平成22年度 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例3(生産・技術を中心とした経営戦略・経営管理に関する事例)・平成21年度 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例1(組織(人事を含む)を中心した経営戦略・経営管理に関する事例)

与件文

【C社の概要】C社は資本金9,000万円、従業員125名、年間売上高約24億円で、完成車メーカーを頂点としる自動車部品業界では2次部品メーカーである。C社の組織には、総務および経理機能を担当する総務部、金属プレス加工を行う金属プレス部、樹脂成形加工の樹脂成形部、設備メンテナンスおよび樹脂成形用・金属プレス用金型製作の生産技術部、そして製品品質の全社的管理を担当する品質保証部がある。製品開発や営業を専任する部門はなく、新規営業開拓は社長自ら担当し、受注後の開発・設計、日常の受注などの業務は、金属プレス部および樹脂成形部がそれぞれ担当している。

 現社長の父親が創業し、家電製品の金属プレス加工部品の生産からC社は出発した。現社長が生産部門の役員となってから、加工技術の向上を目指したプレス加工技能者の育成、加工品質向上のためのプレス金型の内製化、そして設備の改良・改善によるコストダウンを図るなど、社内改革を実施してきた。さらに、ISO9001の要求事項に従った品質マネジメントシステムを構築して品質保証の標準化を、そしてISO14001の要求事項に従った環境マネジメントシステムを構築して環境管理の標準化をそれぞれ達成している。このようなC社の活動は取引先の家電メーカーからも高い信頼を得て、樹脂金型の製作技術を含む樹脂成形加工技術の供与を受け、家電部品事業は拡大した。

 ところが、家電製品の生産が国内から海外に移転し、それに伴って部品も現地調達化され、C社の受注が激減した時期がある。現社長は、家電業界の海外生産移転を早くから予測し、将来の事業の方向性を探っていた。ちょうどその時期に、それまで取引していた家電メーカーの幹部から、自動車部品メーカーX社の紹介を受けた。その際、X社からは、金属プレス加工および樹脂成形加工の両部門を有していること、それらの金型が内製化されていること、そして生産設備の改良・改善技術を有していることなどが評価された。これをきっかけとして、さらに社内技術力の向上を図り、自動車業界での新規受注を計画し、時間をかけて自動車部品メーカーにC社を転換させた。現在も家電部品の受注はあるが、ごくわずかになっている。

 家電部品に代わり、現在の主な生産品目は自動車の駆動制御系部品および電子制御系電子部品に使われる金属プレス加工品と樹脂成形加工品であり、1次部品メーカー2社(X社およびY社)から受注、生産、納品している。X社とY社は異なった国内完成車メーカーの系列にある。X社からは駆動制御系部品を構成する金属プレス加工品と、電子制御系電子部品の樹脂成形加工品の受注を、そしてY社からは電子制御系電子部品の樹脂成形加工品と金属プレス加工品の受注を得ている。   C社の売り上げの構成は、X社約40%、Y社約30%、その他約30%(金型受注販売15%、家電・その他15%)となっている。

 C社の近年の業績は、国内自動車生産台数の停滞、海外工場での部品現地調達化などの国内完成車メーカーの動向に影響されて、受注量の減少傾向が続いている。また、  ハイブリッド車、電気自動車の普及によって、金属プレス部品である駆動制御系部品の需要が減少する恐れもある。

【取引先からの協力要請による事業計画】

現在、取引先である1次部品メーカー2社からそれぞれ新たな生産協力などを迫られている。1つは  Y社から生産設備および工程の移管計画である。この移管計画は、Y社と協力して生産リードタイムを短縮すること、そしてコストダウンを図ることの2つを目的にした計画である。これまでC社で樹脂成形加工および金属プレス加工を行い別々に納品し、Y社で組み立てをしていた電子部品の生産工程を見直し、Y社に代わってC社内で組立工程までも行えるようにするものである。この組立工程は、これまで「金属プレス部品の前処理」⇒「樹脂成形部品への装着」⇒「接着」⇒「検査」の4工程で、それぞれ専用設備にオペレーターが付いて行われ、加工工数が多く、しかも高度な技術を要する組立工程である。この移管計画についての協議では、Y社から以下の内容を提示されている。

①早急に品質を安定させて量産化ができるように、Y社から生産技術者を派遣し、組立工程の技術指導を行う。

②組立後の部品納入単価は、従来のY社での製造原価の15%削減を見込む。

③生産移管の目的を達成するために、両社間で生産管理に関する情報を共有する。

 この移管計画で最大の問題は、Y社から提示されている厳しい契約単価である。以前からこの部品加工時の材料歩留まりが悪いことも指摘されており、現状の生産方法を続けるだけではC社が十分な利益を確保するのは難しい状況にある。Y社とC社では、この移管計画を機に、製品設計変更なども含むVE提案を完成車メーカーに対して行うことも検討している。

 もう1つは、X社からの中国進出の要請である。X社はこれまで海外生産を行ってこなかったが、中国国内での生産拡大を狙う完成車メーカーから中国進出の要請があった。そこで生産される部品にC社の加工品が使われ、加えて中国国内では得にくい金型技術が高く評価され、X社とともに中国進出をしようというものである。すでにC社も中国沿海地域に工場用地を確保し、X社の駆動制御系製品の組立工場に隣接して、C社が金属プレス加工工場と金型工場を建設し金属プレス部品をX社の組立工場に供給する計画である。資金面では金融機関の協力が得られることになり一定のめどが付いているが、さらに具体的計画立案のためにX社と協議を進めている。

与件文&問題読込12分。

第1問(配点20点)自動車業界におけるC社の強みを(a)欄に、弱みを(b)欄に、2つずつ、それぞれ20字以内で述べよ。

歩留まりの悪さを挙げましたが、X 社と Y 社への売り上げ依存度が高くメーカーの動向に業績が左右されておりC 社の弱みとすべきでした。

解答構成記入11分、配点20点中自己採点17.5点。

第2問(配点40点)Y社から迫られている生産設備および工程の移管計画は、現在具体的な協議が進められている。

(設問1)この計画で最も大きな問題は、Y社から提示されている厳しい契約単価である。この計画でコストダウンを行い、利益を確保するために必要な具体的方法を120字以内で述べよ。

VEとは、バリュー・エンジニアリングのことで価値(バリュー)の向上を図る手法で、VEにおいて「価値=機能/コスト」で表わされ、コストダウンは価値を向上させることでした。

C 社に製品開発の専任部門がなかったので製品開発部門を設けて、材料歩留まりの改善や加工工数の削減を行い、コストダウンを図ること、また加工・組立工程の見直しなども記載すべきでした。

解答構成記入14分、配点20点中自己採点12点。

(設問2)この計画の実施によりC社の生産現場に混乱が予想される。予想される混乱の内容を(a)欄に60字以内で、またその対策を(b)欄に100字以内でそれぞれ述べよ。

(a)全社的な生産管理部門がないことによる混乱も記載すべきでした。

(b)産管理部門の新設、品質保証の標準化の適用、より早く技術を習得するためにY 社からの技術指導を受ける専任者を指定することを記載すべきでした。

解答構成記入21分、配点20点中自己採点4点。

第3問(配点20点)Y社からの生産設備および工程の移管計画には、①生産リードタイムの短縮、②コストダウンの2つの目的がある。これらの目的を達成するためにY社と共有化すべき生産管理に関する情報は何か。目的①、②について具体的情報データ項目をそれぞれ20字以内であげよ。

①生産計画と実績も記載すべきでした。

②製造原価削減率と書きましたが、広く材料価格、工数、製造経費といった原価情報と記載すべきでした。

解答構成記入12分、配点20点中自己採点14点。

第4問(配点20点)X社からの要請による中国進出計画が進展している。この計画に関してC社の技術を生かした独自の経営の方向性と対応策について、中小企業診断士としてどのようなアドバイスをするか、140字以内で述べよ。

金型技術を生かして、駆動制御系部品以外の電子制御系電子部品の金属プレス加工品の受注を拡大していくことを経営の方向性として記載すべきでした。

対応策とは「この方向に進むにあたって具体的に行うこと」として「誰に」「何を」「どのように」するのかという視点で検討すべきでした。

「何を」 電気自動車の普及が見込まれるため、電子制御系電子部品の金属加工品の受注を拡大

「誰に」 中国での生産拡大を狙っているX 社以外の部品メーカーも対象。これは問題文の「独自の経営の方向性」という条件にもマッチする。

 「どのように」 X 社以外にも受注を拡大していく為に営業部門の新設拡充

解答構成記入10分、配点20点中自己採点7.5点。

読込&全記入80分(0分超過)、自己採点55点。

またもや今ひとつ点数が伸びませんでした。知識でも時間でもなく、解答構成筋・緻密に論点漏れを防ぐのが課題です。

平成21年度 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例1(組織(人事を含む)を中心した経営戦略・経営管理に関する事例)で菓子メーカーである A 社がテーマでした。

与件文

A社は、地方都市W市に拠点をおく菓子メーカーである。資本金4,000万円、店舗数15店舗で、前年売上高約12億円、従業員はパート・アルバイト社員を含めて130名程度である。もともと、地元で採れた農作物を主原料とした地産地消の安全安心な菓子づくりをモットーに、和菓子をメインに評判を得てきた老舗菓子メーカーである。1年半ほど前に、事業拡大を企図して地元の洋菓子メーカーF社を傘下に収め、今日に至っている。

 F社を傘下に収める以前、A社はW市市内の工場で生産した菓子を、地元デパートや県内の観光名所にある10店舗で販売していた。販売員を含め120名程度の従業員のうち80%近くが、パート・アルバイト社員であった。

 A社社長が創業者の先代社長から事業を引き継いで以降、A社の売り上げはほぼ横ばいであった。地元限定の地産地消のビジネスモデルでは、現状以上の市場拡大が望めないと判断した成長志向の強いA社社長は、4年ほど前に大都市圏市場への進出を計画し、すぐさまそれを実現した。大都市圏内のデパート進出に際してW市地区産の原材料にこだわる一方で、   市場や嗜好の違いに配慮して創作菓子にも取り組み、地元の店とは違った店舗コンセプトも打ち出した。地元農家と専属契約を結び原材料の確保を図ると同時に、社内コンテストの開催、社外の菓子職人やコンサルタントへの依頼などによって新しい創作菓子の開発に積極的に取り組んだ。初めて   デパートで採用した創作菓子では、工場から半製品を輸送して売場の顧客の目の前で完成品に仕上げる手法を取り入れた。

 さらに、大都市圏市場の拡大を目指すA社社長は、高級スーパーへの納品にも挑戦した。当初取引に難色を示していた高級スーパーも、物産展での試験販売が好評であったことから取引を承諾した。

 こうした大都市圏進出によって、A社の売上高は20%程度伸長し、9億円を超えるまでに成長した。この成功の要因のひとつは、  原材料重視というコンセプトが消費市場の食の安全に対する意識や自然志向の高まりにマッチしたことである。また、同じ時期に開始したインターネットを活用した通信販売も思いのほか反響が大きく、A社の業績を高めただけでなく、A社と契約していたW市周辺地区の特産品とその生産農家の知名度を高めることにもなった。

 確かに、こうした大都市圏での事業展開は成長をもたらしたが、同時に生産体制や販売体制の整備などで新たな対応が求められた。地方都市と比べて競争が激しく市場ニーズの変化が速い大都市圏では新奇さを打ち出すことが必要で、定期的に目先を変える新作菓子を生み出す体制の整備が課題となってきた。とはいえ、これまでW市地区特産原材料へのこだわりを武器に事業展開してきたA社に、卓越した商品開発のノウハウが備わっていたわけではなかった。

 他方、大都市圏での事業展開など事業拡大を模索している中で、A社との取引のある地元のG信用金庫からF社の買収の具体的な話が持ち込まれていた。幾度となく提示された案件であったが、A社社長は逡巡していた。A社に買収される直前のF社は、資本金1,000万円、従業員数50名(うちパート・アルバイト社員約20名含む)、売上高約3億円で、市内に店舗併設工場を2ヵ所所有していた。創業当初からF社に勤めていた菓子職人の技術がその評判を支え、A社同様、W市周辺のデパートや観光名所などに12店舗を出店していた。しかし、2000年以降、W市郊外にも次々と大規模なショッピングセンターがオープンし有名洋菓子店が出店したために、周辺の競争は一挙に激化した。売り上げが3年間で30%近く落ち込んでしまったF社は、パート・アルバイト社員を中心に人員整理を断行した。その上、後継者問題が顕在化し事業継続を断念せざるを得なくなってしまった。G信用金庫の強い後押しもあって、最初の提案から2年以上の年月を経てA社社長はF社の買収を決定することになる。

 完全所有の子会社としてA社社長がF社のトップも兼任し、2つのブランドを継続させた。F社を傘下に取り込んだ後、A社社長は、地元に展開していた両社の店舗ネットワークの再編に取り組んだ。早期に経営体質の強化を図るために、両社で重複している売場の整理統合、死に筋商品の排除と売れ筋商品への絞り込みによって経費削減を進めた。また、生産ラインにもメスを入れた。F社の工場1つも閉鎖され、そこで生産を統括していた洋菓子職人の1人と数人の職人がA社の工場に配置転換され、その他の職人はF社のもう1つの工場に残った。最終的に、A社とF社の従業員40名程度の人員整理を実施した。

 しかし 、昨年来の景気低迷で、消費市場はますます厳しさを増し、大都市圏でのデパートや高級スーパーの事業も大幅に落ち込んだ。A社の売り上げも、W市地域ではF社買収前の売上高にまで落ち込む月も見られるようになった。大都市圏のデパート・スーパーに当初から投入していた商品の売り上げに支えられ、かろうじて営業を続けているが、こうした厳しい状況が続くと大都市圏事業の見直しをも迫られるのが実情である。

与件文&問題読込9分。

第1問(配点20点)F社を買収する以前のA社、およびA社に買収される以前のF社は、それぞれW市周辺で有力な菓子メーカーであった。和菓子、洋菓子といった取扱商品に違いがあるものの、A社とF社の強みには、どのような違いがあると考えられるか。150字以内で述べよ。

A社の強みで、実演販売の導入なども記載すべきでした。

解答構成記入14分、配点20点中自己採点12点。

第2問(配点20点)金融機関の後押しがあったにもかかわらず、当初、A社社長は、F社を傘下に収めることに対して、積極的、前向きではなかった。その理由として、どのようなことが考えられるか。F社が直面していた財務上の問題以外で考えられる点について、100字以内で述べよ。

F社はA社と同様の場所に店舗を出店しており、大都市圏での事業拡大の方針に対する利点が少ないとの視点も必要でした。

解答構成記入6分、配点20点中自己採点10点。

第3問(配点20点)A社がF社を傘下に収めた結果、買収されたF社の従業員に比べて、買収したA社の従業員のモラールが著しく低下してしまった。両社の人員構成を踏まえた上で、その理由について、100字以内で述べよ。

人員整理においては、通常はパートやアルバイト社員といった非正社員から整理の対象となることから、A 社の従業員の方が多く人員整理の対象となったため、A 社従業員のモラールがより低下したことが想定すべきでした。さらに、A 社の方が F 社よりも非正社員の割合が高いということから、同じような職種でありながら給与や待遇などの条件が両社の間で異なっていたことを考えるべきでした。

解答構成記入12分、配点20点中自己採点5点。

第4問(配点20点)A社社長は、生産体制を見直す際に、F社出身のベテランの洋菓子職人をA社工場の責任者に任命した。こうした施策を講じることによって、どのような成果や効果を期待したと考えられるか。100字以内で述べよ。

期待した成果は、ベテラン職人の技術を活用して、変化の速い大都市圏の市場ニーズに対応した新作菓子を開発すること、効果は、ベテラン職人を工場長とすることで、商品開発のノウハウを蓄積することを記載すべきでした。

解答構成記入10分、配点20点中自己採点8点。

第5問(配点20点)現在、A社は、地元市場の不振と、景気低迷に伴う大都市圏事業の縮小といった厳しい経営状況に直面している。急速な業績回復が期待できない中で、短期的に売り上げを増進させるための具体的な施策について、中小企業診断士として助言を求められた。どのような助言を行えばよいか、150字以内で述べよ。

既存商品とのセット販売をすることの視点も必要でした。

解答構成記入8分、配点20点中自己採点15点。

読込&全記入59分(21分余裕)、自己採点50点。

またもや今ひとつ点数が伸びませんでした。知識が必要だった訳でなく、時間も残っていたので、もっと緻密な解答構成をすべきでした。

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