1巡目では数式地獄でアレルギー感のあった標準偏差や加重平均資本コスト、CAPMの数式達ですが、2巡目に入って脳が諦め着いたのか、記憶定着してきてくれました^^
投資のリスクとリターン
次の資料は、ある株式の投資収益率について予想される分布を示したものである。株式の投資のリスクの尺度として標準偏差が用いられるが、この資料に基づいた場合、この株式の標準偏差として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.この株式の投資収益率について予想される分布は、次のとおりである。

2.標準偏差の計算にあたっては、次に示されたいずれかの計算式によって計算された値を用いる。

【解答群】
ア -1 イ 0 ウ 1 エ 1.41 オ 1.4
●投資のリスク
投資により得られるリターンの不確実性のこと
投資がもたらすリターンのばらつきの度合いによって評価される
〈統計値〉
●投資のリターン
投資により得られる期待収益率のこと
投資がもたらす期待値によって評価される
〈統計値〉
期待値 = Σ(投資収益率 × 確率)
= 4% × 0.2 + 6% × 0.5 + 8% × 0.3 = 0.8% + 3.0% + 2.4%
= 6.2%
(2) 分散
次に、分散を求めます。
(3) 標準偏差
標準偏差を2乗したものが分散ですので、標準偏差は次のようになります。

したがって、この株式の標準偏差は1.4となります。よって、オが適切です。
加重平均資本コスト
次の資料は、H社の資金調達に関するものである。この資料に基づいた場合、H社の加重平均資本コストを計算する数式として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.H社は現在、普通株式と社債によって資金調達を行っている。
2.資金調達の状況は、次のとおりである。

3.投資家が要求している収益率は、次のとおりである。

4.実効税率は40%とする。
5.普通株式の収益率はCAPMにより算出されたものである。
【解答群】
ア 0.5 × (1 - 0.4) × 3% + 0.5 × 13%
イ 0.5 × 0.4 × 3% + 0.5 × 13%
ウ 0.4 × 3% + 0.6 × 13%
エ 0.4 × (1 - 0.4) × 3% + 0.6 × 13%
オ 0.4 × 0.4 × 3% + 0.6 × 13%
加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost of Capital)とは、負債から生じるコストと資本から生じるコストを加重平均したもののことをいいます。〈数 式〉![]() |
正解:エ
構成比率は、帳簿価額ではなく、時価を用います。すると、負債と資本の構成比率は、次のようになります。

H社の加重平均資本コストWACCは、次のように計算されます。
WACC = 負債の構成比率 × (1 - 実効税率) × 負債利子率 + 資本の構成比率 × 資本コスト
= 0.4 × (1 - 0.4) × 3% + 0.6 × 13%
= 0.72% + 7.8%
= 8.52%
したがって、H社の加重平均資本コストを計算する数式は、「0.4 × (1 - 0.4) × 3% + 0.6 × 13%」となります。
よって、エが適切です。
CAPM
次の資料は、G証券に関するものである。この資料に基づいた場合、CAPMによりG証券の期待収益率を計算する数式として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】

【解答群】
ア 8% + 1.2 × (8% - 2%)
イ 8% - 1.2 × (8% + 2%)
ウ 2% + 1.2 × (8% + 2%)
エ 2% - 1.2 × (8% - 2%)
オ 2% + 1.2 × (8% - 2%)
資本資産評価モデル(CAPM:Capital Asset Pricing Model)とは、投資資本(証券)の期待収益率は、リスクフリーレートとリスクプレミアムを加えたものになるというモデルのことをいいます。 〈数 式〉 個別株式の期待収益率 = リスクフリーレート + β × 市場リスクプレミアム ※ 市場リスクプレミアム = 市場ポートフォリオの期待収益率 - リスクフリーレート ※ β:市場ポートフォリオと比べたときの、個別株式のリスクの大きさ |
リスクフリーレートとは、無リスク資産から生じる利回りのことである。 無リスク金利は指標金利・基準金利として、また割引率の算出にも利用される。
正解:オ
G証券の期待収益率は、CAPMにより、次のように計算されます。
G証券の期待収益率
= リスクフリーレート + β値 × (市場ポートフォリオの期待収益率 - リスクフリーレート)
= 2% + 1.2 × (8% - 2%)
= 2% + 7.2%
= 9.2%
したがって、CAPMによりG証券の期待収益率を計算する数式は、「2% + 1.2 × (8% - 2%)」となります。
よって、オが適切です。
投資のリスクとリターン
次の資料は、ある株式の投資収益率について予想される分布を示したものである。株式の投資のリスクの尺度として標準偏差が用いられるが、この資料に基づいた場合、この株式の標準偏差として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.この株式の投資収益率について予想される分布は、次のとおりである。

2.標準偏差の計算にあたっては、次に示されたいずれかの計算式によって計算された値を用いる。

【解答群】
ア -1 イ 0 ウ 1 エ 1.41 オ 1.4
期待値=Σ(投資収益率*確率)
=(4*0.2)+(6*0.5)+(8*0.3)=0.8+3+2.4=6.2
分散=Σ(偏差²×確率)
=(4-6.2)²*0.2+(6-6.2)²*0.5+(8-6.2)²*0.3
=(-2.2%)²×0.2+(-0.2%)²×0.5%+(1.8%)²*0.3%
4.84*0.2+0.04*0.5+3.24*0.3
=0.968+0.02+0.972
=1.96
標準偏差=√1.96=1.4
期待値 = Σ(投資収益率 × 確率)
= 4% × 0.2 + 6% × 0.5 + 8% × 0.3 = 0.8% + 3.0% + 2.4%
= 6.2%
(2) 分散
次に、分散を求めます。
(3) 標準偏差
標準偏差を2乗したものが分散ですので、標準偏差は次のようになります。

したがって、この株式の標準偏差は1.4となります。よって、オが適切です。
CAPM
次の資料は、G証券に関するものである。この資料に基づいた場合、CAPMによりG証券の期待収益率を計算する数式として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】

【解答群】
ア 8% + 1.2 × (8% - 2%)
イ 8% - 1.2 × (8% + 2%)
ウ 2% + 1.2 × (8% + 2%)
エ 2% - 1.2 × (8% - 2%)
オ 2% + 1.2 × (8% - 2%)
CAPM=リスクフリーレート+β*(市場ポートフォリオの期待収益率-リスクフリーレート)=2+1.2*(8-2)
=2+7.2=9.2
加重平均資本コスト
次の資料は、H社の資金調達に関するものである。この資料に基づいた場合、H社の加重平均資本コストを計算する数式として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【資 料】
1.H社は現在、普通株式と社債によって資金調達を行っている。
2.資金調達の状況は、次のとおりである。

3.投資家が要求している収益率は、次のとおりである。

4.実効税率は40%とする。
5.普通株式の収益率はCAPMにより算出されたものである。
【解答群】
ア 0.5 × (1 - 0.4) × 3% + 0.5 × 13%
イ 0.5 × 0.4 × 3% + 0.5 × 13%
ウ 0.4 × 3% + 0.6 × 13%
エ 0.4 × (1 - 0.4) × 3% + 0.6 × 13%
オ 0.4 × 0.4 × 3% + 0.6 × 13%
負債の構成比率=(400/400+600)=0.4
資本の構成比率=(600/(400+600)=0.6
WACC=0.4*(1-0.4)*3%+0.6*13%=0.72%+7.8%=8.52%
加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost of Capital)とは、負債から生じるコストと資本から生じるコストを加重平均したもののことをいいます。〈数 式〉![]() |
構成比率は、帳簿価額ではなく、時価を用います。すると、負債と資本の構成比率は、次のようになります。

H社の加重平均資本コストWACCは、次のように計算されます。
WACC = 負債の構成比率 × (1 - 実効税率) × 負債利子率 + 資本の構成比率 × 資本コスト
= 0.4 × (1 - 0.4) × 3% + 0.6 × 13%
= 0.72% + 7.8%
= 8.52%
ポートフォリオのリスク低減効果 【平成22年 第16問】
資金を2つの証券に分散して投資を行う場合、投資収益率のリスク低減効果が最大になるのはどれか、最も適切なものを選べ。
ア 2つの証券の投資収益率が完全に相関している場合
イ 2つの証券の投資収益率が完全に負相関している場合
ウ 2つの証券の投資収益率間に全く相関がない場合
エ 2つの証券の投資収益率間に弱い負相関がある場合
ポートフォリオの収益率と標準偏差 【平成24年 第19問】
Z 社は現在、余剰資金の全額を期待収益率8%、標準偏差6%の投資信託で運用している。
Z 社では余剰資金の運用方針を変更し、余剰資金の全額を、2%の収益率をもつ安全資産と上記投資信託に等額投資する運用を考えている。変更後の期待収益率と標準偏差の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア 期待収益率:5% 標準偏差:3%
イ 期待収益率:5% 標準偏差:6%
ウ 期待収益率:6% 標準偏差:6%
エ 期待収益率:10% 標準偏差:6%
期待収益率は、投資のリターンを表します。
標準偏差は、投資のリスクを表しており、リターンのばらつきと言えます。
標準偏差は√分散で求められます。
これを踏まえて、選択肢を見ると、標準偏差が変更前の6%よりも下がっている選択肢は、アのみになっています。そのため、選択肢アが正解であることが分かります。
変更後のポートフォリオの期待収益率は、8%×50%+2%×50%=5%となります。
ポートフォリオの標準偏差は√分散で求められ、分散は偏差の2乗 × 確率の合計
偏差は、それぞれの資金運用の期待収益率とポートフォリオの期待収益率です。
投資信託の偏差は、8%-5%=3%となります。安全資産の偏差は、2%-5%=-3%となります。確率は、ここでは投資の組み入れ比率となりますので、それぞれ50%です。これらの情報から分散を求めると、3%2 ×50%+3%2 ×50%=9%となります。標準偏差は、√分散ですから、ポートフォリオの標準偏差は、√9% =3%となります。これを表にすると次のようになります。
運用先 | 期待収益率 | 組み入れ比率 | ポートフォリオの期待収益率 | 偏差 | 偏差の2乗 ×確率 | 分散 | 標準偏差 |
投資信託 | 8% | 50% | 5% | 3% | 4.5% | 9% | 3% |
安全資産 | 2% | 50% | 5% | -3% | 4.5% | 9% | 3% |
まとめると、ポートフォリオの期待収益率は5%、標準偏差は3%となります。
資本資産評価モデル(CAPM) 【平成27年 第18問】
資本資産評価モデル(CAPM)に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア β が0以上1未満である証券の期待収益率は、無リスク資産の利子率よりも低い。
イ β がゼロである証券の期待収益率はゼロである。
ウ 均衡状態においては、すべての投資家が、危険資産として市場ポートフォリオを所有する。
エ 市場ポートフォリオの期待収益率は、市場リスクプレミアムと呼ばれる。
個別証券の期待収益率 = 無リスク資産の利子率(リスク・フリー・レート)+ β × 市場リスクプレミアム
市場リスクプレミアム = 市場ポートフォリオの期待収益率 - 無リスク資産の利子率(リスク・フリー・レート)
また、βは市場ポートフォリオと比べたときの個別株式のリスクの大きさを示します。
βが0以上1未満のとき、「β × 市場リスクプレミアム」(リスクプレミアム)は正の値になります。そのため、βが0以上1未満である証券の期待収益率は、無リスク資産の利子率よりも高くなります。
βがゼロである証券の期待収益率は無リスク資産の利子率と等しくなります。ゼロではありません。
均衡状態においてもリスクはゼロとはならず、市場ポートフォリオのリスクは存在するため、すべての投資家が、危険資産として市場ポートフォリオを所有することになります。
「市場リスクプレミアム = 市場ポートフォリオの期待収益率 - 無リスク資産の利子率」より、市場ポートフォリオの期待収益率は、市場リスクプレミアムに無リスク資産の利子率を加えたものになります。市場ポートフォリオの期待収益率は、市場リスクプレミアムではありません。
資本資産評価モデル(CAPM)の計算 【平成28年 第12問 設問2】
資本資産評価モデルを前提とした場合、以下の資料に基づく株式の期待収益率として最も適切なものを、下記の解答群から選べ。
〔資 料〕
市場ポートフォリオの期待収益率:8%
無リスク資産の期待収益率:3%
β:1.4
実効税率:40%
[解答群]
ア 4.4%
イ 7%
ウ 10%
エ 11.2%
個別株式の期待収益率 = 無リスク資産の期待収益率(リスクフリーレート)3% + β 1.4× 市場リスクプレミアム(8-3)
=10%
個別株式の期待収益率 = 無リスク資産の期待収益率(リスクフリーレート) + β × 市場リスクプレミアム
ここで、市場リスクプレミアムは、次のように表されます。
市場リスクプレミアム = 市場ポートフォリオの期待収益率 -無リスク資産の期待収益率
資本資産評価モデル(CAPM)によると、株式の期待収益率は、次のようになります。
株式の期待収益率 = 3% + 1.4 × (8% - 3%) = 10%
なお、実効税率が40%というのは、資本資産評価モデル(CAPM)の計算には用いないダミー数値です。
加重平均資本コスト1 【平成23年 第16問】
D社では、新規投資に必要な資金10 億円を内部留保、借入金、普通株式の発行によって調達しようと計画している。以下の資料に基づいて、この資金調達における加重平均資本コストを算出した場合、最も適切な数値を下記の解答群から選べ。なお、新株発行の場合、発行手数料等により既存の株主資本コストより1%高くなるものとする。
内部留保額 | 4億円 |
借入金の税引前コスト | 4% |
既存の株主資本コスト | 10% |
実効税率 | 50% |
目標負債自己資本比率 | 4:6 |
[解答群]
ア 6.8%
イ 7%
ウ 7.6%
エ 10%
10 億円を調達するのに、目標とする負債自己資本比率が4:6となっています。また、内部留保は4億円あります。
したがって、借入で調達する他人資本は4億円、新株発行による自己資本は2億円、そして内部留保を活用した自己資本は4億円というバランスになります。
借入金については節税効果を考慮する必要があり、税引後コストは税引前コスト4%×(1-実効税率50%)となり、2%になります。
したがって、調達する資金の加重平均資本コストは、(2%×4/10)+(11%×2/10)+(10%×4/10)という計算式になり、その結果7%となります。
よって選択肢イが正解です。
加重平均資本コスト2 【平成20年 第16問】
次の資料に基づいて、加重平均資本コストを求めよ(単位:%)。なお、自己資本のコストはCAPMにより算出する。
負債の税引前コスト | 4% | 実効税率 | 40% |
安全利子率 | 2% | 期待市場収益率 | 8% |
β 値 | 1.2 | 自己資本比率(時価に基づく) | 40% |
ア 3.04
イ 4.8
ウ 5.12
エ 6
CAPM の計算では、まず「市場リスクプレミアム」を計算します。
市場リスクプレミアムは、市場ポートフォリオの期待収益率8%-リスクフリーレート2%で6%になります。ちなみに、市場ポートフォリオの期待収益率は、期待市場収益率と同じ意味です。リスクフリーレートは、安全利子率と同じ意味です。
次に、CAPM を計算します。
CAPM は、リスクフリーレート2%+β1.2X市場リスクプレミアム6%で9.2%となります。
つまり、株主がこの会社に求める期待収益率は、9.2%となります。
では、これを使って、加重平均資本コストを求めましょう。
本問では、自己資本比率(時価に基づく) 40%が与えられているため、負債と資本の比率が0.6:0.4 であることが分かります。
よって、加重平均資本コストは、
負債/(負債+資本)X(1-実効税率)X負債利子率+資本/(負債+ 資本)XCAPM
= 0.6×(1-0.4)×0.04+0.4×0.092
= 0.0144+0.0368
= 0.0512
= 5.12%
その結果5.12%となります。
直接金融と間接金融 【平成28年 第10問】
直接金融と間接金融に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア ある企業の増資に応じて、個人投資家が証券会社を通して株式を取得したとき、その企業にとっては直接金融となる。
イ 銀行が株式の発行を行った場合は間接金融となる。
ウ 金融庁は、「貯蓄から投資へ」というスローガンの下、直接金融の割合を減らし間接金融の割合を増やすことを目指している。
エ 社債の発行による資金調達は、借入金による資金調達と同じ負債の調達であり、間接金融である。
直接金融とは、金融仲介機関を経由せず、借り手が金融市場から直接資金を調達することをいい、証券金融(社債発行、株式発行)がこれに該当します。
間接金融とは、貸し手と借り手の間を金融仲介機関(銀行、信用金庫、保険会社など)が仲介し、金融仲介機関を経由して、間接的に資金を調達することをいいます。
リース会計 【平成30年 第6問】
ファイナンス・リース取引の借手側の会計処理および開示に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 所有権移転ファイナンス・リース取引にかかるリース資産の減価償却費は、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定する。
イ リース債務は、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するものは流動負債に属するものとし、貸借対照表日後1年を超えて支払の期限が到来するものは固定負債に属するものとする。
ウ リース資産およびリース債務の計上額は、リース契約締結時に合意されたリース料総額とする。
エ リース資産は、貸借対照表日後1年以内にリース期間が満了するものは流動資産に、貸借対照表日後1年を超えてリース期間が満了するものは有形固定資産または無形固定資産に含めて表示する。
2.貸手の購入価額等が明らかでない場合は、次のうちいずれか低い価額
・ リース料総額の割引現在価値
・ 借手の見積現金購入価額
よって、選択肢ウの計上額は、リース契約締結時に合意されたリース料総額とするという記述は不適切です。
所有権移転ファイナンス・リース取引では、リース取引開始日に、リース物件とこれに係る債務を「リース資産(または「機械・装置」等各固定資産勘定)」「リース債務」としてそれぞれ資産・負債に計上します。リース資産については、減価償却されますので、有形固定資産もしくは無形固定資産に計上されるため、選択肢エの貸借対象日後1年以内にリース期間が満了するものは流動資産に表示されるとする記述は不適切です。 よって、選択肢イが正解となります。
ポートフォリオの収益率と標準偏差 【平成24年 第19問】
Z 社は現在、余剰資金の全額を期待収益率8%、標準偏差6%の投資信託で運用している。
Z 社では余剰資金の運用方針を変更し、余剰資金の全額を、2%の収益率をもつ安全資産と上記投資信託に等額投資する運用を考えている。変更後の期待収益率と標準偏差の組み合わせとして最も適切なものはどれか。
ア 期待収益率:5% 標準偏差:3%
イ 期待収益率:5% 標準偏差:6%
ウ 期待収益率:6% 標準偏差:6%
エ 期待収益率:10% 標準偏差:6%
安全資産を入れたポートフォリオを組むと、危険資産のみのポートフォリオに比べて、リスクが下がります。つまり、ポートフォリオの標準偏差は下がります。
これを踏まえて、選択肢を見ると、標準偏差が変更前の6%よりも下がっている選択肢は、アのみになっています。そのため、選択肢アが正解であることが分かります。
変更後のポートフォリオの期待収益率は、
投資信託の期待収益率×投資信託への組み入れ比率+ 安全資産の期待収益率×安全資産への組み入れ比率
で計算されます。今回、投資信託と安全資産へは等額投資ということですから、投資信託への組み入れ比率、安全資産への組み入れ比率ともに50%です。これらの情報からポートフォリオの期待収益率を計算すると、8%×50%+2%×50%=5%となります。
次に、ポートフォリオの標準偏差を求めます。標準偏差は、投資のリスクを表しており、リターンのばらつきと言えます。標準偏差は√分散で求められ、分散は偏差の2乗 × 確率の合計で求められます。偏差は、それぞれの資金運用の期待収益率とポートフォリオの期待収益率です。
投資信託の偏差は、8%-5%=3%となります。安全資産の偏差は、2%-5%=-3%となります。確率は、ここでは投資の組み入れ比率となりますので、それぞれ50%です。これらの情報から分散を求めると、3%2 ×50%+3%2 ×50%=9%となります。標準偏差は、√分散ですから、ポートフォリオの標準偏差は、√9% =3%となります。これを表にすると次のようになります。
運用先 | 期待収益率 | 組み入れ比率 | ポートフォリオの期待収益率 | 偏差 | 偏差の2乗 ×確率 | 分散 | 標準偏差 |
投資信託 | 8% | 50% | 5% | 3% | 4.5% | 9% | 3% |
安全資産 | 2% | 50% | 5% | -3% | 4.5% | 9% | 3% |
まとめると、ポートフォリオの期待収益率は5%、標準偏差は3%となります。
資本資産評価モデル(CAPM)の計算 【平成28年 第12問 設問2】
資本資産評価モデルを前提とした場合、以下の資料に基づく株式の期待収益率として最も適切なものを、下記の解答群から選べ。
〔資 料〕
市場ポートフォリオの期待収益率:8%
無リスク資産の期待収益率:3%
β:1.4
実効税率:40%
[解答群]
ア 4.4%
イ 7%
ウ 10%
エ 11.2%
個別株式の期待収益率=無リスク資産の期待収益率(リスクフリーレート)3%+β1.4*市場リスクプレミアム(市場ポートフォリオの期待収益率8% -無リスク資産の期待収益率3%)=10%
資本資産評価モデル(CAPM)は、投資資本(証券)の期待収益率は、無リスク資産の期待収益率(無リスク資産の利子率、リスクフリーレート)とリスクプレミアムを加えたものになるというモデルです。資本資産評価モデル(CAPM)によると、個別株式の期待収益率は、次のように計算されます。
個別株式の期待収益率 = 無リスク資産の期待収益率(リスクフリーレート) + β × 市場リスクプレミアム
ここで、市場リスクプレミアムは、次のように表されます。
市場リスクプレミアム = 市場ポートフォリオの期待収益率 -無リスク資産の期待収益率
また、βは市場ポートフォリオと比べたときの個別株式のリスクの大きさを示します。
では、設問の資料に基づいて、株式の期待収益率を計算してみましょう。
資本資産評価モデル(CAPM)によると、株式の期待収益率は、次のようになります。
株式の期待収益率 = 3% + 1.4 × (8% - 3%) = 10%
加重平均資本コスト1 【平成23年 第16問】
D社では、新規投資に必要な資金10 億円を内部留保、借入金、普通株式の発行によって調達しようと計画している。以下の資料に基づいて、この資金調達における加重平均資本コストを算出した場合、最も適切な数値を下記の解答群から選べ。なお、新株発行の場合、発行手数料等により既存の株主資本コストより1%高くなるものとする。
内部留保額 | 4億円 |
借入金の税引前コスト | 4% |
既存の株主資本コスト | 10% |
実効税率 | 50% |
目標負債自己資本比率 | 4:6 |
[解答群]
ア 6.8%
イ 7%
ウ 7.6%
エ 10%
税引後コスト=4%*(1-0.5%)=2%
WACC=(2%*4/10)+((11%*2/10)+(10%*4/10)=7%
借入金については節税効果を考慮する必要があり、税引後コストは税引前コスト4%×(1-実効税率50%)となり、2%になります。
したがって、調達する資金の加重平均資本コストは、(2%×4/10)+(11%×2/10)+(10%×4/10)という計算式になり、その結果7%となります。
よって選択肢イが正解です。
加重平均資本コスト2 【平成20年 第16問】
次の資料に基づいて、加重平均資本コストを求めよ(単位:%)。なお、自己資本のコストはCAPMにより算出する。
負債の税引前コスト | 4% | 実効税率 | 40% |
安全利子率 | 2% | 期待市場収益率 | 8% |
β 値 | 1.2 | 自己資本比率(時価に基づく) | 40% |
ア 3.04
イ 4.8
ウ 5.12
エ 6
市場リスクプレミアム=市場ポートフォリオの期待収益率8%-リスクフリーレート2%=6%
CAPM=リスクフリーレート2%+β1.2X市場リスクプレミアム6%=9.2%
加重平均資本コスト=負債0.6/(負債0.6+資本0.4)X(1-実効税率0.4)X負債利子率0.04+資本0.4/(負債0.6+ 資本0.4)XCAPM9.2%
=0.6*(0.6)*0.04+0.4*0.092
=0.36*0.04+0.0368=0.0144+0.0368=0.0512=5.12%
4%*(1-0.4)*β1.2(期待市場収益率8%-安全利子率2%)
CAPM の計算では、まず「市場リスクプレミアム」を計算します。
市場リスクプレミアムは、市場ポートフォリオの期待収益率8%-リスクフリーレート2%で6%になります。
次に、CAPM を計算します。
CAPM は、リスクフリーレート2%+β1.2X市場リスクプレミアム6%で9.2%となります。
つまり、株主がこの会社に求める期待収益率は、9.2%となります。
では、これを使って、加重平均資本コストを求めましょう。
本問では、自己資本比率(時価に基づく) 40%が与えられているため、負債と資本の比率が0.6:0.4 であることが分かります。
よって、加重平均資本コストは、
負債/(負債+資本)X(1-実効税率)X負債利子率+資本/(負債+ 資本)XCAPM
= 0.6×(1-0.4)×0.04+0.4×0.092
= 0.0144+0.0368
= 0.0512
= 5.12%
