 平成24 年2月20 日(月) 吸収合併契約の調印

 平成24 年3月14 日(水) 吸収合併契約承認の株主総会

 平成24 年4月1日(日) 吸収合併の効力発生日

[解答群]

ア A社では、吸収合併契約書を本店に備え置く必要があるが、本件の場合、吸収合併契約調印の翌日の平成24 年2月21 日から備置きを実施しなければ、本吸収合併は無効となる。

イ A社の株主に対しては、株主総会の招集通知と株式買取請求権に関する通知をしなければならないが、前者は株主総会の1週間前まで、後者は吸収合併の効力発生日の20 日前までと決まっているので、同時に通知することはできない。

ウ A社の債権者が1社だけの場合であっても、A社では、その債権者に対して本件吸収合併について通知するだけでなく、吸収合併の公告を行わなければならない。

エ 今回の吸収合併の場合、効力発生日が日曜日にあたり、法務局で登記を受け付けてもらえないため、A社の登記上、解散の理由は、実際に登記申請した日に合併した旨記載され、平成24 年4月1日に合併した旨は記載されない。

吸収合併の際、消滅会社においては、合併契約に関する書面を備え置き、会社債権者および株主に閲覧させる必要があります。この書面を備え置く期間は、原則として、合併の承認を受ける株主総会の日の2週間前の日から、合併の効力発生日後6ヶ月を経過する日までとなっています。

株式譲渡制限会社であり、取締役会設置会社でもある株主総会の招集は、1週間前までに、書面または電磁的方法で株主に通知を発する必要があります。一方、株式買取請求権に関する通知は、合併の効力発生日の20日前までにする必要があります。

株主総会の招集に関する通知と、株式買取請求権に関する通知は同時に行っても問題ありません。

合併をするためには、会社は債権者保護手続きが必要になります。債権者保護手続きでは、会社は合併に関する事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別に催告(通知)する必要があります。これは、債権者が1社だけであっても同様です。

 会社法では、吸収合併の効力は、登記日ではなく、会社間で定めた効力発生日に発生すると規定しています。

会社分割 【平成22年 第4問】

 甲株式会社(以下「甲社」という。)では、営業部門を会社分割の手続を利用して分社化することとしているが、その中で、従業員A~Dの所属について、以下の対応を検討している。これら従業員のうち、「会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」第2条第1項に基づく通知が必要となる者の組み合わせとして最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、分社化により新たに設立される会社を乙株式会社(以下「乙社」という。)とする。

 従業員A:入社以来、営業部門に従事している者であるため、会社分割に際しても、乙社所属とする。

 従業員B:総務部門に従事する者であるが、乙社での総務担当者がおらず、従業員Bは過去に営業部門に関連する総務業務も担当していたことがあるため、会社分割に際しては、乙社所属とする。

 従業員C:経理部門に従事し、営業部門に関連する経理も若干担当していたことはあるものの、会社分割に際しては、甲社所属とする。

 従業員D:一昨年の人事移動で、営業部門に異動となり、その後約2年間その業務に従事していたが、適性の問題もあることから、会社分割に際しては、甲社所属とし、異動前の部署に戻す。

[解答群]

ア A、B、C

イ A、B、D

ウ A、C、D

エ B、C、D

 分割する事業に従事する労働者の労働契約は、原則として事業と一緒に承継されます。承継について労働者本人の同意は必要ありません。分割する事業に従事する労働者の労働契約が、事業と一緒に承継されない場合は、労働者は異議を申し立てることができます。異議申し立てがあった場合は、労働契約は事業と一緒に承継されます。

新設分割 【平成28年 第3問】(設問1)

 以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社(以下「X社」という。)の代表取締役甲氏との間で行われたものである。X社は、αの製造販売事業(以下「α事業」という。)を営んでいる。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

 甲氏:「おかげさまで弊社のα事業は好調です。そこで、業容を拡大したいと考えていたところ、先日ちょうど、取引銀行を通じて、弊社と同じα事業を営んできたY社から、事業の選択と集中を進めたいから同事業を買収しないかという話をもらいまして、現在前向きに検討しています。Y 社は、α事業以外の事業も営んでいるので、新設分割でα事業をいったん切り出して子会社Z社を設立し、弊社がY社からZ社の全株式を現金で買い取るスキームを考えています。何か注意しておいた方がいいことはありますか。」

 あなた:「(A)。それから、同業他社から競合する事業を買収することになりますから、独占禁止法に抵触するかどうかも問題になります。少なくとも公正取引委員会への届出の要否については検討しなければなりません。」

 甲氏:「(B)。」

 あなた:「(C)。いずれにせよ、事業の買収、特に買い手の場合には、大小様々なリスクを伴いますから、その分野に詳しい専門家からアドバイスを受けないと後で痛い目を見ますよ。ちょうどいい人を知っていますから紹介しますよ。」

 甲氏:「ありがとうございます。」

(設問1)

 会話の中の空欄Aに入る記述として、最も不適切なものはどれか。

ア α事業に関係する債務は、Z社が承継する債務から除外することはできないので、α事業に関係する簿外債務がないかどうかの調査が重要になります

イ Y社がα事業に関して締結している契約の中に、会社分割が解除事由として定められているものがないかの確認が重要になります

ウ Z社においてα事業を営むのに新たに許認可を取得することが必要な場合には、その許認可を得るのに必要な期間やコストを把握しておく必要があり、そのコストをX社が負担するのかY社が負担するのか交渉する必要があります

エ 契約の分割等の要否を検討するために、Y社が、α事業とそれ以外の事業の双方で、同一の契約に基づいて使用しているリース資産やシステムがないかどうかの確認が必要になります

新設分割の場合、契約関係は新設会社に包括的に承継されますので、簿外債務の調査は重要です。しかし、承継の対象となる債務などの権利義務関係については、新設分割計画書で自由に範囲を決めることができます。

新設分割 【平成28年 第3問】(設問2)

 以下の会話は、中小企業診断士であるあなたとX株式会社(以下「X社」という。)の代表取締役甲氏との間で行われたものである。X社は、αの製造販売事業(以下「α事業」という。)を営んでいる。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

 甲氏:「おかげさまで弊社のα事業は好調です。そこで、業容を拡大したいと考えていたところ、先日ちょうど、取引銀行を通じて、弊社と同じα事業を営んできたY社から、事業の選択と集中を進めたいから同事業を買収しないかという話をもらいまして、現在前向きに検討しています。Y 社は、α事業以外の事業も営んでいるので、新設分割でα事業をいったん切り出して子会社Z社を設立し、弊社がY社からZ社の全株式を現金で買い取るスキームを考えています。何か注意しておいた方がいいことはありますか。」

 あなた:「(A)。それから、同業他社から競合する事業を買収することになりますから、独占禁止法に抵触するかどうかも問題になります。少なくとも公正取引委員会への届出の要否については検討しなければなりません。」

 甲氏:「(B)。」

 あなた:「(C)。いずれにせよ、事業の買収、特に買い手の場合には、大小様々なリスクを伴いますから、その分野に詳しい専門家からアドバイスを受けないと後で痛い目を見ますよ。ちょうどいい人を知っていますから紹介しますよ。」

 甲氏:「ありがとうございます。」

(設問2)

 会話の中の空欄BとCに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

ア B:株式買取りのスケジュールには影響しますか

  C:公正取引委員会が短縮を認めてくれない限り、最短でも届出を受理されてから、30日を経過するまでは、株式を取得することはできないので、スケジュールに影響しますね

イ B:届出を行うのは、X 社ですか。Y社ですか

  C:Y社です

ウ B:届出を行う前に、公正取引委員会に相談に行くことはできるのですか

  C:できません

エ B:どんな規模でも届出が必要になるのですか

  C:X社の企業グループ全体の国内売上高が10億円以上の場合で、かつ、Z社とその子会社の国内売上高の合計が1億円以上の場合に、届出が必要になります

原則として公正取引委員会の株式取得の届出受理の日から30日を経過するまで、会社は株式取得を禁止されます。これを禁止期間といいます。例外的に、会社が期間の短縮を請求して、公正取引委員会が認めた場合には禁止期間が短縮されます。

株式取得の届出を行う前に、公正取引委員会に対して企業結合計画に関する相談を行うことができるようになりました。これは、届出前相談といわれています。

企業結合集団の国内売上高の合計額が200億円を超える会社が、国内売上高が(子会社も含めて)50億円を超える会社の株式を取得しようとする場合で、一定の要件に該当するときに、株式取得の届出が必要になります。

株式交換と三角合併 【平成19年 第5問】(設問1)

 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 中小企業診断士である甲氏は、顧問先のX株式会社(以下、「X社」という。)の社長乙氏から、おおむね以下の内容の相談を受けた。それに続くのは甲氏と乙氏との会話である。

 なお、本問における会社はすべて日本法人の取締役会・監査役設置会社とし、以下に記載があるほかは、本件手続に支障のある事情はないものとする。また、本件手続は、簡易組織再編行為・略式組織再編行為(会社法第784 条・第796 条)に該当しないものとする。

[相談内容の概要]

 X社では、現在、販売部門の事業拡大を考えているが、X社の製品を販売する子会社であるY株式会社(X社の100%子会社。以下、「Y社」という。)だけでは人員も能力も足りない。

 そこで、販売部門が強いZ株式会社(以下、「Z社」という。)を傘下におさめたいが、単純にZ社の発行済株式全部を買い取る方法はX社の都合で難しく、また許認可の問題から事業譲渡の方法も難しいので、これら以外の方法でX社がZ社の発行済株式全部を取得してZ社をX社の傘下におさめることができる方法を知りたい。

 その場合、X社の100%子会社でX社の製品を販売する会社が2つになるので、Z社を傘下におさめると同時にZ社をY社に統合することも考えられる。

 甲氏:「そうすると、本件でZ社を傘下におさめる方法としては、株式交換による方法と、いわゆる三角合併の方法の2通りが考えられます。」

 乙氏:「株式交換というのと、三角合併というのは、何が違うのですか。」

 甲氏:「( A )」

(設問1)

 本件で想定されている株式交換の説明として最も適切なものはどれか。

ア X社が保有するX社の株式等と、Z社の発行済株式全部とを交換する方法。

イ X社が保有するY社の株式等と、Z社が保有するZ社の自己株式とを交換する方法。

ウ Y社が保有するX社の株式等と、Z社の発行済株式全部とを交換する方法。

エ Y社が保有するY社の株式等と、Z社が保有するZ社の自己株式とを交換する方法。

設問2)

 本件で想定されている三角合併の説明として最も適切なものはどれか。

ア X社が、Z社の株主に対し、X社が保有するX社の株式を交付する方式で、Z社を吸収合併する方法。

イ Y社が、Z社の株主に対し、Y社が保有するX社の株式を交付する方式で、Z社を吸収合併する方法。

ウ Z社が、X社に対し、Z社の発行済株式全部を交付する方式で、Y社を吸収合併する方法。

エ Z社が、Y社に対し、Z社の保有するX社の株式を交付する方式で、Y社を吸収合併する方法。

三角合併とは、吸収合併の際に、消滅会社の株主に対して、存続会社の親会社の株式交付することを言います。 

(設問3)

 株式交換と三角合併の違いに関する説明として、空欄Aに入る最も適切なものはどれか。

ア 株式交換の場合は、X社の株主総会決議による株式交換契約の承認が必要ですが、三角合併の場合は、X社の株主総会決議による合併契約の承認は不要です。

イ 株式交換の場合は、X社、Y社、Z社、いずれの会社の株主にも株式買取請求権が認められますが、三角合併の場合は、逆にいずれの会社の株主にも株式買取請求権が認められません。

ウ 株式交換の場合は、契約の当事者は、Y社とZ社の二社だけで足りますが、三角合併の場合は、契約の当事者は、X社、Y社及びZ社の三社でなければならないと会社法上定められています。

エ 株式交換の場合は、交換の対価は株式か現金でなければなりませんが、三角合併の場合は、合併の対価は株式、現金、社債から選択することが認められています。

 株式交換の場合、X社は契約の当事者であるため、X社の株主総会決議による株式交換契約の承認が必要となります。一方、三角合併の場合、契約の当事者はY社とZ社となるため、X社の株主総会決議による合併契約の承認は不要です。

 会社法では、吸収合併、吸収分割、株式交換において、その対価を「現金その他の財産」とすることを認めています。よって、株式交換、三角合併ともに、対価を株式、現金、社債から選択することが可能です。

組織再編 【平成24年 第4問】

 あなたの顧客であるX 株式会社(以下「X 社」という。)の代表取締役甲氏からの、X 社の組織再編に関する以下の相談内容を前提に、Y 株式会社(以下「Y 社」という。)のC 部門を独立した1つの会社とする手続きとして最も適切なものを下記の解答群から選べ。

【甲氏が持参した書面】

 X 社では、100 パーセント子会社としてA 株式会社(以下「A 社」という。)を保有している。

 一方、Y 社では、B 部門とC 部門の2つの事業を行っており、このうち、C 部門の事業は、A 社の事業と同じである。

 X 社としては、事業を拡大するため、Y 社のC 部門を譲り受けたい。

 譲り受けるにあたっては、A 社とY 社では、従業員の処遇に違いがあることから、一度に統合することは難しい可能性もある。そのため、C 部門をそのまま切り出して、直接1つの独立した会社とした後に、その株式を譲り受け、A 社と同様に、X 社の100 パーセント子会社とすることとしたい。

[解答群]

ア 吸収合併

イ 吸収分割

ウ 事業譲渡

エ 新設分割

会社分割は、会社が事業の一部または全部を、他の会社に承継させることです。会社分割には、吸収分割と新設分割という2つの種類があります。

新設分割は、分割した事業を新しく設立した会社が承継する方法です。新設分割は、事業を切り離して分社化したい時などに使われます。会社分割では、事業を承継する会社は、対価として株式等を交付します。この株式等は、事業を分割した会社に割り当てられます。

 新設分割では会社を新しく設立しますが、新設会社が発行した全ての株式は、事業を分割した会社に割り当てられます。このとき、分割会社が新設会社の株式を全て所有するため、完全親会社と完全子会社の関係が成立します。

事業譲渡と会社分割 【平成20年 第4問】(設問1)

 中小企業診断士であるあなたは、X株式会社の全株所有者である甲社長から相談を受けた。以下は、あなたと甲社長との会話の一部である。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

 甲社長:「私もだいぶ高齢になったので、そろそろ引退しようと思っているんですが、会社にはどうも適当な後継者がいないんですよ。

それで、どうしようかと思っていたら、どうもY株式会社が引き継いでくれそうな感じなんです。私が持っている100 パーセントの株式をY株式会社に譲渡しようかと思ったのですが、当社は、若干ですが、不動産の賃貸業もやっていますから、Y株式会社に引き継いでもらうとしても本業だけにして、不動産の賃貸業は残しておこうかと思うんです。

賃貸業でもちょっとした収入になりますから、私の生活の足しにもなりますし、私一人でできますから。そういったこともできますかね。」

 あなた:「事業譲渡、会社分割の方法で可能になると思いますよ。」

 甲社長:「事業譲渡というのは、わかるのですが、会社分割というのを使うとどういう形に進めるわけですか。」

 あなた:「( A )」

 甲社長:「なるほど。事業譲渡と会社分割なら、どちらの方がいいわけですか。」

 あなた:「どちらにも一長一短ありますし、Y株式会社の都合にもよりますから、何ともいえません。」

 甲社長:「じゃあ、この2つの方法で、何か違うところがあるのですか。」

 あなた:「ありますよ。例えば、( B )」

(設問1)

 会話の中の空欄Aに入る文章として最も適切なものはどれか。

ア 不動産業をX株式会社に残して、会社分割の方法によって、本業を行う子会社を作ります。それから、その子会社の株式をY株式会社に譲渡します。

イ 本業をX株式会社に残して、会社分割の方法によって、不動産業を行う子会社を作ります。その子会社設立と同時に、その子会社の株式を全部Y株式会社に割り当てます。

ウ 本業をX株式会社に残して、会社分割の方法によって、不動産業を行う子会社を作ります。それから、X株式会社の株式をY株式会社に譲渡します。

エ 本業を分割して、当然にY株式会社の一部門とすることができますから、その結果、甲社長もY株式会社の株主となることができます。

事業譲渡と会社分割 【平成20年 第4問】(設問2)

 中小企業診断士であるあなたは、X株式会社の全株所有者である甲社長から相談を受けた。以下は、あなたと甲社長との会話の一部である。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。

 甲社長:「私もだいぶ高齢になったので、そろそろ引退しようと思っているんですが、会社にはどうも適当な後継者がいないんですよ。

それで、どうしようかと思っていたら、どうもY株式会社が引き継いでくれそうな感じなんです。私が持っている100 パーセントの株式をY株式会社に譲渡しようかと思ったのですが、当社は、若干ですが、不動産の賃貸業もやっていますから、Y株式会社に引き継いでもらうとしても本業だけにして、不動産の賃貸業は残しておこうかと思うんです。

賃貸業でもちょっとした収入になりますから、私の生活の足しにもなりますし、私一人でできますから。そういったこともできますかね。」

 あなた:「事業譲渡、会社分割の方法で可能になると思いますよ。」

 甲社長:「事業譲渡というのは、わかるのですが、会社分割というのを使うとどういう形に進めるわけですか。」

 あなた:「( A )」

 甲社長:「なるほど。事業譲渡と会社分割なら、どちらの方がいいわけですか。」

 あなた:「どちらにも一長一短ありますし、Y株式会社の都合にもよりますから、何ともいえません。」

 甲社長:「じゃあ、この2つの方法で、何か違うところがあるのですか。」

 あなた:「ありますよ。例えば、( B )」

(設問2)

 会話の中の空欄Bに入る文章として最も適切なものはどれか。

ア 事業譲渡の場合は、金銭が対価でなければなりませんが、会社分割の場合は、法律上、Y株式会社の株式が対価でなければなりません。Y株式会社にとっては、会社分割の方が、資金手当てが必要でない点がメリットとなります。

イ 事業譲渡の場合は、譲渡した部分は、Y株式会社の一部として組み込まれますが、会社分割の場合は、法人格を保ったまま、会社ごと、Y株式会社の子会社になります。

ウ 事業譲渡の場合は、譲渡の対価は当然にY株式会社から甲社長に支払われますが、会社分割の場合は、譲渡の対価は当然にY株式会社からX株式会社に支払われることになります。

エ 事業譲渡の場合は、取引先も従業員も当然にY株式会社に引き継がれますが、会社分割の場合は、取引先や従業員から個別の同意が必要となります。

事業譲渡における対価は、金銭である場合が多いですが、会社法上は「財産」であればよいと規定されています。また、会社分割においても、吸収分割による場合の対価は「株式または持分に代わる金銭等」と規定されています。

 事業譲渡は、事業を対象とした当事者間の売買契約であるため、債権者や第三者に対して、事業譲渡を主張できるものではありません。よって、取引先や従業員は当然に引き継がれるわけではなく、個別の同意による移転手続が必要となります。

 また、会社分割の場合は、取引先については債権者保護手続を行うことで、個別の同意がなくても引き継がれます。従業員については、労働契約承継法に基づき、承継される事業に従事するか否かによって、承継または残留が決まります。

事業譲渡 【平成25年 第14問】

 中小企業診断士であるあなたと、顧客である SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)運営会社の社長甲氏との以下の会話を読んで、下記の設問に答えよ。

甲 氏:「今度、当社の SNS事業を、乙社に譲渡することになりました。」

あなた:「やはり、最近外資系の SNS サイトや無料通話アプリに押され気味でしたものね。」

甲 氏:「これからいろいろ面倒な手続があるみたいですけど。」

あなた:「そうですね、譲渡資産の帳簿価額が御社の総資産額の( A )であれば、株主総会の( B ) による事業譲渡契約の承認が必要ですし、従業員の雇用の引継ぎについても、( C )が適用されるのは( D )の場合ですから、事業譲渡では原則に戻って労働者から個別に乙社への移籍について同意を得る必要があります。」

甲 氏:「知的財産の権利関係はどうなりますか。当社は独自開発した SNSの機能について特許を複数取得しており、その一部は SNS の運用ソフトウェアやデザインの著作権とまとめてライセンスに出しているんですが。」

あなた:「特許については登録をしなくてもライセンシーが乙社に通常実施権を対抗できます。著作権については、登録制度はライセンシーから乙社に対して利用権を対抗するための手段ではないので、ライセンシーが利用を継続するには乙社の許諾が必要です。」

会話の中の空欄A〜Dに入る語句の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

ア A:15% 超 B:普通決議 C:労働契約法 D:会社整理

イ A:20% 超 B:特別決議 C:労働契約法 D:合併

ウ A:20% 超 B:特別決議 C:労働契約承継法 D:会社分割

エ A:30% 超 B:普通決議 C:労働契約承継法 D:支配株主の変更

譲渡資産の帳簿価格が譲渡会社の総資産の20%を超える場合は、事業のうち重要な一部を譲渡することになります。その場合は株主総会の特別決議が必要です。

事業譲渡では、譲り受けた事業に従事していた労働者を雇い入れる場合は、労働者個人の個別同意が必要です。一方で、会社分割では、労働契約承継法の定めるところに従って労働契約を承継させます。

 簡易組織再編 【平成21年 第2問】
 A株式会社(以下「A社」という。)は、100 パーセント子会社であるB株式会社に対し、A社の事業の一部を分割し、吸収させることを検討している。A社の貸借対照表及び分割を検討している資産等の状況は下記のとおりである。これを前提とした簡易吸収分割(会社法第784 条第3項)に関する説明のうち、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

A社貸借対照表 (単位:百万円)

A社が分割を検討している資産、負債の項目及び帳簿価額 (単位:百万円)

[解答群]

ア 分割対象となる資産合計額から負債合計額を控除した額は1億3,000 万円で、A社の総資産額の5分の1を下回っているが、20 分の1を超えるので、簡易吸収分割の規定が適用とならず、A社では、吸収分割契約を承認する株主総会を開催する必要がある。

イ 分割対象となる資産合計額から負債合計額を控除した額は1億3,000 万円で、A社の純資産額の5分の1を下回っているので、簡易吸収分割の規定が適用となり、A社では、吸収分割契約を承認する株主総会を開催する必要がない。

ウ 分割対象となる資産額合計は2億3,000 万円で、A社の純資産額の5分の1を下回っているが、20 分の1を超えるので、簡易吸収分割の規定は適用とならず、A社では、吸収分割契約を承認する株主総会を開催する必要がある。

エ 分割対象となる資産額合計は2億3,000 万円で、A社の総資産額の5分の1を下回っているので、簡易吸収分割の規定が適用となり、A社では、吸収分割契約を承認する株主総会を開催する必要がない。

 吸収分割において、承継会社では、分割の対価が承継会社の純資産額の5分の1を超えない場合、簡易組織再編が認められます。分割会社では、分割する資産の帳簿価額の合計額が分割会社の総資産額の5分の1を超えない場合、簡易組織再編が認められます。

 A社は分割会社であるため、総資産額の5分の1が基準となります。A社の総資産額は24億円で、その5分の1の額は4億8,000万円です。従って、分割する資産の帳簿価額の合計額が4億8,000万円を超えない場合、簡易吸収分割が認められることになります。A社が分割を検討している資産額合計を見てみると、2億3,000万円となり、4億8,000万円を下回っているため、簡易吸収分割が可能です。

簡易組織再編と略式組織再編 【平成30年 第2問】

 下表は、合併及び会社分割の各手続において、簡易手続及び略式手続の有無を整理したものである。空欄A〜Dに入る記号の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 なお、該当する手続があるものについては「○」、ないものについては「×」を記載することにしている。

〔解答群〕

ア A:○  B:×  C:×  D:○

イ A:○  B:×  C:×  D:×

ウ A:×  B:○  C:○  D:○

エ A:×  B:○  C:○  D:×

組織再編を行うには、原則として株主総会の特別決議による承認を必要とします。簡易組織再編と略式組織再編では、この特別決議を省略することができます。
 簡易組織再編は、組織再編で支払う対価に着目します。支払う対価の額が小さい場合には株主への不利益は大きくありません。そこで、このような場合には株主総会の特別決議を省略できることとしています。具体的には、支払う対価の額がそれを支払う会社の純資産額の5分の1以下であれば、対価を支払う会社での簡易組織再編が可能です。ただし、会社分割についてはさらに注意点があります。

 略式組織再編は、会社の支配関係に着目します。組織再編を行う当事者間において支配関係がある場合、支配される会社で株主総会の決議を行うことに意味はありません。なぜなら、支配している会社の意向により必ず承認されるからです。そこで、このような場合には株主総会の特別決議を省略できることとしています。具体的には、支配されている会社の総株主の議決権の10分の9以上を支配している会社が有していれば、支配されている会社での略式組織再編が可能です。

吸収合併消滅株式会社は自身を身売りして、吸収合併存続株式会社から対価を得る立場にあります。対価を支払う立場にありませんから、簡易組織再編はできません。

吸収合併消滅株式会社が吸収合併存続株式会社に支配されている関係にあれば、吸収合併消滅株式会社で株主総会の特別決議を行うことに意味はありません

新設分割株式会社はその事業の全部または一部を新設分割設立株式会社に承継させ、その対価を得る立場にあります。新設分割株式会社は対価を支払う立場にはありません。会社分割の場合は、事業の一部のみを分割することがありえます。このとき、その一部が新設分割株式会社にとって重要でなければ、株主への不利益は大きくありません。そこで、承継させる資産の額(事業の一部)がその会社の総資産額の5分の1以下であれば、新設分割株式会社でも簡易組織再編を可能としています。

新設分割株式会社が新設分割を行う場合、その会社分割を決定する時点では新設分割設立株式会社は存在していません。したがって、支配関係が生じる余地はありませんので、略式組織再編はできません。


持分会社、組合、特定非営利活動法人 【平成21年 第16問】(設問1)

 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 有限責任制の人的会社制度として、会社法に合同会社制度が創設された。また、有限責任事業組合契約に関する法律により、新たな事業体としての有限責任事業組合の設立が可能となった。

 このほか人的資産の活用としては、民間の行う社会貢献活動の健全な発展を促進する目的で特定非営利活動促進法が施行され、特定非営利活動法人を設立することが可能となっている。

(設問1)

 合同会社と有限責任事業組合は共通点も多い。次の説明のうち、最も不適切なものはどれか。

ア 合同会社、有限責任事業組合の債権者は、当該会社または組合の営業時間内は、いつでも、作成した日から5年以内の計算書類または財務諸表の閲覧または謄写の請求をすることができる。

イ 合同会社の常務に属する業務以外の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定する。有限責任事業組合も重要な財産の処分および譲受けや多額の借財という業務執行を決定するには、総組合員の過半数の同意によらなければならない。

ウ 合同会社の設立手続きは、社員になろうとする者が定款を作成し、設立の登記をする時までにその出資の全額を払い込みまたは給付を行う。有限責任事業組合では、各当事者が組合契約書を作成し、それぞれの出資に係る払込みまたは給付の全部を履行する。いずれも、設立時に公証人の定款認証を受ける必要はない。

エ 合同会社は定款、有限責任事業組合は総組合員の同意により、その出資者の損益分配の割合を出資の価額に応じたものと異なる割合に定めることができる。


合同会社、有限責任事業組合ともに、その債権者は、営業時間内であればいつでも、作成した日から5年以内の計算書類または財務諸表の閲覧または謄写の請求をすることができます。

 合同会社の常務に属する業務以外の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、社員の過半数をもって決定します。一方、有限責任事業組合の場合、業務執行には原則として総組合員の同意が必要となります。有限責任事業組合においては、重要な財産の処分および譲受けや、多額の借財という重要な業務執行については、組合契約によっても総組合員の同意を省略できません。

 合同会社の設立は、社員になろうとする者が定款を作成し、設立の登記をする時までに、その出資の全額を払い込みまたは給付を行うことで成立します。有限責任事業組合では、各当事者が組合契約書を作成し、それぞれの出資に係る払込みまたは給付の全部を履行することで、組合契約が成立します。いずれの場合も、設立時に公証人の定款認証を受ける必要はありません。

 合同会社は、定款の定めによって、その出資者の損益分配の割合を、出資の価額に応じたものと異なる割合に定めることができます。また、有限責任事業組合では、総組合員の同意により、その出資者の損益分配の割合を出資の価額に応じたものと異なる割合に定めることができます。

(設問2)

 合同会社と有限責任事業組合との相違点の説明として、最も不適切なものはどれか。

ア 合同会社は、合同会社名義で特許権の出願ができる。これに対し有限責任事業組合では、有限責任事業組合名義で特許権の出願をすることはできない。

イ 合同会社は、合名会社、合資会社、株式会社に組織変更することができる。これに対して有限責任事業組合は、このような組織変更ができず、当該有限責任事業組合を解散し、新たに会社を設立しなければならない。

ウ 合同会社は社員1名でも設立できる。これに対し有限責任事業組合は、2名以上の個人または法人の組合員が必要となる。ただし、組合員のうち過半数以上は、日本の居住者または内国法人でなければならない。

エ 合同会社は、配当額が当該利益の配当をする日における利益額を超える場合には、当該利益の配当をすることができない。有限責任事業組合の組合財産は、その分配の日における純資産額から組合員の出資総額と300 万円のいずれか小さい額を控除した額を超えて分配することができない。

有限責任事業組合は、組合員同士の契約という位置付けとなり、法人格はありません。そのため、組合名義での特許出願を行うことはできません。

 合同会社は、株式会社への組織変更や、合名会社、合資会社への種類変更が可能です。一方、有限責任事業組合は法人格が無いため、合併などの事業再編や、株式会社への移行といった組織変更ができません。

 合同会社の社員は1名でも構いません。一方、有限責任事業組合は、組合契約を締結する必要があるため、最低でも組合員が2名以上必要となります。ただし、その組合員は、「1人以上が日本の居住者または内国法人でなければならない」とされています。

 合同会社は、配当額が、配当をする日の利益額を超える場合には、当該利益の配当をすることができません。一方、有限責任事業組合の組合財産は、その分配の日における純資産額から、組合員の出資総額と300万円のいずれか小さい額を控除した額を超えて分配することができません。

持分会社、組合、特定非営利活動法人 【平成21年 第16問】(設問3)

 次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 有限責任制の人的会社制度として、会社法に合同会社制度が創設された。また、有限責任事業組合契約に関する法律により、新たな事業体としての有限責任事業組合の設立が可能となった。

 このほか人的資産の活用としては、民間の行う社会貢献活動の健全な発展を促進する目的で特定非営利活動促進法が施行され、特定非営利活動法人を設立することが可能となっている。

(設問3)

 特定非営利活動法人の説明として、最も不適切なものはどれか。

ア 特定非営利活動法人の役員として、理事3名以上および監事1名以上を置かなければならない。なお、役員のうち報酬を受ける者の数は役員総数の3分の1以下でなければならない。

イ 特定非営利活動法人は、特定非営利活動を目的としなければならないが、特定非営利活動の事業に支障のない範囲で、その他の事業を行うことができる。

ウ 特定非営利活動法人は、毎事業年度初めの3か月以内に、前事業年度の事業報告書等ならびに役員名簿等を作成し、定款等とともに、その社員その他の利害関係人が閲覧できるよう主たる事業所に備え置かなければならない。

エ 特定非営利活動法人を設立するためには、定款、役員名簿、社員7名以上の名簿、設立趣旨書などの必要書類を添付した申請書を所轄庁に提出して、設立の認証を受けなければならない。

 特定非営利活動法人の役員としては、理事3 名以上および監事1 名以上を置かなければなりません。また、役員のうち報酬を受ける者の数は、役員総数の3 分の1 以下でなければならないという制限があります。

 特定非営利活動法人を設立するためには、定款、役員名簿、社員10 名以上の名簿、設立趣旨書などの必要書類を添付した申請書を所轄庁に提出して、設立の認証を受けなければなりません。

契約とその他の法律知識

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問題 1 行為能力 【平成29年 第14問】

 行為能力に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 制限行為能力者が、自らが制限行為能力者であることを告げずに契約を締結したことのみをもって、当該制限行為能力者は当該行為を取り消すことができなくなる。

イ 被保佐人と契約をする場合には、その保佐人を代理人として締結しなければならない。

ウ 不動産業を営むことを許された未成年者が、その営業に関して不動産を売却する場合は、法定代理人の同意を得る必要はない。

エ 未成年者が債権者との間で当該未成年者の債務を免除する契約を締結するには、法定代理人の同意を得なければならない。

被保佐人が一定の行為をする場合には、その保佐人の同意を得なければなりません。被保佐人と契約をする場合には、その保佐人の同意を得た被保佐人本人との間で契約を締結するのであり、保佐人を代理人として締結する必要はありません。

一種または数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有するとされます。したがって、不動産業を営むことを許された未成年者が、その営業に関して不動産を売却する行為については、法定代理人の同意を得なくとも単独ですることができます。

単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではありません。債務を免除する契約は、単に義務を免れる法律行為に当たるため、法定代理人の同意を得なくとも単独ですることができます。選択肢エは不適切となります。

保証 【平成30年 第17問】

 保証に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。

ア 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けた場合、保証契約に基づく支払義務はなくなる。

イ 売買契約の売主の債務不履行によって生じる損害賠償義務は、当該売主のための保証債務の担保する範囲に属する。

ウ 保証契約は、口頭でしても、その効力を生じる。

エ 連帯保証人が債権者から債務の履行を請求されたときは、連帯保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。


保証契約は書面でしなければ効力を生じないとされています。

保証債務は主たる債務とは別の債務ですが、主たる債務との関係に基づく特徴がいくつかあります。

・付従性:主たる債務が存在しなければ保証債務は存在しません。主たる債務が成立して初めて保証債務が成立し、主たる債務が消滅すると保証債務も消滅します。

・随伴性:保証債務は主たる債務を保証するものですので、主たる債務の移転に伴って移転します。(債権譲渡により主たる債務の債権者が代われば、保証債務の債権者も代わります。)

・補充性:保証債務は主たる債務の不履行を前提とするものですので、保証人は債権者に対してまず主たる債務者に履行を請求すべきことを主張できます(催告の抗弁権)。また、主たる債務者に資力があり、執行が容易であることを証明すれば、保証人は債権者に対して主たる債務者に強制執行するよう主張できます(検索の抗弁権)。

 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても、保証契約に基づく支払義務はなくなりません。なお、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたときは、保証人は催告の抗弁権を主張できなくなると規定されています。

保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他の債務に従たるすべてのものを包含するものです。

保証契約も要式契約の一つであり、書面でしなければその効力を生じません。

連帯保証 【平成22年 第16問】

 X社の代表取締役甲の母親乙は、不動産等の資産を有しており、X社が自社工場建設などの事業資金を必要とした10 年前に、X社のY銀行からの11 億円の借り入れについて、乙所有の不動産に抵当権を設定して、物上保証人兼連帯保証人となった。甲はこの借り入れについて、連帯保証人となっている。X社は10 年間は返済を毎月履行してきたが、最近、業績悪化のため返済が滞りがちである。

 これらの状況を前提に、以下の選択肢ア~エのうち最も適切なものはどれか。

ア Y銀行が、月々の返済について11 年目になって初めて乙に支払うよう請求してきた場合、乙は自らの保証債務に関する消滅時効を援用して、Y銀行の請求を拒否することができる。

イ Y銀行から乙が支払わないと乙の不動産の競売をする旨の通知を受けた場合、乙は、X社の有する工場等の資産に対する執行を完了するまで、Y銀行の請求を拒絶することができる。

ウ Y銀行から請求を受けた際には、甲乙間で2分の1ずつ負担をする取り決めが甲と乙の話し合いによりなされている場合、乙はY銀行からの支払いの請求に対して2分の1の部分のみに応ずればよい。

エ Y銀行に対する支払債務を乙が履行する場合、乙が有する不動産を売却又は競売してその金員をもってY銀行に返済した上で、さらに債務の残額があるときには、この残額も支払う義務がある。

物上保証人にも「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」は認められません。

相殺 【平成30年 第19問】

 相殺に関する記述として、最も適切なものはどれか。なお、別段の意思表示はないものとする。

ア 時効によって消滅した自働債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていたとしても、相殺の意思表示をしたのが時効消滅後である場合は、相殺することはできない。

イ 相殺の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。

ウ 二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合で、受働債権が弁済期にあれば、自働債権の弁済期が到来しなくても、相殺することができる。

エ 不法行為から生じた債権を自働債権として相殺することはできない。

債権が時効消滅した後であっても消滅以前に相殺に適するようになっていたときは相殺を可能としています。

相殺の意思表示の時ではなく、相殺に適するようになった時にさかのぼるとされています。

自働債権の弁済期は借金の返済日であり、受働債権の弁済期は売掛金の支払日です。ここでAからの相殺ができるとすると、Bは借金の返済日がまだ来ていないのに、勝手に返済したことにさせられてしまいます。したがって、自働債権の弁済期前に相殺をすることはできません。


自己の損害賠償請求権を自働債権とする相殺をすることは可能です。悪意による不法行為や人の生命または身体に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を受働債権とする相殺(加害者からの相殺)はできません。


消滅時効 【平成29年 第17問】

 消滅時効に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 主債務者が時効の利益を放棄した場合でも、その保証人は時効を援用することができる。

イ 時効の完成後に債務を承認したとしても、時効完成の事実を知らなかった場合には、時効を援用することができる。

ウ 内容証明郵便による請求をすれば時効の完成が6か月猶予されることになり、当該6か月が経過する直前に再度内容証明郵便による請求をすれば、さらに時効の完成が6か月猶予される。

エ 平成29年1月15日に機械を売却し、その代金の弁済期を平成29年2月28 日とした場合、代金債権の時効は平成29年1月15日から進行する。

消滅時効とは一定の期間の経過によりある権利が消滅する制度ですが、期間が経過しても自動的にその権利が消滅することはなく、消滅させることができるという「時効の利益」を得るにとどまります。実際にある権利を消滅させて時効の効果を得るためには、「時効の援用」をする必要があります。

主債務者が時効の利益を放棄した場合でも、その保証人は時効を援用することができます。

(時効完成後の債務の承認)では信義則に反するため、たとえ時効完成の事実を知らなくても時効の援用はできないとされます。

内容証明郵便によるとしても単に請求書を送っただけというものは「請求」に当たりません(これは「催告」に当たります)。催告があったときは、その時から6か月以内に裁判上の請求等をすることが必要であり、最初の催告後6か月以内に再度の催告をしても、再度の催告には時効完成猶予の効力はありません。

代金債権を行使することができるのは平成29年2月28日(原則として取引開始時間以降)となります。したがって、消滅時効は(初日不算入の原則により)平成29年3月1日から進行することになります。

契約の不履行 【平成22年 第12問】

 ホテル業を営むA会社は、新しくホテルを建設することとし、B設計建築会社

(以下「B会社」という。)との間で工事請負契約を締結した。予定どおり竣工し、A会社は、当該契約に基づいてこのホテルの引渡を受け営業を開始した。

 しかし、このホテルは、B会社から構造設計の委託を受けた一級建築士Cが、建築基準法令で定められた耐震強度を満たしたかのように偽装したものであった。

なお、このホテルの建築に関し、D会社による確認審査、E会社による構造計算適合性判定においては、それぞれ建築基準関係規定に適合しているとされていた。

 その後、同地域を襲った地震により、このホテルの耐震強度偽装が発覚した。その結果、行政当局の指導を受け、このホテルを休業および補修し、A会社は多額の損害を被った。

 これらの状況を前提に、以下の選択肢ア~エのうち最も適切なものはどれか。

 ア A会社は、B会社に請求する損害賠償とは関係なく、建築士Cに対してもB会社を債権者代位して契約上の義務に違反するとして損害賠償請求をすることができる。

 イ A会社は、偽装を見抜けなかったD会社・E会社に対しても、自己に生じた損害について無過失責任を追及することができる。

 ウ A会社は、不完全履行があるとして、B会社に対して、補修に要した相当額の不当利得返還請求をすることができる。

 エ A会社は、補修および休業したことにより生じた損害について、B会社に過失があるときは、B会社に対し、債務不履行責任に基づく損害賠償請求をすることができる。

「B会社に請求する損害賠償とは関係なく」損害賠償を請求できるわけではないです。

不法行為が成立するにはいくつかの要件があります。無過失責任を追及することはできないです。

債務不履行とは、債務者が契約の本旨に従った債務の履行をしないことです。債務不履行には、「履行遅滞」、「履行不能」、「不完全履行」の3つのケースがあります。ただし、債権者が損害賠償請求をするには、債務者に故意または過失があることを要します。

契約の解除【平成26年 第14問】

 契約の解除に関する記述として最も適切なものはどれか。

ア AからBが買い受けた土地をBからCが買い受けたところ、AがBの債務不履行を理由にAB間の売買契約を解除した場合、Aが背信的悪意者のような場合でない限り、Cは、登記を得なければAに対して自らの所有権を主張できない。

イ 自宅の工事を発注した施主が発注後に死亡した場合、施主の共同相続人は、請負契約で定められた工期を遅延したまま督促しても工事完了の見込みが立たない請負業者に対して、特約がない限り、法定相続分に応じて個別に解除権を行使できる。

ウ 商人間の売買でなくても、債務者に履行の意思がないことが明らかであれば、履行遅滞を理由とする債務不履行解除には催告を必要としない。

エ 特定物の売買契約における売主のための保証人は、反対の特約がない限り、契約解除による売買代金の返還義務についての保証の責任を負わない。

民法は、解除による原状回復義務は第三者の権利を害することはできないと規定しています。そして判例は、この第三者が保護されるためには登記を備えることを要するとしています。


債務者に履行の意思がないことが明らかである場合でも、履行の催告をした後でなければ、契約の解除はできません。


売買契約において、売主の保証人は契約解除による売買代金の返還義務についても保証の責任を負うことになります。

消費貸借契約 【平成26年 第12問】

 消費貸借契約に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

ア 現金を渡した相手方から借用証を受け取っても、返済期日の約束がなければ、消費貸借契約の効力が生ずることはない。

イ 準消費貸借契約のメリットとして、債務の弁済期を遅らせたり、売掛金の消滅時効期間を貸付金のそれに切り替えたり、金利改定ができる場合があることが挙げられる。

ウ 消費貸借契約公正証書を作成しても、執行認諾文言がなければ、その公正証書を債務名義として強制執行をすることができない。

エ 利息制限法上、貸付金50万円の約定利息の上限は年額9万円である。

消費貸借契約は、書面による場合には合意のみで効力が生じますが、書面によらない場合には実際に金銭その他の物を受け取ることではじめて効力が生じます。返済期日を定めない金銭消費貸借の契約では、貸主が請求を行ってから相当期間を経過すると借主は履行遅滞となります。つまり、請求を受けた場合に、相当期間の経過前に返済をする必要があるわけです。このように、返済期日の約束がなくても、消費貸借契約の効力は生じます。

 準消費貸借契約とは、売買契約といった消費貸借によらない契約を消費貸借契約に置き換えるものです。たとえば、商品を購入してまだ代金を支払っていない場合、その代金の未払いを売主からの借金に置き換えることが該当します。それによって、複数の債権を一本化して新たな消費貸借契約として整理する、元の売掛金の弁済期と異なる弁済期を設定する、売掛金の消滅時効を貸付金のそれに切り替えて延長する、金利に関する約定を変更するといったメリットがあります。

強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておけば、債務者が債務の履行をしない時に、裁判の手続を経ることなく差し押さえなどの強制執行を行うことができます。

利息制限法では、金銭消費貸借において債務者を保護するために、一定の利率を設けてこれを超過する利息や損害金の約定を禁止しています。上限利率は元金に応じて設定されており、10万円未満では年20%、10万円以上100万円未満では年18%、100万円以上では年15%とされています。

準委任と請負 【平成28年 第16問】

 以下の文章は、経済産業省が公表している情報システムの企画・開発におけるモデル契約の解説を要約して抜粋したものである。文中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 ユーザ委託者がベンダ受託者に情報システムの構築を委託する場合、フェーズごとに、契約類型として準委任と請負のどちらとするかを選択しなければならない。

 (A)ではベンダは仕事受託業務の完成の義務を負うのに対し、(B)ではベンダは仕事の完成についての義務は負わない。そうすると、受託業務に着手する前の段階でベンダにとって成果物の内容が具体的に特定できる内部設計やソフトウェア設計などのフェーズは、(A)で行うことが可能である。これに対し、システム化計画や要件定義のフェーズは、ユーザ自身にとっても業務要件が具体的に確定しておらず、ベンダにとっても成果物の内容を具体的に想定することは通常不可能であるから、(A)にはなじみにくく、(B)が適切ということになる。

 (A)では、ユーザに引き渡された成果物に瑕疵があった場合、ベンダは無過失責任としての(C)責任を負い、ユーザは修補や損害賠償を請求することができ、瑕疵により契約の目的を達成できないときは契約を解除できる。これに対して、(B)の場合、(C)責任を負うことはないが、事務処理に関して善管注意義務違反があった場合には、(D)責任を負うこととなる。

 実際の契約において、準委任型とするか、請負型とするかは、成果物の特定についての当事者同士の経験や役割分担の遂行能力等に基づき、成果物についての共通理解が事前に十分に成立しているかによるが、(B)型としなかった場合、ユーザ自身のシステム化計画や要件定義におけるステークホルダとの調整を行う責任等が曖昧になり、要件定義上の見落としも生じやすいとの指摘が多い。

[解答群]

ア A:請負 B:準委任 C:瑕疵担保 D:債務不履行

イ A:請負 B:準委任 C:債務不履行 D:瑕疵担保

ウ A:準委任 B:請負 C:瑕疵担保 D:債務不履行

エ A:準委任 B:請負 C:債務不履行 D:瑕疵担保


準委任契約とは、法律行為ではなく、事務の遂行などの事実行為を委任する契約のことをいいます。

独占禁止法 【平成23年 第13問】

 次の文章は、ゲームソフトの開発・制作等の事業を営んでいる株式会社甲の代表取締役社長(以下「甲社社長」という。)と、中小企業診断士であるあなたとの会話である。この会話の空欄A~Eに入る用語の組み合わせとして最も適切なものを下記の解答群から選べ(※法令名は略称による。)。

 甲社社長:「ちょっと、困ったことが起こって。」

 あなた:「どうされたのですか?」

 甲社社長:「うちの会社(甲社)は、携帯電話向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)用のゲームソフトを開発して、大学生や社会人向けのソフトをX社に、中高生向けのソフトをY社にそれぞれ供給しているんだけど、今回、X社との間のゲームソフト制作・開発委託契約を更新する話合いの中で、同業他社に同種のゲームソフトを提供しないことを当社に義務付ける内容の条項を追加するようにX社から要求されているんだ。しかもリーガルチェックの段階で、うち(甲社)がX社の担当者に対してこの新条項に難色を示したら、『この条項の追加を受け入れてもらえなければ、御社(甲社)のゲームソフトを当社(X社)のSNS の会員向けゲームカテゴリーから外すことも考えなければならない。』と言われたんだよ。カテゴリーから外されると、うち(甲社)のゲームは新規会員の獲得ができず、ダウンロード済みの顧客からの課金収入しかなくなってしまうので、死活問題になっちゃうよ。」

 あなた:「ちょっと待ってください、社長。X社は携帯電話向けSNS 用のオンラインゲームでは、3割以上のシェアを握っていて業界トップでしょう。そういう会社が社長の言われるような行為をしているとなると、( A )に該当する疑いがあり、( B )で禁止されている( C )の問題となる可能性があります。そんな新条項の追加要求に応じる必要はないと思いますよ。」

 甲社社長:「確かにそうなんだけど、うちのようなベンチャー企業は、どうしても大手のオンラインゲーム会社の要求をのまざるを得ないんだよなあ。何しろ、Y社が主催しているゲームフェアに参加させてもらったときは、ほとんどうち(甲社)のゲームが来場者の目に触れるようなブースもなかったのに、協賛金を負担するように要請されて支払ったこともあったんだ。」

 あなた:「社長、どこまでお人好しなんですか。そんな御社(甲社)の売上にとって直接的なメリットのない協賛金を負担させるとなると、Y社の行為は( D )に該当する可能性が高いですから、やっぱり( C )の問題となりますよ。そういう大手のむちゃな要求ばかりのんで、当面の受注は取れても、長い目で見れば御社(甲社)のためになりませんよ。」

 甲社社長:「うーん、そうなるとやっぱりどこかに相談しないと。どこか役所でこういう問題を相談できるところはないの?」

 あなた:「( B )では( C )に該当する行為の排除措置を命ずる権限が( E )に与えられていますし、( B )に違反する事実があれば、だれでもその事実を( E )に報告して適当な措置をとるように求めることができますから、そこに相談するのが筋だと思います。」

[解答群]

ア A:拘束条件付取引  B:独占禁止法 C:不当な取引制限

D:共同の取引拒絶 E:中小企業庁

イ A:再販売価格の拘束 B:下請法  C:不公正な取引方法

D:差別対価  E:公正取引委員会

ウ A:抱合せ販売等   B:特定商取引法 C:不当な取引制限

D:優越的地位の濫用 E:消費者庁

エ A:排他条件付取引  B:独占禁止法  C:不公正な取引方法

D:優越的地位の濫用 E:公正取引委員会

不当な取引制限には、入札談合やカルテルがあります。入札談合は、公共工事などの入札において、事前に事業者が共同して受注事業者や受注金額を決めてしまうことです。カルテルは、本来なら自由競争で決められるべき価格や生産数量を、複数の事業者が共同することで取り決めてしまうことです。

 不公正な取引方法というのは、公正な競争を阻害するおそれがあるもので、法律や公正取引委員会が指定した取引方法です。例えば、取引拒絶、不当廉売、抱き合わせ販売などの行為が指定されています。

排他条件付取引とは、不当に、取引の相手方が競争者と取引をしないことを条件として、その相手方と取引をすることを言います。

消費者保護法制 【平成22年 第14問】

 株式会社Aは、一般消費者である女性をターゲットに各家庭を訪問して、あるいはインターネットにおける自社のショッピングサイト上で、高額化粧品をディスカウントして販売する業者である。この株式会社Aによる商品の販売に関する説明として最も適切なものはどれか。

ア 株式会社Aがインターネットのショッピングサイト上で掲載している売買契約上、当該化粧品から生ずるいかなる肌のトラブルについても責任を負わない旨の規定がある場合には、当然に、当該契約全体が無効となる。

イ 株式会社Aによる商品のインターネット販売にはクーリング・オフ規定の適用はないが、この商品のショッピングサイト上に返品の可否および条件を記載していない場合、インターネットを通じてこの商品を購入した女性の都合により契約を解除されることがある。

ウ 株式会社Aの担当者が訪問販売において、「重大な過失がある場合でも株式会社Aの損害賠償額は10 万円を限度とさせていただきます。」とする旨を女性に手渡しした売買契約書において規定し、女性がこれについて説明を受け、納得した上で署名押印した場合は、かかる規定は有効である。

エ 株式会社Aの担当者が訪問販売において、女性から「商品が必要ないので、帰ってください。」と言われたにもかかわらず、居座って話を続けて説得した上で販売した商品は、この女性が契約書面を受領した日から起算して8日間が経過すると、女性から売買契約を取り消すことができない。

「当該化粧品から生ずるいかなる肌のトラブルについても責任を負わない旨の規定」は無効となります。無効となるのは条項のみで、契約全体が無効となるわけではないです。

 インターネット販売は、通信販売に該当します。特定商取引法上、通信販売についてはクーリング・オフの規定はありません。しかし、消費者保護のため、事業者が返品の可否および条件を記載していない場合に限り、商品の引渡日から8日を経過する日までの期間に、購入者は契約の申し込みの撤回または解除ができるとされています。

消費者契約法では、事業者の故意または重大な過失による債務不履行や、不法行為によって消費者に生じた損害について、それを賠償する責任の一部を免除する条項は無効であるとしています。これは、消費者が説明を受け、納得した上で署名押印した場合であっても、同様に無効となります。

 消費者契約法では、消費者が事業者に退去を求めたにもかかわらず、その場所から退去しないことで消費者が困惑した場合、それによってされた契約の申込みや承諾を取り消すことができると規定しています。従って、株式会社Aの担当者が、女性から退去を求められたにもかかわらず、居座って話を続けて説得した上で販売した商品については、女性から契約を取り消すことができます。

倒産処理 【平成22年 第3問】

 破産手続、民事再生手続及び会社更生手続について述べた次の文章について、下線部①~④の説明のうち最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 破産手続、民事再生手続及び会社更生手続の違いとしては、第一に、手続が目指す結果の違いが挙げられる。即ち、①破産手続は、清算型と呼ばれ、法人・自然人を問わず破産者が破産手続開始決定時に保有する全ての資産を金銭に換価して配当に充てることになるが、民事再生手続、会社更生手続は、再建型と呼ばれ、それぞれの手続に従って、債務者の再建を図りながら弁済を行うこととなる。

 第二に、対象となる人の違いが挙げられる。②破産手続、民事再生手続は、法人・自然人を問わず全ての人に適用されるが、会社更生手続は、会社法上に規定がある会社のみに適用され、それ以外の法人・自然人には適用されない。

 第三に、手続の主体の違いが挙げられる。③破産手続、会社更生手続では、管財人が選任され、管財人が資産の管理処分等を行うが、民事再生手続では、管財人という制度が法律上存在しないため、債務者自身が主体となって手続を遂行することとなっている。

 第四に、抵当権等の担保権に関する基本的な取り扱いの違いが挙げられる。④破産手続、民事再生手続は、担保権は別除権となり、担保権者は手続外で担保権を実行することが可能であるが、会社更生手続においては、担保権は更生担保権となり、手続外での実行は禁止される。

[解答群]

ア 下線部①

イ 下線部②

ウ 下線部③

エ 下線部④

破産者が、破産手続き開始の時に保有する99 万円以下の金銭や、差押を禁止された財産は、破産財団に属さないものとされます。よって、全ての資産を金銭に換えて配当に充てるわけではないのです。

会社更生手続は、株式会社を再建する手続であり、持分会社には適用されません。よって、会社法上に規定がある会社すべてに適用されるわけではないのです。

民事再生手続では、債務者が再生計画案を作成し、再生手続を遂行します。ただし、経営者の能力、資質に問題があるといった理由で、裁判所によって必要があると認められた場合は、管理命令が発せられ、再生管財人を選任することができます。よって、管財人という制度が法律上存在しないわけではないのです。

  破産手続、民事再生手続では、質権や抵当権などの担保権は別除権となり、担保権者は手続外で担保権を実行することで、その売却代金から優先弁済を受けることができます。一方、会社更生手続においては、担保権は更生担保権となり、手続外での実行は禁止されます。

遺留分に関する民法の特例 【平成27年 第5問】

 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律に定められた遺留分に関する民法の特例に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 ア 後継者が旧代表者から贈与により取得した財産のうち、一部を除外合意の対象とし、残りの一部を固定合意の対象とすることができる。

 イ 除外合意や固定合意の効力を生じさせるためには、経済産業大臣の許可を受ける必要がある。

 ウ 除外合意や固定合意の効力を生じさせるためには、後継者以外の旧代表者の推定相続人も家庭裁判所の許可を受ける必要がある。

 エ 除外合意や固定合意の対象となる株式を除いた後継者が所有する株式に係る議決権の数が総株主の議決権の50%を超える場合であっても、除外合意や固定合意をすることができる。

 後継者に生前贈与した株式を、遺留分の対象外にできます。これを除外合意と言います。

 遺留分は通常は相続時の評価額で算定しますが、この制度では後継者に生前贈与した株式の評価額をあらかじめ固定できます。これを固定合意と言います。

除外合意と固定合意は併用が可能です。つまり、ある株式については除外合意を採用して、他の株式については固定合意を採用することが可能です。

遺留分に関する民法の特例を受けるには、経済産業大臣の確認および家庭裁判所の許可を得る必要があります。経済産業大臣の「確認」が必要ですが、「許可」は必要ではありません。

遺留分に関する民法の特例を受けるには、事業を承継する後継者が家庭裁判所の許可申立てをする必要があります。後継者以外の推定相続人については、書面で合意する必要がありますが、家庭裁判所に申立てをして許可を得る必要はありません。

後継者が所有する株式のうち、除外合意や固定合意の対象となる株式を除いたものに係る議決権の数が、総株主の議決権の100分の50を超える数となる場合は、遺留分に関する民法の特例を受けられないとされています。これは、除外合意や固定合意の対象となる株式を除いても、後継者が議決権の過半数を確保できる場合は、会社の運営に支障がなく特例を認める必要がないとされているためです。

相続 【平成26年 第1問】

 X株式会社(以下「X社」という。)の発行済株式総数は、30万株であり、そのすべてをAが保有していた。その後、Aは死亡し、B・C・D・E の4名のみが相続人としてAの財産を相続した。Bは、Aの配偶者である。C及びDは、AとBとの間で出生した子である。Eは、AとAと婚姻関係を有したことがないFとの間で出生した子であり、AはEを認知している(下図参照)。

 この場合、X社の株式の権利関係に関する記述として最も適切なものはどれか。

 なお、遺言はなく、遺産分割協議も整っておらず、相続人はいずれも廃除されていないものとし、寄与分及び特別受益についても考慮しないものとする。

ア B、C、D及びEが30万株を共有し、Bの共有持分が2分の1、C、D 及びEの3名の共有持分がそれぞれ6分の1となる。

イ B、C、D 及びEが30万株を共有し、Bの共有持分が2分の1、C及びDの2名の共有持分がそれぞれ5分の1、Eの共有持分が10分の1となる。

ウ Bが15万株を、C、D及びEがそれぞれ5万株を保有する株主となる。

エ Bが15万株を、C及びDがそれぞれ6万株を、Eが3万株を保有する株主となる。

「遺産分割協議も整っておらず」という部分で相続人による遺産分割協議が整うまでの間は、株式はその全部が相続人による「準共有(所有権以外の財産権を共有することです)」となります。

非嫡出子は嫡出子と同等の法定相続分を持っています。

英文契約 【平成25年 第13問】(設問1)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

外国からの医療機器の輸入に関して、輸入業者側が手配した輸送手段に輸出業者が製品を積載することによって製品を受領する旨の合意が成立し、次の英文契約書の条項が定められた。

PURCHASE AGREEMENT FOR MEDICAL DEVICE PRODUCT

Article XX

x. Delivery of the Products shall be made at San Francisco Port,California, on or

before the 31st of August, 2013, on A San Francisco bases.

xx. The trade term “ A ” shall be interpreted in accordance with B .

(設問1)

契約書の空欄Aには、「本船渡し」の貿易条件を意味する貿易用語が入る。この用語として最も適切なものはどれか。

ア CIF (cost, insurance, freight)

イ DDP (delivered duty paid)

ウ EXW (ex works)

エ FOB (free on board)

「CIF」は、「運賃保険料込み」という貿易条件です。売主は、貨物を荷揚げ地の港で荷揚げするまでの運賃、海上保険料等を負担し、荷揚げ以降の費用は買主の負担となります。

「DDP」は、「仕向地持込渡し(関税込み)」という貿易条件です。目的地までの輸送費、リスクおよび輸入関税まで全て売主が負担します。

「EXW」は、「工場渡し」という貿易条件です。売主の工場で貨物を引き渡した以降の費用がすべて買主の負担となります。

「FOB」は、「本船渡し」という貿易条件です。商品が本船に船積みされた時に、引渡し義務が終了します。つまり、船舶の手配、保険料等は買主の義務になります。

英文契約 【平成25年 第13問】(設問2)

次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

外国からの医療機器の輸入に関して、輸入業者側が手配した輸送手段に輸出業者が製品を積載することによって製品を受領する旨の合意が成立し、次の英文契約書の条項が定められた。

PURCHASE AGREEMENT FOR MEDICAL DEVICE PRODUCT

Article XX

x. Delivery of the Products shall be made at San Francisco Port,California, on or

before the 31st of August, 2013, on A San Francisco bases.

xx. The trade term “ A ” shall be interpreted in accordance with B .

(設問2)

契約書の空欄Bには、国際商業会議所が制定した、貿易取引慣習として普遍的に使用されている貿易取引条件の解釈に関する国際規則の略称が入る。この略称として最も適切なものはどれか。

ア CISG イ INCOTERMS 2010 ウ U.C.C.2009-2010 ed. エ UPICC

「CISG」とは、国際物品売買契約に関する国際連合条約のことです。国境を越えて行われる物品の売買に関する条約で、通称「ウィーン売買条約」と言います。

「INCOTERMS」とは、国際商業会議所 (ICC) が策定した国際貿易の統一規則のことです。「INCOTERMS」では、貿易取引を円滑に行うために、運賃、保険料等の条件に関して、統一的な定義を取り決めています。「FOB」や「CIF」などもこの「INCOTERMS」で取り決められています。

「U.C.C.2009-2010」のうち「U.C.C」は、アメリカ内の各州の商法などを統一する目的で策定された「米国統一商法典」のことです。

「UPICC」は、私法統一国際協会(UNIDROIT)が策定した「ユニドロワ国際商事契約原則」のことです。

国際条約 【平成27年 第6問】

 以下の記述は、ある条約に関するものである。この内容を定める条約として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 1883年に成立したこの条約が適用される国は、工業所有権の保護のための同盟を形成する。各同盟国の国民は、工業所有権の保護に関し、この条約で特に定める権利を害されることなく、他のすべての同盟国において、当該他の同盟国の法令が内国民に対し現在与えており又は将来与えることがある利益を享受する。すなわち、同盟国の国民は、内国民に課される条件及び手続に従う限り、内国民と同一の保護を受け、かつ、自己の権利の侵害に対し内国民と同一の法律上の救済を与えられる。

[解答群]

 ア シンガポール条約

 イ 特許協力条約

 ウ パリ条約

 エ マドリッド協定


シンガポール条約は、2006年に各国で異なる商標出願の国際的な統一化や簡素化を図るために作成された条約です。

特許協力条約は、国際的な特許出願を容易にするために、1970年にワシントンで作成された条約です。1つの出願願書を提出することによって、加盟国すべてに同時に出願したのと同じ効果が与えられます。しかし、各国での特許権付与は、それぞれの国の担当官庁の審査に委ねられています。

パリ条約は、特許、実用新案、意匠、商標などの保護を目的として、1883年に成立しました。パリ条約の加盟国は、工業所有権の保護に関して内国民に与えている利益を他の加盟国の国民にも与えなければならないとしています。また、優先権制度が定められており、ある加盟国にて出願をした者が、別の加盟国に同一の出願をした場合、最初の国での出願の時を基準として新規性などの判断が行われます。

マドリッド協定は、商標の国際的な登録制度として、パリ条約を補完するために1891年に定められました。しかし、手続き上の制約が厳しいなどの理由により、日本、米国、英国などは加盟しませんでした。なお、より多くの国が参加できる商標の国際登録制度の確立を目的に1989年にマドリッド協定議定書(マドリッド・プロトコル)が採択されています。

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