一ヶ月前にテストした問題なのに初見状態なのは気持ち的にキツイですが、繰り返し間隔を短くして定着化させていきます。
本日2次試験だった方々お疲れさまでした!来年は私も受験して合格出来るようにしていきます!
次の資料に基づき、労働生産性の数値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
<資料>
【解答群】
ア 25,000,000 イ 30,000,000 ウ 35,000,000 エ 40,000,000
まず資料より、労働装備率は20,000,000円であることが分かります。設備生産性は次のように求めます。
よって労働生産性は、次の式で求めることができます。
労働生産性 = 労働装備率 × 設備生産性
= 20,000,000 × 1.75
= 35,000,000
経営分析の種類と指標に関する説明として、適切なものはどれか。
ア 変動費は営業量に比例して減少する費用であり、固定費は、営業量の増減に関係なく固定的に発生する費用である。
イ 「勘定科目法」とは、固定費と変動費を分解する手法のひとつであり、経理上の勘定科目別に固定費と変動費の分類を行う手法のことである。
ウ 「高低点法」とは、過去の実績データから、数学的な方法で固定費と変動費率を求める方法である。
エ 損益分岐点とは、販売量がちょうど0になるときの利益のことをさす。
「高低点法」は、過去の実績データのうち、最も高い売上と、最も低い売上のデータをとりだし、その2つの間の費用の変化から、変動費と固定費を算出する方法です。本肢の記述は、「最小自乗法」の内容であり間違いです。
次の文章は、企業の収益力の余裕をはかる尺度について述べたものである。前事業年度の営業利益等の実績に関する次の資料に基づいて、空欄A、空欄Bに入る数値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
<資料>
①前事業年度の売上高は120,000(万円)である。
②原価のうち変動費は72,000(万円)、固定費は30,000(万円)であった。
前事業年度の損益分岐点売上高は(AA )万円である。このとき、企業の収益力の余裕をはかる尺度として用いられる安全余裕率、すなわち売上高が損益分岐点売上高を上回る額の売上高に対する比率は( B )%である
ア A:50,000 B:58.3
イ A:50,000 B:37.5
ウ A:75,000 B:58.3
エ A:75,000 B:37.5
安全余裕率
安全余裕率 = (実際売上高 - 損益分岐点売上高) ÷ 実際売上高
= 「1 - 損益分岐点比率」
損益分岐点売上高は、次の公式により求めることができます。
安全余裕率は次の公式で求めることができます。
安全余裕率 = (実際売上高 - 損益分岐点売上高) ÷ 実際売上高 ×100
= (120,000 - 75,000)÷ 120,000 × 100
= 37.5(%)
当期の損益計算書(要旨)は次のとおりである。変動費、固定費の構造は一定とし、売上原価はすべて変動費とすると、経常利益の目標55,000千円を達成する売上高として、最も適切なものを下記の解答群から選べ(単位:千円)。
【解答群】
ア 255,000千円 イ 350,000千円 ウ 400,000千円 エ 450,000千円
まず固定費と変動費を分類し変動費率を求めます。固定費は次の計算で求めることができます。販売費及び一般管理費のうち、固定費は20,000千円であり、営業外収益(20,000千円)と営業外費用(50,000千円)は一定であるため、固定費として考えます。
固定費 = 営業外費用 - 営業外収益 + 販売費及び一般管理費のうち固定費
= 50,000 - 20,000 + 20,000
= 50,000(千円)
変動費は次の計算で求めることができます。
変動費 = 売上原価 + 販売費及び一般管理費のうち変動費
= 120,000 + 40,000- 20,000
= 140,000(千円)
変動費率は次の計算で求めることができます。
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
= 140,000 ÷ 200,000
= 0.7
よって、目標売上高は次の公式により求めることができます。
次の文章は、セグメント別損益分析について述べたものである。空欄A、空欄Bに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
売上高から変動売上原価を引いたものが、Aである。このAから変動販売費を引いたものが、Bである。Bから、個別固定費を引いたものが、Cである。
ア A:変動製造マージン B:限界利益 C:貢献利益
イ A:変動製造マージン B:貢献利益 C:限界利益
ウ A:製造間接費 B:限界利益 C:営業利益
エ A:製造間接費 B:貢献利益 C:営業利益
A:変動製造マージン
変動売上原価は、売上原価のうち変動費を集計したものです。売上高から変動売上原価を引いたものが、変動製造マージンです。
B:限界利益
変動販売費と変動売上原価を合計すると変動費の総額となります。売上から変動費を引いた限界利益ですので、変動製造マージンから変動販売費を引いたものは、限界利益です。
C:貢献利益
固定費は、個別固定費と共通固定費に分けられます。個別固定費とは、そのセグメント個別の固定費です。例えば、事業部別の損益分析の場合は、その事業部に関する人件費などが個別固定費となります。共通固定費は、セグメントに共通に発生する固定費です。例えば、事業部別の損益分析の場合は、本社スタッフ部門の人件費などが共通固定費になります。共通固定費は、何らかの基準でセグメントに配賦する場合もあります。しかし配賦した金額は、実際のセグメントで発生した費用ではありませんので、個別固定費と、共通固定費は区別して扱います。限界利益から、個別固定費を引いた後の利益は、貢献利益と呼ばれます。なお、貢献利益から共通固定費を引くと営業利益となります。
次の資料は、投資プロジェクトAに関するものである。この資料に基づいた場合、投資プロジェクトAの現在価値の値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.現在、投資プロジェクトAを実行することによって、2年後にキャッシュ・フローが得られる。
2.キャッシュ・フローが得られるのは、2年後だけである。
3.2年後に得られるキャッシュ・フローは、121万円である。
4.割引率は10%である。
【解答群】
ア 80万円 イ 90万円 ウ 96万円 エ 100万円 オ 110万円
将来の資金をC、割引率をr、年数をnとすると、現在価値PVは、次のように計算されます。
これに、C = 121万円、r = 0.1を代入すると、次のようになります。
したがって、投資プロジェクトAの現在価値は、100万円となります。
次の資料は、投資プロジェクトBに関するものである。この資料に基づいた場合、投資プロジェクトBの現在価値の値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.現在、投資プロジェクトBを実行することによって、4年間にわたりキャッシュ・フローが得られる。
2.得られるキャッシュ・フローは、1年後ごとである。
3.毎年得られるキャッシュ・フローは、300万円である。
4.割引率は10%である。
5.現価係数は、次のとおりである。
【解答群】
ア 522万円 イ 747万円 ウ 951万円 エ 1,137万円 オ 1,200万円
1 年度から 4 年度の各年のキャッシュ・フローは同額の 300 万円ですから、割引率 10 %・4 年の年金現価係数である 3.17 を掛ければ現在価値に換算することができます。
したがって、投資プロジェクトBの現在価値PVは、次のようになります。
PV = 300 × 3.17
= 951万円
したがって、投資プロジェクトBの現在価値は、951万円となります。よって、ウが適切です。
1 年度から4 年度までのキャッシュ・フローの現在価値PVは、次のように複利現価係数を用いて各年の 300 万円を現在価値に換算し、それを合計するという手順を踏んでも 951 万円と求めることができます。
PV = (300 × 0.91) + (300 × 0.83) + (300 × 0.75) + (300 × 0.68)
= 300 × (0.91 + 0.83 + 0.75 + 0.68)
= 300 × 3.17
= 951万円
このように、各年のキャッシュ・フローが一定であるなら、上記のような方法で算出しなくても、300 万円に「複利現価係数を合計した数値」=「年金現価係数」= 3.17 を掛ければ、すぐに現在価値 951万円を求めることができます。
次の資料は、当期の営業利益等に関するものである。この資料に基づいた当期のフリーキャッシュフローの値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.当期の営業利益は、2,000万円である。
2.実効税率は40%である。
3.当期の減価償却費は、400万円である。
4.当期において、運転資本の増減はない。
5.当期の投資額は、1,000万円である。
【解答群】
ア 200万円 イ 300万円 ウ 400万円 エ 500万円 オ 600万円
営業利益が与えられているので、営業利益を基にした計算を行うと、フリーキャッシュフローFCFは、次のようになります。
FCF = 営業利益 × (1 - 実効税率) + 減価償却費 - 運転資本増加額 - 投資額
= 2,000 × (1 - 0.4) + 400 - 0 - 1,000
= 2,000 × 0.6 + 400 - 1,000
= 1,200 + 400 - 1,000
= 600万円
したがって、当期のフリーキャッシュフローは、600万円となります。よって、オが適切です。
投資の評価方法に関する説明として、最も適切なものはどれか。
ア 正味現在価値法は、貨幣の時間的価値を考慮する方法であり、正味現在価値がプラスであり、かつ大きいほど、投資案の投資効率がよいと判断される。
イ 内部収益率法は、貨幣の時間的価値を考慮しない方法であり、割引率が高いほど、投資案の投資効率がよいと判断される。
ウ 回収期間法は、貨幣の時間的価値を考慮する方法であり、回収期間の短い案ほど、投資案の安全性が高いと判断される。
エ 会計的投資利益率法は、貨幣の時間的価値を考慮しない方法であり、会計的投資利益率が低いほど、投資案の収益性が高いと判断される。
正味現在価値法(NPV法)とは、投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引き、そこから投資額を控除した正味現在価値を求めて投資案を評価する方法のことをいいます。投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引いているので、正味現在価値法は貨幣の時間的価値を考慮する方法です。正味現在価値がプラスであり、かつ大きいほど、投資案の投資効率がよいと判断されます。よって、記述は適切です。
内部収益率法(IRR法)とは、投資額と投資によって将来得られるキャッシュ・フローの現在価値が一致する割引率を求めて投資案を評価する方法のことをいいます。投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引いているので、内部収益率法は貨幣の時間的価値を考慮する方法です。貨幣の時間的価値を考慮していない方法ではありません。なお、割引率が高いほど、投資案の投資効率がよいと判断されるという記述は適切です。
回収期間法とは、投資額の回収にどれくらいの期間がかかるかを求めて投資案を評価する方法のことをいいます。投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引いていないので、回収期間法は貨幣の時間的価値を考慮しない方法です。貨幣の時間的価値を考慮する方法ではありません。なお、回収期間の短い案ほど、投資案の安全性が高いと判断されるという記述は適切です。
会計的投資利益率法とは、投資額に対する会計的な利益の割合を求めて投資案を評価する方法のことをいいます。投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引いていないので、会計的投資利益率法は貨幣の時間的価値を考慮しない方法です。ここまでの記述は適切です。しかし、会計的投資利益率法では、会計的投資利益率が高いほど、投資案の収益性が高いと判断されます。会計的投資利益率が低いほど、投資案の収益性が高いのではありません。
次の資料は投資プロジェクトCに関するものである。この資料に基づいた場合、正味現在価値法により投資プロジェクトCの正味現在価値を求める場合の計算式として、最も不適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.現在、投資プロジェクトCを実行することによって、初期投資額が5,500万円かかる。
2.現在、投資プロジェクトCを実行することによって、5年間にわたりキャッシュインフローが得られることが予測されている。
3.5年間に得られるキャッシュ・フローは、次のとおりである。
4.割引率は10%である。
5.現価係数は、次のとおりである。
【解答群】
ア 1,000 × 3.169 + 3,000 × 0.621 - 5,500
イ 1,000 × 3.169 + 3,000 × 0.621
ウ 1,000 × 3.790 + (3,000 - 1,000) × 0.621 - 5,500
エ 1,000 × 0.909 + 1,000 × 0.826 + 1,000 × 0.751 + 1,000 × 0.683 + 3,000 × 0.621 - 5,500
正味現在価値は、現在価値から投資額を控除したものです。「1,000 × 3.169 + 3,000 × 0.621」は現在価値であって、正味現在価値ではありません。
次の資料は、新規設備に対する投資に関して、ある企業のある年度の損益等を示したものである。この年度の営業活動によるキャッシュ・フローの値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、期首や期末に棚卸資産はないものとする。
【資 料】
1.損益は、次のとおりである(損益に関して、以下のもの以外は考慮不要)。
2.新設備を導入する時点は、年度の初めである。
3.減価償却費は、各年度末に計上される。
4.実効税率は、40%である。
5.新設備の価額等については、次のとおりである。
【解答群】
ア 18万円 イ 22万円 ウ 28万円 エ 32万円 オ 42万円
(5)営業活動によるキャッシュ・フロー
減価償却費は非現金支出費用なので、営業活動によるキャッシュ・フローは、次のように計算されます。
営業活動によるキャッシュ・フロー = 税引後利益 + 減価償却費
= 18万円 + 10万円
= 28万円
次の資料は、現行設備(旧設備)を新設備に取り替えるかどうかに関するものである。この資料に基づいた場合、新設備に取り替える時点における投資額(税引き後差額キャッシュフロー)の値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、この企業は、この新設備の取り換えの有無に関わらず、当期純利益は発生しているもとのとする。
【資 料】
1.新設備に取り替える時点は、年度の初めである。
2.取替時に、キャッシュとして売却収入がある。
3.減価償却費は、各年度末に計上される。
4.実効税率は、40%である。
5.現行設備(旧設備)と新設備の価額等については、次のとおりである。
【解答群】
ア -80万円 イ -72万円 ウ -68万円 エ 68万円 オ 72万円
(3)旧設備売却損益計上にともなう法人税等の減少額(タックスシールド)
取得原価100万円、残存価額0万円、耐用年数5年の定額法を採用していますので、旧設備の年間の減価償却費は、次のようになります。
旧設備の年間の減価償却費 = 100 ÷ 5 = 20万円
設備取替時までの経過年数は2年ですので、設備取替時における帳簿価額は、次のようになります。
旧設備の設備取替時における帳簿価額 = 100 - 20 × 2 = 60万円
旧設備売却損益は、次のようになります。
旧設備売却損益 = 40 - 60 = -20万円(売却損失20万円)
実効税率は40%ですので、旧設備売却損益計上にともなう法人税等の減少額(タックスシールド)は、次のようになります。
旧設備売却損益計上にともなう法人税等の減少額 = 20 × 0.4 = 8万円
(4)新設備に取り替える時点における投資額(税引後差額キャッシュ・フロー)
新設備に取り替えるときの投資額(税引き後差額キャッシュ・フロー)
= - 120 + 40 + 8 = -72万円
したがって、新設備に取り替える時点における投資額(税引き後差額キャッシュ・フロー)は、 - 72万円となります。よって、イが適切です。
新設備の取得によるキャッシュアウトフローと旧設備の売却によるキャッシュインフローだけでなく、旧設備売却損益の計上にともなう法人税等の減少額(タックスシールド)を考慮する点がポイントです。
次の資料は投資プロジェクトDに関するものである。この資料に基づいた内部収益率法に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.現在、投資プロジェクトDを実行するによって、初期投資額が100万円かかる。
2.投資プロジェクトDを実行するによって、1年後にだけキャッシュインフローが得
られることが予測されている。
3.1年後に得られることが予測されているキャッシュインフローは、110万円である。
4.資本コストは8%である。
5.税金はないものとする。
【解答群】
ア 内部収益率は10%であるので、内部収益率法によると、投資プロジェクトDは実行すべきと判断される。
イ 内部収益率は10%であるので、内部収益率法によると、投資プロジェクトDは実行すべきでないと判断される。
ウ 内部収益率は11%であるので、内部収益率法によると、投資プロジェクトDは実行すべきと判断される。
エ 内部収益率は11%であるので、内部収益率法によると、投資プロジェクトDは実行すべきでないと判断される。
(1) 内部収益率
1年後のキャッシュインフローをC、割引率をrとすると、現在価値PVは、次のように計算されます。

現在価値をPV、投資額をIとすると、正味現在価値NPVは、次のように計算されます。

内部収益率は、投資案の正味現在価値をゼロとする割引率ですので、「NPV = 0、C = 110、I = 100」を代入すると、内部収益率rは、次のようになります。

(2) 資本コストとの比較
最後に、目標とする収益率(資本コスト)と内部収益率を比較することで投資を判断します。内部収益率法では、資本の調達コストである資本コストと内部収益率を比較し、内部収益率が資本コストを上回れば投資を行うことになります。
資本コストは8%ですので、内部収益率10%は資本コスト8%を上回っています。したがって、内部収益率法によると、投資プロジェクトDは実行すべきと判断されます。よって、記述アが適切です。
内部収益率法の特徴に関する説明として、最も適切なものはどれか。
ア 内部収益率法は、計算が簡単であるという長所を持っている。
イ 内部収益率法では、将来予測されるキャッシュ・フローの符号が2回以上変わったとしても、内部収益率は一つだけに定まるという長所を持っている。
ウ 内部収益率法は、投資の規模を考慮するという長所を持っている。
エ 相互排他的投資案を評価する際には、内部収益率法では、収益率は高いが正味現在価値の低い投資案を採択する可能性がある。
内部収益率法は、年数が多くなると内部収益率を求める式が複雑になります。計算が簡単であるのではありません。
内部収益率法では、将来予測されるキャッシュ・フローの符号が2回以上変わるときには、複数の内部収益率が算出されることになります。内部収益率は一つだけに定まるわけではありません。
エ ○:
相互排他的投資案を評価する際には、内部収益率法は投資の規模を考慮しないため、収益率は高いが正味現在価値の低い投資案を採択する可能性があります。相互排他的というのは、同時に選択することができないというものです。
正味現在価値法では、割引率は正味現在価値法の計算式では外部で決定され与えられるものですので、この割引率が変化すると、正味現在価値は異なった値となります。割引率が変化すると正味現在価値は異なった値となるということに関して影響を及ぼすのは、初期投資額と年次のキャッシュ・フローの額です。例えば、割引率は10%であると正味現在価値法の計算システムの外部で決定されるとすると、正味現在価値を計算する上で影響を及ぼすのは、年度のキャッシュ・フローと初期投資額になります。このように正味現在価値法では額を問題としています。これに対して、内部収益率法では、収益率(割引率)は内部収益率法の計算式の中で決定されます。このように、内部収益率法は率を問題としています。
ここで、2つの案を二者択一で選択する場合を考えます。キャッシュ・フローの回収は1年度目だけと仮定し、もし、初期投資額が両案とも100万円というように同じであった場合、正味現在価値法と内部収益率法の結論は同じものとなります。内部収益率法では、1年度目のキャッシュインフローが初期投資額の何%増しであるかで内部収益率が計算されるわけですから、1年度目のキャッシュインフローが初期投資額を上回る%が大きい投資案が採択されることになります。一方、正味現在価値法では、どちらの案の計算式においても控除する初期投資額は同じですので、1年度目のキャッシュインフローの額の大きい投資案が採択されることになります。ここで、初期投資額は同じであり、1年度目のキャッシュインフローの額が大きいものは、必ず、1年度目のキャッシュインフローが初期投資額を上回る%が大きいものとなります。ですから、初期投資額が両案とも同じであれば、正味現在価値法と内部収益率法の結論は同じものとなります。
しかしながら、初期投資額が異なり、初期投資額の規模が異なると、正味現在価値法では額を問題とし、内部利益率法は率を問題としているため、正味現在価値法と内部利益率法の結論が異なることがあり得ます。投資案の規模が異なるA案とB案を比較する際に、内部収益率法はA案とB案の投資額の差について考慮しないからです。内部利益率法は、A案についてはA案における初期投資額を1年目の回収額が上回る率を、B案についてはB案における初期投資額を1年目の回収額が上回る率を問題としているので、例えば、A案の初期投資額100万円とB案の初期投資額1億円の投資案の規模の差を考慮せず、A案とB案の投資案について評価することになります。このように、内部利益率法は率を問題としていますので、投資案の額を問題にしている正味現在価値法と異なる結論を導くことがあります。よって、記述は適切です。
次の資料は、投資プロジェクトEに関するものである。この資料に基づき、回収期間法についての記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.現在、投資プロジェクトEを実行することによって、初期投資額が2,000万円かかる。
2.現在、投資プロジェクトEを実行することによって、4年間にわたりキャッシュインフローが得られることが予測されている。
3.4年間に得られるキャッシュ・フローは、次のとおりである。

4.目標回収期間は3年間である。
【解答群】
ア 回収期間は3.2年であるので、回収期間法によると、投資プロジェクトEは実行すべきであると判断される。
イ 回収期間は3.2年であるので、回収期間法によると、投資プロジェクトEは実行すべきでないと判断される。
ウ 回収期間は4.0年であるので、回収期間法によると、投資プロジェクトEは実行すべきであると判断される。
エ 回収期間は4.0年であるので、回収期間法によると、投資プロジェクトEは実行すべきでないと判断される。
目標回収期間が3年間であるのに対して、回収期間は3.2年であり、目標回収期間を超えています。したがって、回収期間法によると、投資プロジェクトEは実行すべきでないと判断されます。よって、記述イが適切です。
回収期間法の特徴に関する説明として、最も適切なものはどれか。
ア 回収期間法は、投資によって将来得られるキャッシュ・フローを現在価値に割引いて評価しており、貨幣の時間的価値を考慮している。
イ 回収期間法により目標となる回収期間が計算されるため、回収期間法は客観的な投資案の評価方法といえる。
ウ 回収期間法は、投資を回収した後のキャッシュ・フローを考慮している。
エ 回収期間法は、計算が簡単なので、実務的には多くの中小企業が採用している。
回収期間法は貨幣の時間的価値を無視していますが、安全性を重視することは資金繰りの観点からも重要であり、計算も簡単なので、実務では多くの中小企業が採用しています。計算が簡単であるからといって、理論的に採用されるべき方法ということにはなりませんが、将来に得られるキャッシュインフローの予測が難しく、その計算に時間とコストをかけるだけの余裕がない中小企業では、実際のところ多くの企業が採用しているのが実情です。
次の資料は、投資設備Fに関するものである。この資料に基づき、会計的投資利益率法についての説明として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.現在、設備Fに投資することによって、初期投資額が1,200万円かかる。
2.設備Fに投資することによって、3年間にわたり利益が得られることが予測されている。
3.3年間に得られる利益は、次のとおりである。

4.減価償却は3年間の定額法で、残存価額は0とする。
5.会計的投資利益率は、平均投資額に対する平均利益の占める割合で計算されるもの とする。
6.目標投資利益率は4%である。
【解答群】
ア 会計的投資利益率は2.5%であるので、会計的投資利益率法によると、投資プロジェクトFは実行すべきであると判断される。
イ 会計的投資利益率は2.5%であるので、会計的投資利益率法によると、投資プロジェクトFは実行すべきでないと判断される。
ウ 会計的投資利益率は5%であるので、会計的投資利益率法によると、投資プロジェクトFは実行すべきであると判断される。
エ 会計的投資利益率は5%であるので、会計的投資利益率法によると、投資プロジェクトFは実行すべきでないと判断される。
(2) 平均投資額
平均投資額は、購入したときの簿価と残存価額の平均となりますので、計算式は、次のようになります。
平均投資額 = (1,200 + 0) ÷ 2 = 600万円
(3) 会計的投資利益率
会計的投資利益率は、次のようになります。

(4) 目標とする投資利益率との比較
最後に、目標とする投資利益率と比較することで投資を判断します。会計的投資利益率法では、目標とする投資利益率と会計的投資利益率を比較し会計的投資利益率が目標とする投資利益率を上回れば投資を行うことになります。
目標投資利益率4%に対して、会計的投資利益率5%は目標投資利益率を超えています。したがって、会計的投資利益率法によると、投資プロジェクトFは実行すべきであると判断されます。よって、記述ウが適切です。
会計的投資利益率法の特徴に関する説明として、最も適切なものはどれか。
ア 会計的利益率法は、投資によって将来得られる利益を現在価値に割引いて評価しており、貨幣の時間的価値を考慮している。
イ 会計的利益率法により目標となる会計的利益率が計算されるため、会計的利益率法は客観的な投資案の評価方法といえる。
ウ 会計的利益率法は、投資によって将来得られるキャッシュインフローを考慮していない。
エ 会計的利益率法は、計算が非常に複雑である。
会計的利益率法では、目標となる会計的利益率を計算することはできません。目標となる会計的利益率は、会計的利益率法により計算されるものではなく、企業が定めるものです。そのため、目標となる会計的利益率をどのように定めるかが不明確です。この会計的利益率法には、目標となる会計的利益率の設定に客観性がないという問題点があります。
ウ ○:
会計的利益率法は、会計上の利益を用いて計算しており、投資によって将来得られるキャッシュインフローを考慮していません。会計的利益率法では、投資を会計上の費用ではなく、キャッシュアウトフローで測定しているにもかかわらず、投資の回収はキャッシュインフローではなく会計上の利益で測定しており、対応していないという問題点があります。よって、記述は適切です。
エ × :
会計的利益率法は投資から得られるキャッシュ・フローではなく、利益を用いて計算するので、計算が容易です。将来、投資から得られるキャッシュ・フローを予測するのは難しいものですが、会計的利益率法は利益だけで計算でき、将来得られるキャッシュ・フローを割引く利子率も考慮しないでいいからです。計算が非常に複雑であるというわけではありません。利益については、企業が財務諸表の損益計算書としてまとめていくものなので、なじみやすいという特徴もあります。
次の資料は、ある株式の投資収益率について予想される分布を示したものである。株式の投資のリスクの尺度として標準偏差が用いられるが、この資料に基づいた場合、この株式の標準偏差として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.この株式の投資収益率について予想される分布は、次のとおりである。

2.標準偏差の計算にあたっては、次に示されたいずれかの計算式によって計算された値を用いる。

【解答群】
ア -1 イ 0 ウ 1 エ 1.41 オ 1.4
(1) 期待値
まず、期待値を求めます。
期待値 = Σ(投資収益率 × 確率)
= 4% × 0.2 + 6% × 0.5 + 8% × 0.3 = 0.8% + 3.0% + 2.4%
= 6.2%
(2) 分散
次に、分散を求めます。
(3) 標準偏差
標準偏差を2乗したものが分散ですので、標準偏差は次のようになります。

したがって、この株式の標準偏差は1.4となります。よって、オが適切です。
ポートフォリオ理論におけるリスクに関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
ア 流動性リスクとは、取引相手の財務状況の悪化や倒産により貸付金の受取利息や元本の回収が滞ってしまうリスクのことである。
イ カントリー・リスクとは、外貨建て金融商品における国の国との為替変動により資産価値が変動するリスクのことである。
ウ 価格変動リスクとは、市場で取引量が少ないために資産を換金しようとしたときにすぐに売ることができない、あるいは希望する価格で売ることができなくなるリスクのことである。
エ 信用リスクとは、その国の政治や経済などによって資産価値が変動するリスクのことである。
オ システマティック・リスクとは、市場全体との相関によるリスクであり、分散化によって消去することができないリスクのことである。
ア × : 取引相手の財務状況の悪化や倒産により貸付金の受取利息や元本の回収が滞ってしまうリスクは、信用リスクです。流動性リスクではありません。
イ × : 外貨建て金融商品における国の国との為替変動により資産価値が変動するリスクは、為替リスクです。カントリー・リスクではありません。
ウ ×: 市場で取引量が少ないために資産を換金しようとしたときにすぐに売ることができない、あるいは希望する価格で売ることができなくなるリスクは、流動性リスクです。価格変動リスクではありません。
エ × : その国の政治や経済などによって資産価値が変動するリスクは、カントリー・リスクです。信用リスクではありません。
オ ○ : 記述のように、システマティック・リスクとは、市場に連動するリスクのことであり、分散投資によって消去することができないリスクのことです。これは、市場リスク、あるいはマーケット・リスクとも呼ばれます。よって、記述は適切です。
次の図は、投資家の無差別曲線を描いたものである。この投資家の選好を表す組み合わせとして、最も適切なものはどれか。ただし、図において、満足度のレベルは、U1<U2<U3である。
ア A:リスク回避者 B:リスク中立者 C:リスク愛好者
イ A:リスク回避者 B:リスク愛好者 C:リスク中立者
ウ A:リスク愛好者 B:リスク中立者 C:リスク回避者
エ A:リスク愛好者 B:リスク回避者 C:リスク中立者
B:リスク中立者
無差別曲線は、リスクと無関係に、より高いリターンを選好する投資家を表しているので、この投資家は、リスク中立者です。
次の図は、相関係数が-1、0、1の場合における、2つの株式XとYについて、ポートフォリオの組み入れ比率を変化させて、縦軸に期待収益率を横軸に標準偏差をとったポートフォリオのリターンとリスクを示したものである。この図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

【解答群】
ア 相関係数が-1のとき、ポートフォリオのリスク低減効果は最も小さくなる。
イ 相関係数が1のとき、ポートフォリオのリスク低減効果は最も大きくなる。
ウ 相関係数が0のとき、ポートフォリオのリスクを低減することができない。
エ 相関係数が1以外のとき、ポートフォリオのリスク低減効果がある。
ア × :
相関係数が-1のとき、ポートフォリオのリスク低減効果は最も大きくなります。図のように、株式Xの比率が減るにしたがって標準偏差が減少していき、ある点で標準偏差が0になります。そこからさらに株式Xの比率を減らしていくと株式Yが100%の点まで直線的に標準偏差が増えていきます。ポートフォリオのリスク低減効果は最も小さくなるのではありません。
イ × :
相関係数が1のときは、ポートフォリオのリスク低減効果はゼロになります。図のように、株式Xと株式Yの点を結んだ直線になります。最も大きくなるのではありません。
ウ × :
相関係数が-1と1以外の場合の全てのポートフォリオは、図の三角形の中に存在することになります。相関係数が0のとき、図のような曲線となります。もし相関係数が0よりも小さければ、曲線は左側の相関係数 = -1の折れ線に近づいていきます。相関係数が0よりも大きければ、曲線は右側の相関係数 = 1の直線に近づいていきます。相関係数が0のとき、ポートフォリオのリスクを低減することができます。ポートフォリオのリスクの低減をすることができないというわけではありません。
エ ○:
図から、相関係数が1以外の場合は、ポートフォリオのリスク低減効果があることがわかります。相関係数が1というのは、景気の動向に対して全く同じ方向に動くということです。よって、似たような動きをする株でポートフォリオを組むよりも、逆の動きをするような株でポートフォリオを組んだ方が、ポートフォリオのリスク低減効果が高いということになります。よって、記述は適切です。
次の文章は、ポートフォリオのリスクとリターン、分散効果について述べたものである。空欄A~Cに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ポートフォリオの総リスクは、( A )と( B )から構成される。
( A )は、ポートフォリオを構成する銘柄数が多くなると減少するが( B )は、減少することはない。これは( B )が株式市場のリスクを表すためである。( C )は、横軸にベータ、縦軸に期待リターンをとったときに、CAPMにおけるベータと期待リターンの関係を表した直線です。証券市場線は、ベータの一次関数で表され、切片は安全利子率であり、傾きは市場ポートフォリオのリスクプレミアムである。


ア A:システマティック・リスク B:アンシステマティック・リスク C:資本市場線
イ A:システマティック・リスク B:アンシステマティック・リスク C:証券市場線
ウ A:アンシステマティック・リスク B:システマティック・リスク C:証券市場線
エ A:アンシステマティック・リスク B:システマティック・リスク C:資本市場線
Aは、銘柄数が増加すると減少します。これをポートフォリオの分散効果といい、個別銘柄のリスクが分散投資によって次第に低減していきます。株式市場全体を一つのシステムと考えると、個別銘柄のリスクには、全体のシステムに起因するリスクと、銘柄固有のリスクがあると考えられ、銘柄固有のリスクをアンシステマティック・リスクといいます。従って、Aはアンシステマティック・リスクが入ります。
Bは、株式市場のリスクになりますので、分散投資によっても変化しません。Bにはシステマティック・リスクが入ります。
次に、証券市場線は、横軸にベータ、縦軸に期待リターンをとったときに、CAPMにおけるベータと期待リターンの関係を表した直線です。証券市場線は、ベータの一次関数で表され、切片は安全利子率であり、傾きは市場ポートフォリオのリスクプレミアムです。従って、Cは証券市場線が入ります。
よって、選択肢ウが正解となります。

証券市場線

次の図は、リスクフリー資産である国債と、全ての株式を自由に組み合わせた場合におけるリターンとリスクの分布を示したものである。この図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

【解答群】
ア 資本市場線とは、資本市場において、リスクフリー資産だけを購入した場合を示すものである。
イ A点とB点を比較すると、B点の方が同じリスクで高いリターンを実現できる。
ウ 合理的な投資家は、必ず資本市場線の上のポートフォリオを選択する。
エ 市場ポートフォリオは、資本市場線と効率的フロンティアの交点で表される。
ア × :
国債を組み合わせることで任意の株式によるポートフォリオと、リスクフリーレートの点を結んだ直線上のポートフォリオが選択可能になります。この直線を最大限に上に引いたのが、図のような直線です。この直線のことを資本市場線と呼びます。資本市場線とは、資本市場において、リスクフリー資産だけを購入した場合を示すものではありません。
イ × :
B点は効率的フロンティアの上にあるため、株式だけによるポートフォリオとしては最適化されています。しかし国債を組み合わせたポートフォリオであるA点と比較すると、A点の方が同じリスクで、より高いリターンを実現できます。B点の方が同じリスクで高いリターンを実現できるのではありません。
ウ ○:
イの解説から、合理的な投資家は、必ず資本市場線の上のポートフォリオを選択することがわかります。よって、記述は適切です。
エ × :
市場ポートフォリオは、資本市場線と効率的フロンティアの接点で表されます。交点ではありません。
次の資料は、G証券に関するものである。この資料に基づいた場合、CAPMによりG証券の期待収益率を計算する数式として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】

【解答群】
ア 8% + 1.2 × (8% - 2%)
イ 8% - 1.2 × (8% + 2%)
ウ 2% + 1.2 × (8% + 2%)
エ 2% - 1.2 × (8% - 2%)
オ 2% + 1.2 × (8% - 2%)
資本資産評価モデル(CAPM:Capital Asset Pricing Model)とは、投資資本(証券)の期待収益率は、リスクフリーレートとリスクプレミアムを加えたものになるというモデルのことをいいます。
〈数 式〉
個別株式の期待収益率 = リスクフリーレート + β × 市場リスクプレミアム
※ 市場リスクプレミアム = 市場ポートフォリオの期待収益率 - リスクフリーレート
※ β:市場ポートフォリオと比べたときの、個別株式のリスクの大きさ
G証券の期待収益率は、CAPMにより、次のように計算されます。
G証券の期待収益率
= リスクフリーレート + β値 × (市場ポートフォリオの期待収益率 - リスクフリーレート)
= 2% + 1.2 × (8% - 2%)
= 2% + 7.2%
= 9.2%
したがって、CAPMによりG証券の期待収益率を計算する数式は、「2% + 1.2 × (8% - 2%)」となります。
よって、オが適切です。
次の資料は、H社の資金調達に関するものである。この資料に基づいた場合、H社の加重平均資本コストを計算する数式として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.H社は現在、普通株式と社債によって資金調達を行っている。
2.資金調達の状況は、次のとおりである。

3.投資家が要求している収益率は、次のとおりである。

4.実効税率は40%とする。
5.普通株式の収益率はCAPMにより算出されたものである。
【解答群】
ア 0.5 × (1 - 0.4) × 3% + 0.5 × 13%
イ 0.5 × 0.4 × 3% + 0.5 × 13%
ウ 0.4 × 3% + 0.6 × 13%
エ 0.4 × (1 - 0.4) × 3% + 0.6 × 13%
オ 0.4 × 0.4 × 3% + 0.6 × 13%
加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost of Capital)とは、負債から生じるコストと資本から生じるコストを加重平均したもののことをいいます。
〈数 式〉

特に、負債と資本の額については、貸借対照表の簿価ではなく、時価を使用する点に注意しましょう。
構成比率は、帳簿価額ではなく、時価を用います。すると、負債と資本の構成比率は、次のようになります。

H社の加重平均資本コストWACCは、次のように計算されます。
WACC = 負債の構成比率 × (1 - 実効税率) × 負債利子率 + 資本の構成比率 × 資本コスト
= 0.4 × (1 - 0.4) × 3% + 0.6 × 13%
= 0.72% + 7.8%
= 8.52%
したがって、H社の加重平均資本コストを計算する数式は、「0.4 × (1 - 0.4) × 3% + 0.6 × 13%」となります。
よって、エが適切です。
資金調達方法に関する説明として、最も適切なものはどれか。
ア 内部留保と減価償却費は、内部金融に該当する。
イ 内部金融とは、企業外部から資金調達を行うことである。
ウ 直接金融とは、金融仲介機関から直接的に資金を融通することである。
エ 間接金融とは、金融仲介機関を経由せずに、間接的に資金を融通することである。
ア ○:
内部金融とは、自己金融ともいわれ、企業の内部で資金の調達を行うことです。留保利益と減価償却費が内部金融に該当します。よって、記述は適切です。
イ × :
企業外部から資金調達を行うものは、外部金融です。内部金融ではありません。企業間信用、借入金融、証券金融が外部金融に該当します。
ウ × :
直接金融とは、金融仲介機関を経由せず、借り手が金融市場から直接資金を調達することです。金融仲介機関から直接的に資金を融通することではありません。証券金融(社債発行、株式発行)が直接金融に該当します。
エ × :
間接金融とは、金融市場を経由せずに、貸し手と借り手の間を金融仲介機関(銀行、信用金庫、保険会社など)が仲介し、金融仲介機関を経由して、間接的に資金を融通することをいいます。金融仲介機関を経由せずに、間接的に資金を融通することではありません。金融市場を経由するものが直接金融、金融市場を経由しないものが間接金融です。混同しないようにしましょう。
次の文章は、効率的市場仮説について述べたものである。空欄A~Cに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
( A )では、チャート分析などテクニカル分析の有効性が否定されている。 ( B )では、株価が上昇するか下落するかは五分五分の可能性なので、株価の将来の値動きを予測することは不可能とされる。インサイダー情報を利用しても将来の株価を予測することはできないとする説は( C )である。一方、( D )ではファンダメンタル分析の有効性が否定されている。
ア
A:ストロング・フォームの効率的市場仮説 B:ウィーク・フォームの効率的市場仮説 C:ランダムウォーク理論 D:セミストロング・フォームの効率的市場仮
イ
A:ウィーク・フォームの効率的市場仮説 B:ランダムウォーク理論 C:ストロング・フォームの効率的市場仮説 D:セミストロング・フォームの効率的市場仮説
ウ
A:ランダムウォーク理論 B:セミストロング・フォームの効率的市場仮説 C:ストロング・フォームの効率的市場仮説 D:ウィーク・フォームの効率的市場仮説
エ
A:ランダムウォーク理論 B:ウィーク・フォームの効率的市場仮説 C:ストロング・フォームの効率的市場仮説 D:セミストロング・フォームの効率的市場仮説
・ウィーク・フォームの効率的市場仮説
現在の株価には過去の株価データの全てが迅速かつ正確に反映されているため、過去の株価や出来高といった取引実績に関する変動推移などの情報を分析しても将来の株価を予想することはできないとする仮説のことです。つまり、チャート分析などテクニカル分析の有効性が否定されています。
・セミストロング・フォームの効率的市場仮説
現在の株価には過去の株価データの全て が反映されているだけでなく、企業が公開している情報の全てが迅速かつ正確に反映されているため、ディスクロージャー制度によって企業が公開している財務諸表などの情報を分析しても将来の株価を予想することはできないとする仮説のことをいいます。つまり、ファンダメンタル分析の有効性が否定されています。
・ストロング・フォームの効率的市場仮説
公開されている情報だけでなく、一部の投資家だけ利用できる情報も迅速かつ正確に反映されているとするものです。インサイダー情報を利用しても将来の株価を予測することはできないとするものです。
なお、ランダムウォーク理論についても効率的市場仮説と関連するためおさえておきましょう。
・ランダムウォーク理論
株価が上昇するか下落するかは五分五分の可能性なので、株価の将来の値動きを予測することは不可能であるとするものです。
効率的市場仮説は、情報の網羅性に応じ、ウィーク→セミストロング→ストロングとなっています。
最も、容易に入手できる情報は、価格自体の情報になります。ウィーク・フォームの効率的市場仮説ではチャート分析による過去の株価変動情報は既に価格情報に反映されているので役に立たないとされます。次に容易に入手できる情報は、企業が公開する財務情報等の株価のファンダメンタル(基礎的要因)情報です。株価には既に、ファンダメンタル情報は織り込まれているので、将来の株価予測に役立たないと考えるのがセミストロング・フォームの効率的市場仮説です。企業内部者以外は入手困難なインサイダー情報についても、株価に織り込まれているため、将来の株価予測には役に立たないとするのがストロング・フォームの効率的市場仮説です。
( A )にはウィーク・フォームの効率的市場仮説が入ります。( B )にはランダムウォーク理論が入ります。( C )にはストロング・フォームの効率的市場仮説が入ります。
( D )には、セミストロング・フォームの効率的市場仮説が入ります。よって、選択肢イが正解となります。
次の資料は、I社に関するものである。この資料に基づいた場合、I社の企業価値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.I社が毎年得られるフリーキャッシュフローは、1,000万円と予測されている。
2.資本コストは、10%である。
3.企業価値は、DCF法により計算する。
【解答群】
ア 1,100万円 イ 1億円 ウ 1億1,000万円 エ 2億円 オ 3億円
●DCF法(Discount Cash Flow Method)
企業が将来生み出すキャッシュフローを、現在価値に割引いて、企業価値を計算する
●ゼロ成長モデル(将来のフリーキャッシュフローが毎年同じ場合のモデル)
〈数 式〉

FCF:将来のフリーキャッシュフロー
r:資本コスト
I社の企業価値は、DCF法(ゼロ成長モデル)により、次のように計算されます。

よって、イが適切です。
次の資料は、J社に関するものである。この資料に基づいた場合、J社の企業価値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.J社が1年後に得られるフリーキャッシュフローは、1,000万円と予測されている。
2.J社がその後1年ごとに得られるフリーキャッシュフローの成長率は5%と予測されている。
3.資本コストは、10%である。
4.企業価値は、DCF法により計算する。
【解答群】
ア 1,100万円 イ 1億円 ウ 1億1,000万円 エ 2億円 オ 3億円
定率成長モデル(将来のフリーキャッシュフローが一定率で成長する場合のモデル)
〈数 式〉

FCF:第1期のフリーキャッシュフロー
r:資本コスト
g:フリーキャッシュフローの成長率
定率成長モデルは、ゴードンの成長モデルと呼ばれることもあります。この計算式において、資本コストがフリーキャッシュフローの成長率を上回っていることが必要となります。
J社の企業価値は、DCF法(定率成長モデル)により、次のように計算されます。

よって、エが適切です。
次の資料は、K社に関するものである。この資料に基づいた場合、K社の企業価値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.K社は、永続的に毎年一定の税引後利益を得るものと予測されている。
2.K社が永続的に毎年得る予想税引後利益は、1,000万円である。
3.資本還元率は、10%である。
4.企業価値は、収益還元法により計算する。
【解答群】
ア 1億円 イ 1億1,000万円 ウ 1億5,000万円 エ 2億円 オ 3億円
収益還元法
会計上の利益から企業価値を求める
〈数 式〉

DCF法のゼロ成長モデル(毎年のキャッシュフローが一定の場合)の式とよく似ていますが、収益還元法では、フリーキャッシュフローの代わりに税引後利益を用いている点に注意しましょう。
K社の企業価値は、収益還元法により、次のように計算されます。

よって、アが適切です。
次の資料は、L社に関するものである。この資料に基づいた場合、L社の企業価値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.L社は、永続的に毎年一定の配当を行うものと予測されている。
2.L社が永続的に毎年行う配当額は、1,000万円である。
3.資本還元率は、10%である。
4.株主価値は、配当還元法により計算する。
5.企業価値は、株主価値と負債価値を合計したものである。
6.L社の負債価値は、1億円である。
【解答群】
ア 1億円 イ 1億1,000万円 ウ 1億5,000万円 エ 2億円 オ 3億円
配当還元法
毎期の配当から企業価値を求める
〈数 式〉

DCF法、収益還元法、配当還元法は、いずれも将来獲得されるリターンを現在価値に割引いて評価するものです。将来獲得されるリターンが、それぞれ、キャッシュインフロー、利益、配当といった違いはありますが、DCF法、収益還元法、配当還元法は、いずれもインカム・アプローチによる評価方法です。
L社の株主価値は、配当還元法により、次のように計算されます。

L社の企業価値は、次のように計算されます。
企業価値 = 株主価値 + 負債価値
= 1 + 1
= 2億円
よって、エが適切です。
MM理論に関する説明として、最も不適切なものはどれか。
ア 法人税が存在しない完全資本市場では、企業価値はその資本構成に依存しない。
イ 法人税が存在しない完全資本市場では、最適資本構成が存在しない。
ウ 法人税が存在しない完全資本市場では、加重平均資本コストの最小値が存在する。
エ 法人税が存在する現実では、企業価値はその資本構成に依存する。
負債を利用することによる資本構成の変化が、加重平均資本コストや企業価値にどのような影響を与えるかについて、法人税がない完全資本市場を仮定して最適資本構成を研究したモデルのことを、「MM理論」といいます。
〈結 論〉法人税が存在しない完全資本市場では、企業価値はその資本構成に依存しない
最適資本構成は存在しない
加重平均資本コスト(WACC)は一定である
完全資本市場においては、企業の価値は、借入(負債)で資金調達するか株式(自己資本)で資金調達するかといった資本の調達方法によらず、企業が将来生み出すキャッシュ(資産)によって決まります。
法人税が存在する現実においては、企業価値は資本構成に依存することになり、最適資本構成が存在し、加重平均コストの最小値が存在することに注意しましょう。
ア ○:
法人税が存在しない完全資本市場では、企業価値はその資本構成に依存しません。これが、MM理論の重要な結論です。
イ ○:
法人税が存在しない完全資本市場では、最適資本構成が存在しません。完全資本市場においては、企業の価値は、負債により資金調達するか自己資本により資金調達するかといった資本の調達方法によらず、企業が将来生み出すキャッシュによって決まります。
ウ ×:
法人税が存在しない完全資本市場では、加重平均資本コストは一定です。最小値は存在しません。負債コストは不確実性がないため、資本コストよりも低くなります。すると、負債が増えるに従って加重平均コストは引き下げられることになります。しかし一方で、財務レバレッジ効果が働き、負債が増えるに従って株主資本コストも上昇します。財務レバレッジ効果とは、負債の増加により株主のリスクとリターンが高まる効果のことです。すると、負債の増加に従って加重平均コストが引き下げられる効果と、株主資本コストが上昇する効果が打ち消し合って、法人税が存在しない完全資本市場では、加重平均資本コストは一定になります。よって、記述は不適切です。
エ ○:
法人税が存在する現実では、企業価値はその資本構成に依存します。すなわち、企業価値が最大になる最適資本構成が存在します。法人税を考慮すると、借入(負債)で調達した場合には、支払利息が発生します。支払利息の損金算入によって法人税が軽減されるため節税効果が働きます。そのため、実質的な負債コストは低下することになり、加重平均コストは低下します。負債を利用すればするほど、加重平均資本コストは低下することになります。しかし、実際には負債比率が高まれば倒産などの財務リスクが高くなります。財務リスクが高くなると、負債の調達金利が高くなるため、加重平均資本コストが増加します。つまり、負債比率が0から次第に高くなるにつれ、節税効果により、加重平均資本コストは低下し、企業価値は増加していきますが、さらに負債比率が高くなると倒産などの財務リスクによる効果が働き、加重平均資本コストは上昇し、企業価値が下がっていくと考えられます。この負債比率のときが最適資本構成となります。
次の資料は、N社とO社に関するものである。この資料に基づいた場合、N社とO社の理論株価に関する説明として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.N社、O社ともに1年後の配当総額は、100万円である。
2.N社の毎期の配当総額は、一定である。
3.O社の配当総額は、毎期5%だけ成長する。
4.株主価値は、配当還元法により計算する。
5.資本還元率は、10%である。
6.N社、O社ともに発行済株式数は、1,000株である。
【解答群】
ア N社の理論株価は1万円であり、O社の理論株価は1万円である。
イ N社の理論株価は2万円であり、O社の理論株価は1万円である。
ウ N社の理論株価は1万円であり、O社の理論株価は2万円である。
エ N社の理論株価は2万円であり、O社の理論株価は2万円である。
理論株価は、次の式で計算されます。
理論株価 = 株主価値 ÷ 発行済株式数
本問により、成長する企業の方が、成長しない企業よりも理論株価が高くなることを確認してください。
(1) N社
N社の株主価値は、配当還元法により、次のように計算されます。

N社の理論株価は、次のように計算されます。

(2) O社
O社の株主価値は、配当還元法により、次のように計算されます。

O社の理論株価は、次のように計算されます。

よって、ウが適切です。
株価収益率に関する説明として、最も適切なものはどれか。
ア 株価収益率は、株価を1株当たり当期純利益で割って計算される。
イ 株価収益率は、当期純利益を発行済株式数で割って計算される。
ウ 株価収益率は、株価を1株当たり純資産額で割って計算される。
エ 株価収益率は、純資産額を発行済株式数で割って計算される。
株価収益率(PER:Price Earning Ratio)
株価が1株あたり当期純利益の何倍になっているかを表す
〈数 式〉PER = 株価 ÷ 1株あたり当期純利益
●1株あたり当期純利益(EPS:Earning Per Share)
〈数 式〉EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式数
純利益に比べて株価が安い株は、割安と考えられます。逆に、純利益に比べて株価が高い株は、割高と考えられます。このように、株主から見た場合は、PERが低い株が買得ということになります。
ア ○:
株価収益率(PER)は、株価を1株当たり当期純利益で割って計算されます。よって、記述は適切です。
イ × :
当期純利益を発行済株式数で割って計算されるのは、1株当たり当期純利益(EPS)です。株価収益率ではありません。
ウ × :
株価を1株当たり純資産額で割って計算されるのは、株価純資産倍率(PBR)です。株価収益率ではありません。
エ × :
純資産額を発行済株式数で割って計算されるのは、1株当たり純資産(BPS)です。株価収益率ではありません。
次の資料は、P社に関するものである。この資料に基づいた場合、P社の株価純資産倍率として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】

【解答群】
ア 0.75倍 イ 1倍 ウ 1.5倍 エ 15倍 オ 150倍
株価純資産倍率(PBR:Price Book - value Ratio)
1株あたり純資産額の何倍で株式が売買されているかを表す
〈数 式〉PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産額
●1株あたり純資産額(BPS:Book - value Per Share)
〈数 式〉BPS = 純資産額 ÷ 発行済株式数
PBRは1を基準として、1よりも高いほど割高と判断できる点に注意しましょう。
正解:ウ 1.5倍
(1) 1株あたり純資産額(BPS:Book-value Per Share)
まず、1株あたり純資産額BPSを求めると、次のようになります。
BPS = 純資産額 ÷ 発行済株式数
= 1億円 ÷ 10万株
= 1,000円/株
(2) 株価純資産倍率(PBR:Price Book value Ratio)
株価純資産倍率とは、1株あたり純資産額の何倍で株式が売買されているかを表す 指標です。この株価純資産倍率PBRを求めると、次のようになります。
PBR = 株価 ÷ 1株あたり純資産額
= 1,500円/株 ÷ 1,000円/株
= 1.5倍
よって、ウが適切です。
次の資料は、Q社に関するものである。この資料に基づいた場合、Q社の配当利回りの値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】

【解答群】
ア 1% イ 2% ウ 3% エ 4% オ 5%
●配当利回り
〈数 式〉配当利回り = 1株あたり配当 ÷ 株価
●1株あたり配当
〈数 式〉1株あたり配当 = 配当総額 ÷ 発行済株式数
●配当性向
利益のうち配当する割合
〈数 式〉配当性向 = 配当総額 ÷ 当期純利益
(1) 各指標の計算式
各指標の計算式は、次のようになります。


(2) 各指標との関係
自己資本利益率(ROE)は、次のように表されます。

したがって、次のようになります。
10% = 2.5倍 × 配当利回り ÷ 50%
0.1 = 2.5 × 配当利回り ÷ 0.5
∴ 配当利回り = 0.1 × 0.5 ÷ 2.5
= 0.02
= 2%
次の資料は、R社に関するものである。この資料に基づいた場合、為替予約に関する説明として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.R社は3ヵ月後に、X銀行から1ユーロ100円の為替相場で1ユーロを買うという先物為替予約をした。
2.この為替予約の損益図は、次のように表される。

【解答群】
ア この損益図で描かれる青色の実線①は、X銀行の損益を表している。
イ この損益図で描かれる赤色の点線②は、R社の損益を表している。
ウ 3ヵ月後において、為替予約価格1ユーロ100円より円高・ユーロ安になると、R社はプラスの利益を得ることができる。
エ 3ヵ月後において、為替予約価格1ユーロ100円より円安・ユーロ高になると、R社はプラスの利益を得ることができる。
イ × :
ユーロの売り手であるX銀行は、3ヵ月後において為替予約価格1ユーロ100円より円安・ユーロ高になると、為替予約を受けたことによって、損失を被ることになります。例えば、3ヵ月後において1ユーロ110円の為替相場になると、X銀行は、1ユーロを3ヵ月後における1ユーロ110円の為替相場で為替市場から買い、R社に1ユーロ100円で売ることになり、10円の損失を被ることなります。3ヵ月後において、円安・ユーロ高がさらに進むと、X銀行はさらに多くの損失を被ることになります。逆に、3ヵ月後において、為替予約価格1ユーロ100円より円高・ユーロ安になると、X銀行は為替予約を受けたことによって、利益を得ることになります。よって、損益図で描かれる赤色の点線②はX銀行の損益を表します。R社の損益ではありません。
ウ × :
アの解説のように、3ヵ月後において、為替予約価格1ユーロ100円より円高・ユーロ安になると、R社は為替予約したことによって、損失を被ることになります。R社はプラスの利益を得ることができるのではありません。
エ ○:
アの解説のように、3ヵ月後において、為替予約価格1ユーロ100円より円安・ユーロ高になると、R社は為替予約したことによって、R社はプラスの利益を得ることができます。よって、記述は適切です。
先渡取引(フォワード)と先物取引(フューチャー)に関する説明として、最も適切なものはどれか。
ア 先渡取引(フォワード)と先物取引(フューチャー)は、いずれも所定の原資産を将来の一定時点に所定の価格で売買する契約である。
イ 先渡取引(フォワード)と先物取引(フューチャー)は、いずれも店頭取引として行われる。
ウ 先物取引(フューチャー)では、原資産、取引条件などは取引の当事者間で任意に取り決める。
エ 先渡取引(フォワード)では、契約の履行を取引所が保証しているため、信用リスクは少ない。
●先渡取引(フォワード)
先渡取引とは、将来のある特定の日に、特定の原資産を、当事者間で合意した価格で売買することを現時点で約定する取引で、取引単位、受渡日について当事者間で自由に決定することができるオーダー・メイドの取引です。
●先物取引(フューチャー)
先物取引は、取引の当事者が、将来のある特定の日に、特定の原資産を現時点で約定し た価格で売買する取引で、価格・数量・受渡し決済日が決まっているレディー・メイドの取引です。
先渡取引(フォワード)と先物取引(フューチャー)についてまとめると、次のようになります。
ア ○ : 記述のように、先渡取引(フォワード)と先物取引(フューチャー)は、所定の原資産を将来の一定時点に所定の価格で売買する契約という意味では同じです。よって、記述は適切です。
イ × : 先物取引(フューチャー)は標準化された取引所取引です。これに対し、先渡取引(フォワード)は売手と買手の1対1の相対取引になります。
ウ × : 原資産、取引条件などを取引の当事者間で任意に取り決めるのは、先渡取引(フォワード)です。先物取引(フューチャー)ではありません。
エ ×: 契約の履行を取引所が保証しているため、信用リスクが少ないのは、先物取引(フューチャー)です。先渡取引(フォワード)ではありません。
オプション取引に関する説明として、最も適切なものはどれか。
ア オプション取引とは、決められた期間内にあらかじめ決められた価格で取引する権利を取引するものである。
イ オプション取引では、売る権利のことをコール・オプション、買う権利のことをプット・オプションと呼ぶ。
ウ 満期日のみ権利を行使できるタイプのオプションを、アメリカンタイプという。
エ 満期日以前であればいつでも権利を行使できるタイプのオプションを、ヨーロピアンタイプという。
オプションとは、決められた期間内にあらかじめ決められた価格で取引する権利のことです。
●プット・オプション:売る権利のこと
●コール・オプション:買う権利のこと
オプション取引とは、そのオプションを取引する(売り買いする)ものです。
〈オプションの取引の4種類〉
●プット・オプションを買う
●プット・オプションを売る
●コール・オプションを買う
●コール・オプションを売る
〈権利の行使期間〉
●ヨーロピアンタイプ:満期日のみ権利を行使できる
●アメリカンタイプ:満期日以前であればいつでも権利を行使できる
為替予約では必ず取引を行う必要がありましたが、オプション取引は権利なので、権利を行使するか行使しないかを自由に選択することができます。
ア ○:
オプション取引とは、決められた期間内にあらかじめ決められた価格で取引する権利を取引するものです。よって、記述は適切です。
ウ × :
オプション取引では権利の行使期間が決められています。満期日のみ権利を行使できるタイプのオプションを、ヨーロピアンタイプといいます。アメリカンタイプではありません。
エ × :
満期日以前であればいつでも権利を行使できるタイプのオプションを、アメリカンタイプといいます。ヨーロピアンタイプではありません。
次の資料は、S社に関するものである。この資料に基づいた場合、プット・オプションに関する説明として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.S社は将来時点において、Y銀行に1ユーロ100円の為替相場で1ユーロを売るという権利を、1ユーロあたりオプション料2円で購入した。
2.このオプション取引の損益図は、次のように表される。

【解答群】
ア この損益図で描かれる青色の実線①は、S社の損益を表している。
イ この損益図で描かれる赤色の点線②は、S社の損益を表している。
ウ 将来時点において、1ユーロ98円より円高・ユーロ安になると、S社は損失を被ることになる。
エ 将来時点において、1ユーロ98円より円高・ユーロ安になると、Y銀行は利益を得ることになる。
●プット・オプションの売り 利益はオプション料が限度となる 損失は無限となる ●プット・オプションの買い 利益は無限となる 損失はオプション料が限度となる ![]() |
ア × :
本問は、売るという権利ということですから、プット・オプションのことです。本問では、プット・オプションの買い手がS社で、プット・オプションの売り手がY銀行になります。将来時点において、権利行使価格1ユーロ100円より円安・ユーロ高になると、プット・オプションの買い手であるS社はオプションを放棄することによって、円安・ユーロ高による損失をオプション料2円だけに確定させることになります。すると、プット・オプションの売り手であるY銀行はオプション料2円の利益を得ることができます。逆に、将来時点において、権利行使価格1ユーロ100円より円高・ユーロ安になると、プット・オプションの買い手であるS社はオプションを行使することによって、利益を増やすことができるので、プット・オプションの売り手であるY銀行はそれを拒むことはできず、損失を被ることになります。よって、損益図で描かれる青色の実線①はY銀行の損益を表します。S社の損益ではありません。
イ ○:
将来時点において、権利行使価格1ユーロ100円より円安・ユーロ高になると、プット・オプションの買い手であるS社はオプションを放棄することによって、円安・ユーロ高による損失を1ユーロあたりオプション料2円だけに確定させることができます。将来時点において、円安・ユーロ高がさらに進んだとしても、S社はオプションを放棄するので損失はオプション料の2円だけに確定させることができます。
逆に、将来時点において、権利行使価格1ユーロ100円より円高・ユーロ安になると、S社はオプションを行使することによって、利益を増やすことができます。例えば、将来時点において1ユーロ90円の為替相場になると、S社は1ユーロを90円で買い、その1ユーロについてオプションを行使することによって権利行使価格1ユーロ100円で売ると受取額は100円となり、オプション料2円を差し引いて、8円の手取額となります。将来時点において、円高・ユーロ安がさらに進むと、S社はさらに多くの利益を得ることができます。よって、損益図で表される赤色の点線②はS社の損益を表します。よって、記述は適切です。オプション料は1ユーロ当たり2円ですので、1ユーロ98円より円高・ユーロ安になると、S社はプラスの利益を得ることができます。
ウ × :
イの解説のように、将来時点において、1ユーロ98円より円高・ユーロ安になると、オプション取引をしたことによってS社はプラスの利益を得ることができます。、損失を被ることになるのではありません。
エ × :
イの解説のように、将来時点において、1ユーロ98円より円高・ユーロ安になると、オプション取引を受けたことによってY銀行は損失を被ることになります。利益を得るのではありません。
次の文章は、効率的市場仮説について述べたものである。空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
オプション価格は、( A )価値と( B )価値により構成される。以下の図は( C )オプションの価値を示している。( C )オプションでは、原資産価格が権利行使より( D )とき、( A )価値が存在する。

ア A 時間的 B 根本的 C コール D 高い
イ A 時間的 B 根本的 C プット D 低い
ウ A 本質的 B 時間的 C プット D 低い
エ A 本質的 B 時間的 C コール D 高い
オプションの価格構成は本質的価値と時間的価値から成ります。 オプション料=本質的価値+時間的価値 ・本質的価値 本質的価値とは、その時点でオプションを権利行使した場合に生じる価値(原資産価格と権利行使価格との差額)のことで、内在的価値とも呼ばれます。本質的価値は、ゼロになることはあっても、マイナスになることはありません。 ・時間的価値 時間的価値とは、原資産の現時点から満期日までの間の価格変動により、オプションの本質的価値が上昇することへの期待値のことです。ですので、時間的価値についても、ゼロになることはあっても、マイナスになることはありません。プレミアム(オプション価格)に、時間の経過や価格変動の大きさなどといった時間的価値が影響してくるのが、オプションの最大の特徴であるといえます。 |
オプション価値のうち、原資産価格と権利行使価格の差にあたる部分を本質的価値といいます。本問の図は、コールオプションの図になります。従って、( C )はコールとなります。コールオプションでは、原資産価値が増加すると、オプション価値であるプレミアムが上昇します。これは、オプションを権利行使すると、「原資産価格-権利行使価格」がオプションの買い手の利益になることを意味しています。従って、( D )は高いが入ります。一方、「原資産価格-権利行使価格」<0のときは、オプションの買い手は権利を放棄します。よって、( A )価値は本質的価値となります。( B )は時間的価値が入ります。

