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日本銀行の金融政策と貨幣【令和元年 第6問】

 日本経済は、日本銀行による金融政策から影響を受けている。貨幣に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 中央銀行が買いオペを実施すると、マネタリー・ベースが増加する。〇中央銀行の買いオペとは、日銀が市場から債券を買い、資金を市場に供給することでマネタリー・ベースを増加させる日銀の市場操作です。

b マネー・ストックM1は、現金通貨、預金通貨、準通貨、譲渡性預金の合計である。×マネー・ストックM1には、定期預金、譲渡性預金は含まれません。M2の定義になります。

M1=現金通貨+全預金取扱機関に預けられた預金通貨

となります。M2ではゆうちょ銀行の貯金は除かれますが、M1では含まれ、また農協・信用組合・労働金庫の預金なども含まれます。

c マネー・ストックをマネタリー・ベースで除した値は「信用乗数」と呼ばれる。×〇

信用乗数は貨幣乗数ともいわれます。

信用乗数(貨幣乗数)=マネー・ストック/マネタリー・ベース

で計算されます。なお、マネタリー・ベースはハイパワード・マネーともいわれます。

ハイパワード・マネー=流通現金通貨+準備預金

となります。

d 準備預金が増えると、信用乗数は大きくなる。〇×

準備預金を増加させると、マネタリー・ベースも上昇します。マネタリー・ベースは信用乗数算出の分母ですので、上昇すると、信用乗数は低下します。

信用乗数(貨幣乗数)↓=マネー・ストック/マネタリー・ベース↑

〔解答群〕

  1. aとc〇
  2. aとd〇×
  3. bとc
  4. bとd

 金融政策とマネーサプライ 【平成24年 第8問】(設問1)

 金融政策およびマネーサプライ(マネーストック)に関する下記の設問に答えよ。

(設問1)

 金融政策に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 貨幣の供給メカニズムで中央銀行が直接的に操作するのは、マネタリーベース(ハイパワードマネー)というよりも、マネーサプライ(マネーストック)である。×中央銀行が操作するのはハイパワードマネー(マネタリーベース)です。

b 市中銀行の保有する現金を分子、預金を分母とする比率が上昇すると、信用乗数(貨幣乗数)は上昇する。〇×「市中銀行の保有する現金を分子、預金を分母とする比率」とは、現金預金比率のことです。現金預金比率が上昇すると、信用乗数は低下します。

c 市中銀行から中央銀行への預け金を分子、市中銀行の保有する預金を分母とする比率が上昇すると、信用乗数(貨幣乗数)は低下する。×

「市中銀行から中央銀行への預け金を分子、市中銀行の保有する預金を分母とする比率」とは、法定準備率のことです。

 この法定準備率が上昇すると、信用乗数の式より、信用乗数は低下することが分かります。

d 信用乗数(貨幣乗数)は、分子をマネーサプライ(マネーストック)、分母をマネタリーベース(ハイパワードマネー)として算出される比率のことである。〇信用乗数(貨幣乗数)は、分子をマネーサプライ、分母をマネタリーベース(ハイパワードマネー)として算出される比率で表せます。

[解答群]

ア aとb

イ aとd

ウ bとc

エ cとd〇

中央銀行は、中央銀行が発行する現金通貨と、民間銀行が中央銀行に預ける準備預金を操作することで、貨幣の供給量を調整します。この、中央銀行が操作できる現金通貨と準備預金のことを、「ハイパワードマネー」もしくは「マネタリーベース」「ベースマネー」と呼びます。

 マネーサプライは、市場全体の現金と預金を合計したものです。マネーサプライがハイパワードマネーの何倍になるかを表した数字を貨幣乗数(信用乗数)と言います。言いかえれば、マネーサプライは、ハイパワードマネーに、貨幣乗数を掛けたものになります。

 貨幣乗数が安定していれば、政府はハイパワードマネーを操作することで、マネーサプライを管理することができます。

 なお、貨幣乗数は次のように表す事もできます。

 (※ 現金/預金は「現金預金比率」、準備預金/預金は「法定準備率」を表します)

マネタリーベース 【平成29年 第7問】

 2016年9月、日本銀行は金融緩和強化のための新しい枠組みとして「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入した。この枠組みでは、「消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する」こととされている。

 マネタリーベースに関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a マネタリーベースは、金融部門から経済全体に供給される通貨の総量である。〇×マネーサプライ

b マネタリーベースは、日本銀行券発行高、貨幣流通高、日銀当座預金の合計である。〇マネタリーベースは日銀がコントロールできる現金通貨と準備預金です。なお、準備預金とは、民間銀行の預金のうち、中央銀行に一定割合の預け入れを義務づけられた預金で、日銀当座預金が該当します。

c 日本銀行による買いオペレーションの実施は、マネタリーベースを増加させる。〇日銀が市場に流通している有価証券を買って、資金を市場に流通させることからマネタリーベースは増加します

d 日本銀行によるドル買い・円売りの外国為替市場介入は、マネタリーベースを減少させる。×介入は日銀が財務省の指示で実施するもので、ドルを市場から買って、円を市場へ売る、つまり流通させることになります。従って、マネタリーベースは増加します

[解答群]

ア aとc

イ aとd

ウ bとc〇

エ bとd

金融政策とマネーサプライ 【平成24年 第8問】(設問2)

 金融政策およびマネーサプライ(マネーストック)に関する下記の設問に答えよ。

(設問2)

 日本銀行が公表しているマネーサプライ統計は、2008 年に、マネーストック統計へと見直しが行われた。この見直しに関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア 証券会社が保有する現金通貨が、M1 に含まれることになった。

イ ゆうちょ銀行への要求払預金が、M1 に含まれることになった。〇

ウ 預金取扱機関が保有する現金通貨が、M1 に含まれることになった。

エ 預金取扱機関への定期性預金が、M1 に含まれることになった。

■M1 =現金通貨+預金通貨(預金通貨の発行者は、全預金取扱機関)

■M2 =現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨、準通貨、CD の発行者は、国内銀行等)

■M3 =現金通貨+預金通貨+準通貨+CD(預金通貨、準通貨、CD の発行者は、全預金取扱機関)

■広義流動性=M3+金銭の信託+投資信託+金融債+銀行発行普通社債+金融機関発行CP+国債・FB+外債

■現金通貨=銀行券発行高+貨幣流通高

■預金通貨=要求払預金(当座、普通、貯蓄、通知、別段、納税準備)-対象金融機関保有小切手・手形

■準通貨=定期預金+据置貯金+定期積金+外貨預金

■CD =譲渡性預金

■国内銀行等=国内銀行(除くゆうちょ銀行)、外国銀行在日支店、信用金庫、信金中央金庫、農林中央金庫、商工組合中央金庫

■全預金取扱機関=「国内銀行等」+ゆうちょ銀行+信用組合+全国信用協同組合連合会+労働金庫+労働金庫連合会+農業協同組合+信用農業協同組合連合会+漁業協同組合+信用漁業協同組合連合会

IS曲線とLM曲線 【平成21年 第8問】(設問1)

次のIS-LM 分析に関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 下図は、生産物市場の均衡を表すIS 曲線と、貨幣市場の均衡を表すLM 曲線を描いている。

 まず、生産物市場の均衡条件は

    Y=C+I+G

 で与えられる。ここで、Y:GDP、C:消費支出、I:投資支出、G:政府支出である。

 消費関数は、

    C=C0+c(Y-T0)

 であり、C0:独立消費、c:限界消費性向(0<c<1)、T0:租税収入(定額税)である。

 また、投資関数は

    I=I0-ir

であり、I0:独立投資、i:投資の利子感応度、r:利子率である。

 さらに、政府支出は与件であり、G=G0 とする。

 この結果、IS曲線は

として導出される。①この式はIS曲線の傾きや位置を示すものである。

 次に、貨幣市場の均衡条件は

    M=L

 である。ここで、M:貨幣供給、L:貨幣需要である。

 貨幣需要関数は

    L=kY-hr

 で与えられ、k:貨幣需要の所得感応度、h:貨幣需要の利子感応度である。

 また、貨幣供給は与件であり、M=M0 とする。

 これらから、LM曲線が導出され、

 として示される。②この式はLM曲線の傾きや位置を表している。

(設問1)

 文中の下線部①について、IS曲線の特徴に関する説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a IS曲線より右側の領域では、生産物市場は超過供給の状態にある。〇

利子率と国民所得の組み合わせが、IS 曲線以外の点のときは、財市場は均衡していません。

 IS 曲線よりも右上の点では、財市場が供給超過になっています。この場合は、企業は生産を減らし、IS 曲線で表される均衡国民所得になるまで国民所得が低下していきます。IS 曲線よりも左下の点では、財市場が需要超過になっています。この場合は、企業は生産を増やし、IS 曲線で表される均衡国民所得になるまで国民所得が増加していきます。

b 限界貯蓄性向が大きいほど、IS曲線はより緩やかな形状で描かれる。〇×

限界貯蓄性向は、国民所得が1単位増えたときに、増加する貯蓄の量です。限界消費性向をcとすると、限界貯蓄性向は、1-cで表されます。限界消費性向cは、国民所得が1単位増えたときに、増加する消費の量です。 ここで、設問から、IS曲線は次の式で導出されます。

この式から、IS曲線の傾きは、-(1-c)/iであることが分かります。そのため、限界貯蓄性向1-cが大きいほど、IS曲線の傾きは急になります。

c 政府支出の拡大と増税が同じ規模で実施された場合、IS曲線の位置は変わらない。×

政府支出を増やすと、均衡国民所得が増加します。よって、政府支出の増加は、IS 曲線を右にシフトします。逆に政府支出が減った場合は、IS 曲線が左にシフトします。同様に、減税の場合も、均衡国民所得が増加するため、IS 曲線が右にシフトします。

 逆に、増税の場合は、IS 曲線が左にシフトします。ただし、政府支出の増加に比べると、乗数効果は小さくなります。そのため、政府支出の拡大と増税が同じ規模である場合、IS曲線は右にシフトすることとなります。

d 投資の利子感応度が小さいほど、IS曲線はより急な形状で描かれる。〇投資の利子感応度、つまり投資の利子率弾力性が大きいほど、投資関数の傾きは緩やかになります。投資関数の傾きが緩やかになると、IS 曲線の傾きも緩やかになります。これは、投資関数の傾きが緩やかになると、利子率を減少したときの投資の増加が大きくなり、その分国民所得の増加も大きくなるからです。逆に、投資の利子率弾力性が小さいほど、投資関数の傾きは急になり、IS 曲線の傾きも急になります。

[解答群]

ア aとb

イ aとc

ウ aとd〇

エ bとc

オ cとd

IS曲線とLM曲線 【平成21年 第8問】(設問2)

次のIS-LM 分析に関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 下図は、生産物市場の均衡を表すIS 曲線と、貨幣市場の均衡を表すLM 曲線を描いている。

 まず、生産物市場の均衡条件は

    Y=C+I+G

 で与えられる。ここで、Y:GDP、C:消費支出、I:投資支出、G:政府支出である。

 消費関数は、

    C=C0+c(Y-T0)

 であり、C0:独立消費、c:限界消費性向(0<c<1)、T0:租税収入(定額税)である。

 また、投資関数は

    I=I0-ir

であり、I0:独立投資、i:投資の利子感応度、r:利子率である。

 さらに、政府支出は与件であり、G=G0 とする。

 この結果、IS曲線は

として導出される。①この式はIS曲線の傾きや位置を示すものである。

 次に、貨幣市場の均衡条件は

    M=L

 である。ここで、M:貨幣供給、L:貨幣需要である。

 貨幣需要関数は

    L=kY-hr

 で与えられ、k:貨幣需要の所得感応度、h:貨幣需要の利子感応度である。

 また、貨幣供給は与件であり、M=M0 とする。

 これらから、LM曲線が導出され、

 として示される。②この式はLM曲線の傾きや位置を表している。

(設問2)

 文中の下線部②について、LM曲線の特徴に関する説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a LM曲線より下方の領域では、貨幣市場は超過供給の状態にある。×

利子率と国民所得の組み合わせが、LM 曲線以外の点のときは、貨幣市場は均衡していません。LM 曲線よりも上の点では、貨幣が供給超過になっています。これは、利子率が均衡状態よりも高くなっており、貨幣需要が減り、供給の方が大きくなっているためです。

 この場合は、利子率は需給が均衡するまで低下していきます。一方、LM 曲線よりも下の点では、貨幣が需要超過になっています。これは、利子率が均衡状態よりも低くなっており、貨幣需要が増え、需要の方が大きくなっているためです。この場合は、利子率は需給が均衡するまで上昇していきます。

b 貨幣供給の増加はLM曲線を上方にシフトさせる。〇×

貨幣供給は、貨幣供給量(マネーサプライ)によって決定されます。貨幣供給量が増えると、貨幣供給曲線は右にシフトします。そうすると、貨幣市場を均衡させる利子率は低下します。よって、同じ利子率を実現するには、国民所得を増やす必要があります。そのため、利子率と国民所得の関係であるLM 曲線は右(下方)にシフトすることになります。

 逆に、貨幣供給量が減った場合は、貨幣供給曲線は左(上方)にシフトし、LM 曲線も左にシフトします。

c 貨幣需要の利子感応度が大きいほど、LM曲線はより緩やかな形状で描かれる。〇貨幣需要の利子感応度、つまり利子率弾力性は、利子率が1%変化した時に、貨幣需要が何%変化するかを表す指標です。利子率弾力性が大きいほど、貨幣需要曲線の傾きは緩やかになります。貨幣需要曲線の傾きが緩やかになると、LM 曲線の傾きも緩やかになります。よって、利子率弾力性が大きいほど、LM 曲線の傾きは緩やかになります。逆に、貨幣需要の利子率弾力性が小さいほど、貨幣需要曲線の傾きは急になり、LM 曲線の傾きも急になります。

d 貨幣需要の利子感応度がゼロの場合、LM曲線は垂直に描かれ、GDPの水準は貨幣市場から決定される。×〇貨幣需要の利子感応度がゼロになると、LM 曲線は垂直になります。LM 曲線が垂直になると、GDP はIS 曲線の位置に影響を受けなくなります。よって、GDP の水準はLM 曲線の位置に依存することになり、貨幣市場から決定されることになります。

[解答群]

ア aとc

イ aとd

ウ bとc〇×

エ bとd

オ cとd〇

IS曲線とLM曲線 【平成29年 第9問(設問2)】

下図は、IS 曲線と LM 曲線を描いている。この図に基づいて、下記の設問に答えよ。

(設問2)

 公債の資産効果を IS-LM 分析によって考察する。下記の記述のうち、最も適切なものはどれか。

  1. 資産効果は、家計の消費支出を刺激することで、IS 曲線を左方にシフトさせる。〇×資産効果は消費支出を刺激することでIS曲線を右方にシフトさせます。
  2. 資産効果は、必ず GDP を増加させる。〇×GDPが上昇するかどうかはIS曲線の右シフト幅とLM曲線の左シフト幅に依存するため、必ずGDPを増加させるとは言えません。
  3. 資産効果は、必ず利子率を上昇させる。×〇資産効果はIS曲線を右方シフトさせ、LM曲線を左方シフトさせることで必ず利子率を上昇させます。
  4. 資産効果は、貨幣需要を増加させることで、LM 曲線を右方にシフトさせる。×貨幣需要の増加は、LM曲線を左方シフトさせる

資産効果とは、保有資産の価値の大きさが消費に与える効果のことです。所得が不変であっても、保有資産残高が増えると豊かになったと感じ、消費を増やすという考え方です。

IS曲線とLM曲線の形状とシフト 【平成24年 第9問】

 IS-LMモデルでは、横軸にGDP、縦軸に利子率をとり、IS曲線とLM曲線を描く。IS曲線とLM曲線の形状とシフトに関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア GDPが増えると貨幣の取引需要も大きくなることから、貨幣市場の均衡利子率は低くなり、LM 曲線は右上がりに描かれる。〇×GDPが増えると貨幣の取引需要が大きくなることから、貨幣市場の均衡利子率は高くなります。貨幣市場の均衡利子率は低くなるのではありません。

イ 貨幣供給量を増やすと、貨幣市場を均衡させる利子率が低下することから、LM曲線は上方向にシフトする。×下 貨幣供給量を増やすと、貨幣市場を均衡させる利子率が低下することから、LM曲線は下方向にシフトします。

ウ 政府支出を拡大させると、生産物の供給も拡大することから、IS曲線は右方向にシフトする。〇政府支出を拡大させると、有効需要の原理により、生産物の供給は拡大します。すると、IS曲線は右方向にシフトします。

エ 利子率が高い水準にあると投資水準も高くなると考えられることから、生産物市場の均衡を表すIS曲線は、右下がりに描かれる。〇×利子率が高い水準にあると、投資は利子率の減少関数ですから、投資水準は低くなります。高くなるのではありません。

オ 流動性のわなが存在する場合、貨幣需要の利子弾力性がゼロになり、LM曲線は水平になる。〇×流動性のわなが存在する場合、貨幣需要の利子弾力性が無限大になります。ゼロではありません。

財政政策 【平成27年 第6問】

拡張的な財政政策、たとえば政府支出の拡大は、下図のIS曲線をISからIS′へとシフトさせる。ただし、YはGDP、rは利子率である。下図に関する説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 政府支出拡大の結果、利子率の上昇によって投資が減少するため、GDPはY1となる。〇

拡張的な財政政策、たとえば政府支出の拡大は、問題に示されている図のように、IS曲線をISからIS′へとシフトさせます。IS曲線が右方にシフトすると、均衡点がE0点からE1点へ変化し、均衡点のGDPは増加し、利子率も上昇します。つまり、財政政策では当初の狙いとしていたGDPの増加と共に、利子率の上昇という影響を引き起こします。 45度線分析においては、政府支出の増加は、乗数効果によってY0からY2 へと政府支出乗数倍だけGDPを増やすはずでした。この乗数効果は、図ではE0点からE2点のシフトとなります。45度線分析では、利子率は一定という前提を置いていましたので、利子率はr0という一定の水準のままです。しかし、IS-LM分析では、利子率が変化すると考え、利子率は一定という前提を外します。そうすると、均衡点はE2点ではなく、E1点となります。このとき、利子率はr0からr1に上昇し、GDPはY2からY1の水準まで減ってしまいます。よって、乗数効果ほどは、GDPは増加しないことになります。 財政政策によっていったんGDPが増えたE2点では、貨幣市場は均衡していない状態になります。つまり、貨幣の供給は一定であるにもかかわらず、GDPが増加したことにより貨幣の取引需要が増加するため、貨幣市場において超過需要が発生します。そのため、利子率の上昇を招き、利子率の上昇が民間の投資を締め出してしまいます。このように、財政政策が利子率の上昇を招き、投資を締め出してしまうことを「クラウディング・アウト」と呼びます。クラウディング・アウトの結果、乗数効果ほど、GDPは増加しないことになります。 このように、政府支出拡大の結果、利子率の上昇によって投資が減少するため、GDPはY1となります。

b E2では、貨幣市場において、貨幣の超過供給が発生している。×財政政策によっていったんGDPが増えたE2点では、貨幣市場は均衡していない状態になります。つまり、貨幣の供給は一定であるにもかかわらず、GDPが増加したことにより貨幣の取引需要が増加するため、貨幣市場において超過需要が発生します。なお、LM曲線よりも下の点では貨幣が超過需要になっているというのは、利子率が均衡状態よりも低くなっており、貨幣の資産需要が増え、需要の方が大きくなっているためであると説明することもできます。

c 「r1 - r0」で表される利子率の上昇は、政府支出拡大による、貨幣の取引需要増加の結果生じた。〇財政政策によっていったんGDPが増えたE2点では、貨幣市場は均衡していない状態になります。つまり、貨幣の供給は一定であるにもかかわらず、GDPが増加したことにより貨幣の取引需要が増加するため、貨幣市場において超過需要が発生します。貨幣市場において超過需要が発生すると、利子率は上昇します。

d 「Y1 - Y0」が政府支出の拡大分に相当する。×「Y1 - Y0」は政府支出が拡大したことによる、GDPの増加分です。45度線分析の乗数理論のように、政府支出の拡大分に政府支出乗数を乗じたほどまではGDPは増加しませんが、政府支出の拡大分だけしかGDPは増加しないということはありません。政府支出の拡大分の数倍ほどGDPは増加します。


[解答群]

ア aとc〇

イ aとdウ bとcエ bとd

財政政策、流動性のわな 【平成23年 第7問】

 経済が「流動性のわな」に陥った場合の説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 貨幣供給が増加しても伝達メカニズムが機能せず、利子率は低下するが、投資支出の増加が生じない。×

貨幣が供給超過になっている場合、通常、利子率は需給が均衡するまで低下していきます。しかし、流動性のわなが生じている場合、利子率はそれ以上低下しないというほど低くなっています。また、貨幣の需要が無限大となります。

 よって、利子率が変化することなく、貨幣の供給超過が解消される

b 政府支出の増加が生じてもクラウディング・アウトは発生しない。〇

クラウディング・アウトとは、財政政策が利子率の上昇を招き、投資を締め出してしまうことです。クラウディング・アウトの結果、乗数効果ほど、国民所得は増加しないことになります。

 しかし、流動性のわなが生じている場合は、クラウディング・アウトは発生しません。流動性のわなが生じている場合、財政政策によってIS 曲線が右方にシフトしても、利子率は上昇せず一定のままです。利子率が上昇しないことにより、民間の投資が減少することもないためです。

c 「流動性のわな」のもとでは、貨幣需要の利子弾力性はゼロになり、利子率が下限値に達すると、債券価格は上限値に到達する。×無限大 流動性のわなが生じている場合、利子率が低下することなく貨幣の需要が無限大となります。

d 「流動性のわな」のもとでは、GDP の水準は貨幣市場から独立であり、生産物市場から決定される。〇流動性のわなが生じている場合、金融政策を行っても効果が無く、財政政策が有効となります。よって、GDP の水準は生産物市場によって決定される

[解答群]

ア aとc×

イ aとd×

ウ bとc×

エ bとd〇

「流動性のわな」とは、利子率がゼロに近くなった場合に、債券の魅力が全くなくなり、誰も債券を持とうとしない現象を表します。「流動性のわな」の状態になると、全ての資産を貨幣で持とうとするため、貨幣の需要は無限大になります。

 貨幣需要で「流動性のわな」が生じている場合は、LM 曲線も水平になります。これは、国民所得が減少した場合でも、ある一定の利子率よりも低下しないためです。

 また、「流動性のわな」が生じている場合は、金融政策によってLM 曲線が右にシフトしても、国民所得は増加しなくなります。よって、利子率が既にかなり低い水準となっており、「流動性のわな」が生じている場合は、金融政策を行っても効果が無いことになります。このような場合は、財政政策の方が有効です。

財政・金融政策 【平成22年 第6問】(設問1)

 次の財政・金融政策の効果と有効性に関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 いま、生産物市場の均衡条件が

   Y=C+I+G

 で与えられ、YはGDP、Cは消費支出、Iは民間投資支出、Gは政府支出である。

 ここで、

 消費関数 C=C0+c(Y-T)

   C0:独立消費、c:限界消費性向(0<c<1)、T:租税収入

 投資関数 I=I0-ir

   I0:独立投資、i:投資の利子感応度、r:利子率

 とする。

 他方、貨幣市場の均衡条件は

   M=L

 であり、Mは貨幣供給、Lは貨幣需要である。

 ここで、

 貨幣需要関数 L=kY-hr

   k:貨幣需要の所得感応度、h:貨幣需要の利子感応度

 とする。

 これらを連立させることにより、均衡GDP は

 として求められる。

 上記の式から、①財政政策(政府支出)の乗数は

 である。

 また、②金融政策の乗数は

 である。

(設問1)

 文中の下線部①について、財政政策の効果に関する説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 貨幣需要の利子感応度が小さいほど、クラウディング・アウトの程度が小さく、財政政策に伴う所得拡大効果は大きくなる。〇×財政政策を実行すると、利子率も上昇します。貨幣需要の利子感応度が小さい場合、LM 曲線の傾きは急になり、貨幣市場が均衡するために必要となる利子率の上昇幅は大きくなります。よって、クラウディング・アウトも大きくなる

b 限界貯蓄性向が大きいほど、財政政策の乗数はより大きくなる。×

 IS 曲線では、限界消費性向c が大きいほど、乗数効果である1/1-c は大きくなります。よって、限界消費性向が大きいほど、利子率が低下したときに、大きく国民所得が増加します。そのため、限界消費性向が大きいほど、IS 曲線の傾きが緩やかになります。

 限界貯蓄性向は、「1-限界消費性向」です。よって、限界貯蓄性向が小さいほど、乗数効果は大きくなる

c 投資の利子感応度が大きいほど、クラウディング・アウトの程度が大きく、財政政策に伴う所得拡大効果は小さくなる。〇〇

投資の利子感応度が大きい場合、利子率の上昇に対する投資の減少幅が大きくなります。

 よって、クラウディング・アウトの効果も大きくなる

d 「流動性のわな」に陥った場合、財政政策の乗数は1/1-cで示される。×〇流動性のわなが生じている場合、貨幣市場の利子感応度hは無限大となります。よって、数式のk/hがゼロとなり、乗数は1/1-cとなります。このことは、流動性のわなが生じている場合に、金融政策を行っても効果が無く、財政政策だけが有効となることからもわかります。

[解答群]

ア aとb

イ a×とd〇×

ウ b×とc

エ b×とd〇×

オ cとd〇

財政・金融政策 【平成22年 第6問】(設問2)

 次の財政・金融政策の効果と有効性に関する文章を読んで、下記の設問に答えよ。

 いま、生産物市場の均衡条件が

   Y=C+I+G

 で与えられ、YはGDP、Cは消費支出、Iは民間投資支出、Gは政府支出である。

 ここで、

 消費関数 C=C0+c(Y-T)

   C0:独立消費、c:限界消費性向(0<c<1)、T:租税収入

 投資関数 I=I0-ir

   I0:独立投資、i:投資の利子感応度、r:利子率

 とする。

 他方、貨幣市場の均衡条件は

   M=L

 であり、Mは貨幣供給、Lは貨幣需要である。

 ここで、

 貨幣需要関数 L=kY-hr

   k:貨幣需要の所得感応度、h:貨幣需要の利子感応度

 とする。

 これらを連立させることにより、均衡GDP は

 として求められる。

 上記の式から、①財政政策(政府支出)の乗数は

 である。

 また、②金融政策の乗数は

 である。

(設問2)

 文中の下線部②について、金融政策の効果に関する説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 貨幣需要の利子感応度が小さいほど、貨幣供給の増加に伴う利子率の低下幅が大きく、金融政策の所得拡大効果が大きくなる。×〇貨幣需要の利子感応度が小さい場合、需給を均衡させるためには大幅に利子率を低下させる必要があります。利子率が大幅に低下すると、投資の増加も大きくなるため、金融政策の効果は高まります。

b 投資の利子感応度が大きいほど、利子率の低下に伴う民間投資支出の拡大幅が大きく〇、金融政策の有効性が高まる。〇

c 投資の利子感応度が無限大の場合、金融政策の乗数はゼロになる。×投資の利子感応度が大きい場合、利子率の低下に対する投資の増加が大きくなり、金融政策の効果は高まります。金融政策の効果があるため、金融政策の乗数はゼロではないことがわかります。

d 「流動性のわな」に陥った場合、金融政策の乗数は1/kになる。×〇×

流動性のわなが生じている場合に、金融政策を行っても効果が無く、財政政策だけが有効となります。よって、金融政策の乗数はゼロとなります。

 このことは、設問で与えられている数式を見てもわかります。

 設問では、金融政策の乗数は次の式で与えられています。

 流動性のわなが生じている場合、貨幣市場の利子感応度hは無限大となります。よって、数式のi/hがゼロとなるため、この数式もゼロとなります。


ア a×とb〇

イ a×とd

ウ b〇とc

エ b〇とd〇

オ cとd

労働需要

 労働需要に関する次の文中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 古典派によると、( A )が低下するにつれて( B )は増加する。そのため、( B )関数は、( A )の( C )関数となる。グラフで表すと、( B )曲線は( D )となる。古典派は、企業は労働の限界生産力が( A )率に等しくなるように労働を需要するとしたが、これは、古典派の第一公準と呼ばれる。


ア A:実質賃金〇 B:労働需要〇 C:減少〇 D: 右下がり〇

イ A:実質賃金 B:労働需要 C:増加 D: 右上がり

ウ A:名目賃金〇× B:労働供給〇× C:減少 D: 右上がり

エ A:名目賃金 B:労働供給 C:増加〇× D: 右下がり〇

労働需要は、実質賃金の減少関数です。

 実質賃金が上がる → 労働需要は減少する

 実質賃金が下がる → 労働需要は増加する 

〈グラフ〉労働需要曲線は右下がり 

名目賃金をW、物価水準をPとすると、実質賃金は(W/P)

実質賃金が低下すると、労働需要は増加します。このように、労働需要は名目賃金Wではなく、実質賃金(W/P)によって変化します。

 実質賃金が低下すると、労働需要は増加します。よって、労働需要は実質賃金の減少関数となります。

 労働需要曲線は、実質賃金と労働需要量の関係を表す曲線です。実質賃金が低下するにつれて労働需要が増加するため、労働需要曲線は右下がりとなります。

労働供給

 労働供給に関する次の文中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


 古典派によると、( A )が上昇するにつれて( B )が増加する。そのため、( B )関数は、( A )の( C )関数となる。グラフで表すと、( B )曲線は( D )となる。古典派は、労働者は、労働の限界不効用が( A )率に等しくなるように労働を供給するとしたが、これは、古典派の第二公準と呼ばれる。


ア A:実質賃金〇 B:労働供給〇 C:減少 D: 右下がり

イ A:実質賃金 B:労働供給 C:増加〇 D: 右上がり〇

ウ A:名目賃金 B:労働需要 C:増加 D: 右下がり

エ A:名目賃金 B:労働需要 C:減少 D: 右上がり

労働供給は、実質賃金の増加関数です。

 実質賃金が上がる → 労働供給は増加する

 実質賃金が下がる → 労働供給は減少する

〈グラフ〉労働供給曲線は右上がり

労働供給に関する考え方は、古典派とケインズ経済学では異なるものである

実質賃金が上昇すると、労働供給は増加します。古典派によると、このように、労働供給は名目賃金Wではなく、実質賃金(W/P)によって変化します。

 実質賃金が上がれば、労働供給は増加します。よって、労働供給は実質賃金の増加関数となります。

 労働供給曲線は、実質賃金と労働供給量の関係を表す曲線です。実質賃金が上昇するにつれて労働供給が増加するため、労働供給曲線は右上がりとなります。

労働市場

 労働市場に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。


ア 古典派によると、労働需給調整に関して賃金率の伸縮的な調整メカニズムを通じて常に労働市場の均衡が成立する。〇古典派によると、賃金率の伸縮的な調整メカニズムを通じて常に労働市場の均衡が成立し、完全雇用が達成されます。労働市場が均衡している状態では、労働需要と労働供給が一致しており、働く意思と能力をもっている労働者が、現行の実質賃金率で、すべて雇用されている状態である完全雇用が達成されています。

イ 古典派によると、右下がりの労働需要曲線と右上がりの労働供給曲線の交点によって、労働量が決定されるが、均衡点では非自発的失業が存在する。×古典派によると、右下がりの労働需要曲線と右上がりの労働供給曲線の交点によって、労働量が決定されます。この均衡点では非自発的失業が存在しないことになります。存在するのではありません。非自発的失業とは、現行の賃金率で働くことを希望しているにもかかわらず、就業できない労働者が存在することによる失業のことをいいます。労働需給調整に関する古典派の見解は、賃金率の伸縮的な調整メカニズムを通じて常に完全雇用の均衡が成立するというものです。

ウ ケインズ経済学によると、名目賃金は下方硬直性をもち、労働市場は常に均衡状態にある。×ケインズ経済学によると、名目賃金は下方硬直性をもちます。ここまでの記述は正しいです。名目賃金の下方硬直性とは、名目賃金は下方には下がらないとするもので、労働者は貨幣賃金の引き下げには強く抵抗することなどがその理由としてあげられます。しかし、ケインズ経済学では、労働市場は基本的に不均衡状態にあると考えられています。労働市場は常に均衡状態にあるのではありません。労働市場が常に均衡状態にあると考えるのは、古典派です。

エ ケインズ経済学によると、名目賃金は下方硬直性をもつために、非自発的失業が存在しない。×ケインズ経済学によると、名目賃金は下方硬直性をもつので、労働市場は基本的に不均衡状態にあると考えられています。労働供給を労働需要が上回る際には、非自発的失業が存在することになります。非自発的失業が存在しないと考えるのは、古典派です。

古典派の労働市場は、次のようになります。

労働需要

 古典派の第一公準:企業は、労働の限界生産力が実質賃金率に等しくなるように労働を需要する

労働供給

 古典派の第二公準:労働者は、労働の限界不効用が実質賃金率に等しくなるように労働を供給する

労働市場賃金率の伸縮的な調整メカニズム

 ⇒ 常に完全雇用の均衡が達成

 ケインズ経済学の労働市場は、次のようになります。

労働需要

 古典派の第一公準:認める

労働供給

古典派の第二公準:認めない

 完全雇用が達成されるまでは名目賃金率の関数

労働市場名目賃金の下方硬直性

⇒ 非自発的失業者の発生

 古典派とケインズ経済学の相違は、労働市場について最も顕著に表れます。

効率賃金仮説

 効率賃金仮説に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

ア 企業が均衡点より高い賃金を支払うのは、効率を重視して賃金は決められると考えられるからである。×〇実質賃金は限界生産力に等しくなるように企業は賃金を支払うという考えによるのではなく、効率を重視して賃金は決められるという考えによるものが、効率賃金仮説です。そのため、均衡賃金よりも企業が実際に支払う賃金は高くなります。

イ 企業が均衡点より高い賃金を支払うと、高い賃金に見合っただけ働かないといけないと感じる精神的ストレスにより、離職率は高くなる。×賃金が低い場合、労働者が簡単に他社に転職するなどの要因で離職率が高くなります。離職率が高くなると、企業は頻繁に採用・訓練する必要があり余計なコストがかかります。一方、賃金をより高くすれば離職率を減らせるため、採用・訓練のコストを下げることができます。そして、企業は均衡点よりも高い賃金を支払う方が、高い利潤を上げられる可能性があります。このように、企業が均衡点より高い賃金を支払うと、離職率は低くなるというメリットがあります。離職率は高くなるのではありません。

ウ 企業が均衡点より高い賃金を支払うと、企業に貢献した労働を超えた誘因があることにより、労働の質が低下する。×質の高い労働者は希少なため、雇ったり離職を防いだりするためには賃金を高くする必要があります。そうしないと、他社に奪われてしまうからです。質の高い労働者を雇うことで、より高い利潤を上げられる可能性があります。このように、企業が均衡点より高い賃金を支払うと、労働者の質が高くなるというメリットがあります。労働の質が低下するのではありません。

エ 企業が均衡点より高い賃金を支払うと、誠心誠意働かなくても所得が得られるため、労働者の労働意欲が低下する。×業界の水準よりも高い給与をもらっている労働者は、なんとしてもその会社で働き続けたいと考えるでしょう。そのため、仕事をさぼらず勤勉に働くと考えられます。逆に、業界の水準よりも安い給与で働いている労働者は、たとえ解雇されてもより良い条件で他社に就職できるため、まじめに働かないかもしれません。このように、企業が均衡点より高い賃金を支払うと、労働者の労働意欲が高まるというメリットがあります。労働意欲が低下するのではありません。

効率賃金仮説とは、効率を重視して賃金は決められるため、実質賃金は限界生産力よりも高くなる、すなわち、均衡賃金よりも企業が実際に支払う賃金は高くなると考えるものです。効率賃金理論によると、企業が均衡点より高い賃金を支払うメリットとして、次のものがあります。

 ●離職率が減る

 ●労働者の質が高くなる

 ●労働者の労働意欲が高まる 賃金の下方硬直性を説明する理論の1つに「効率賃金仮説」がある

総供給曲線

 総供給曲線に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

ア 古典派では、物価水準が変化しても、総供給である国民所得は変化しないため、総供給曲線は横軸に対して水平になる。×古典派では、物価水準がどのような値に変化しても、名目賃金が柔軟に変化するため、必ず労働市場が均衡し完全雇用が実現します。よって、物価水準Pが変化しても、労働市場の均衡状態は変化せず、均衡労働量も変化しないことになります。すると、生産量も変化しないため、古典派では、物価水準Pが変化しても、総供給である国民所得は変化しません。よって、古典派の総供給曲線は、完全雇用の際の国民所得で横軸に対して垂直になります。横軸に対して水平ではありません。

イ 古典派では、物価水準が上昇すると、総供給である国民所得は増加するため、総供給曲線は右上がりになる。×古典派の総供給曲線は、完全雇用の際の国民所得で横軸に対して垂直になります。

ウ ケインズ経済学では、非自発的失業が発生している場合には、総供給曲線は右上がりとなる。〇ケインズ経済学において、非自発的失業が発生している場合は、名目賃金が一定値よりも低下しないため、完全雇用の状態に比べて労働量が少なくなっています。ですから、国民所得も、完全雇用の状態に比べて少なくなります。この状態から、物価水準Pが少し上昇すると、実質賃金(W/P)は少し低下します。実質賃金が低下すれば、完全雇用の状態に少し近づくため、非自発的失業が減り、労働量が増えます。すると、生産量が増え、国民所得も少し増加します。このとき、総供給曲線は右上がりとなります。

エ ケインズ経済学では、完全雇用が達成されると、総供給曲線は横軸に対して水平となる。×ケインズ経済学において、物価水準Pが上昇するにつれて、国民所得も増加する現象は、完全雇用が実現するまで続きます。完全雇用が実現している場合は、古典派の場合と同じになり、総供給曲線は横軸に対して垂直になります。横軸に対して水平ではありません。

 総供給曲線AS曲線:Aggregate Supply Curve)は、ある物価水準が与えられたときに、雇用がどれだけ行われて、生産がどれぐらい行われるかを表す曲線です。

物価水準に依存せず、完全雇用の際の国民所得で垂直な形になります。

●ケインズ経済学の総供給曲線

物価が低いときは右上がりで、完全雇用を達成した後は横軸に対して垂直になります。

総需要曲線

 総需要曲線に関する次の文中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 ( A )は、IS-LM分析における( B )のシフトから導出される。IS-LM分析において、物価水準が下落すると、実質マネーサプライが増加するので、LM曲線は( C )にシフトする。すると、右下がりのIS曲線、右上がりのLM曲線の場合、均衡点は右下方に移動し、均衡国民所得は増加する。よって、( A )は、( D )となる。


ア A:AD曲線 B:IS曲線 C:左方 D: 右上がり

イ A:AD曲線〇 B:LM曲線 C:右方〇 D: 右下がり〇

ウ A:AS曲線 B:IS曲線 C:右方〇 D: 右上がり

エ A:AS曲線 B:LM曲線 C:左方 D: 右下がり

総需要曲線AD曲線:Aggregate Demand Curve)は、財市場と貨幣市場を同時に均衡させる国民所得と物価水準の組み合わせを表す曲線です。

〈グラフ〉一般に、右下がり

〈数 式〉均衡国民所得は、物価の減少関数

 物価が上昇する → 均衡国民所得が減少する

  物価が下落する → 均衡国民所得が増加する

総需要曲線は、IS-LM分析におけるLM曲線のシフトから導出されます

 IS-LM分析において、物価水準が下落すると、実質マネーサプライが増加するので、LM曲線は右方にシフトします

 右下がりのIS曲線、右上がりのLM曲線の場合、物価水準が下落すると、均衡点は右下方に移動し、均衡国民所得は増加します。よって、総需要曲線は、右下がりとなります。

古典派の総需要・総供給分析

 古典派の総需要・総供給分析に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。


ア 総需要・総供給分析では、総需要曲線と総供給曲線の交点で均衡国民所得と均衡利子率が決定される。〇×総需要・総供給分析AD-AS分析)では、総需要曲線と総供給曲線の交点で均衡国民所得と均衡物価水準が決定されます。均衡利子率ではありません。

イ 古典派によると、総需要・総供給分析で決定される均衡国民所得は完全雇用の際の国民所得水準を下回る。×古典派によると、均衡国民所得は完全雇用の際の国民所得水準となります。古典派では、労働市場は常に均衡し、完全雇用が達成されているからです。均衡国民所得は完全雇用の際の国民所得水準を下回るわけではありません。

ウ 古典派によると、総需要・総供給分析で決定される均衡国民所得は、財市場、貨幣市場を同時に均衡させているが、労働市場は均衡させていない。〇×古典派によると、財市場、貨幣市場、労働市場のすべてが均衡しています。均衡国民所得が、労働市場を均衡させていないということはありません。

エ 古典派では、総供給曲線が横軸に対して垂直なため、均衡国民所得は総供給曲線の水準で決定される。〇古典派では、総供給曲線が横軸に対して垂直なため、均衡国民所得は総供給曲線の水準で決定されます。これは、国民所得は、総需要には全く依存せず、総供給によって決まるということです。よって、古典派は、供給によって需要が生み出されると考えます。これを法則として表したのが「セイの法則」です。セイの法則は、「供給はそれ自身に等しい需要を生み出す」という考え方です。

古典派の総需要曲線:右下がり

古典派の総供給曲線:横軸に対して垂直

〈グラフ〉総需要曲線と総供給曲線の交点で、均衡国民所得と均衡物価水準は決定される均衡物価水準はPO、均衡国民所得は完全雇用の際の国民所得水準Y0

総需要・総供給分析のことをAD-AS分析

AD曲線(総需要曲線)とAS曲線(総供給曲線)に着目して、均衡国民所得の決定について分析するからです。

ケインズ経済学の総需要・総供給分析

 ケインズ経済学の総需要・総供給分析に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。


ア 総供給曲線の右上がりの部分で総需要曲線と交わる場合は、労働市場は均衡しておらず、非自発的失業が存在する。×〇総供給曲線の右上がりの部分で総需要曲線と交わる場合は、労働市場は均衡しておらず、非自発的失業が存在します。国民所得は、完全雇用の際の国民所得よりも小さいとなっているため、非自発的失業が存在することになります。

イ 総供給曲線の右上がりの部分で総需要曲線と交わる場合は、労働市場は均衡しており、非自発的失業が存在しない。×総供給曲線の右上がりの部分で総需要曲線と交わる場合は、労働市場は均衡していません。また、非自発的失業が存在しています。

ウ 総供給曲線の垂直の部分で総需要曲線と交わる場合は、労働市場は均衡しており、非自発的失業が存在する。×総供給曲線の垂直の部分で総需要曲線と交わる場合は、古典派と同じように、労働市場は均衡していますので非自発的失業は存在しません

エ 総供給曲線の垂直の部分で総需要曲線と交わる場合は、完全雇用が実現されていない。×総供給曲線の垂直の部分で総需要曲線と交わる場合は、古典派と同じように、労働市場は完全雇用が実現しています。

ケインズ経済学の総需要曲線: 右下がり

ケインズ経済学の総供給曲線:物価が低いときは右上がりで、完全雇用を達成した後は横軸に対して垂直

〈グラフ〉総需要曲線と総供給曲線の交点で、均衡国民所得と均衡物価水準は決定される

ケインズ経済学の場合、総供給曲線の右上がりの部分で総需要曲線と交わる場合と、総供給曲線の垂直の部分で総需要曲線と交わる場合では、労働市場の均衡の状態が異なることに注意

古典派の拡張的政策の効果

 次の図は、古典派のケースにおける拡張的政策を実施した場合の状況を表している。ここでは、拡張的政策を実施する前と後の総需要曲線を描いている。このとき、古典派の拡張的政策の効果に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

ア 拡張的政策を実施する前の均衡国民所得はY0、物価水準はP0である。〇

イ 政府が政府支出を増加させても、均衡国民所得はY0のままである。〇

ウ 日本銀行がマネーサプライを増加させても、均衡国民所得はY0のままである。〇

エ 拡張的政策を実施しても、物価水準は変化しない。×拡張的政策を実施すると、A点からB点に均衡点は移動し、物価水準は上昇します。物価水準は変化しないのではありません。

拡張的政策には、次のものがあります。

拡張的な財政政策

 政府支出を増加させる政策、あるいは、減税をする政策

→ IS曲線が右方にシフト

→ IS曲線とLM曲線の交点も右方にシフト

⇒ AD曲線も右方にシフト

拡張的な金融政策金融緩和政策

 マネーサプライを増加させる政策(買いオペレーション、法定準備率の低下)

→ LM曲線が右方にシフト

→ IS曲線とLM曲線の交点も右方にシフト

 古典派の拡張的政策の効果は、次のようになります。

〈均衡国民所得〉:一定 ⇒ 無効

〈物 価 水 準〉:上昇

ケインズ経済学の拡張的政策の効果

 次の図は、ケインズ経済学のケースにおける拡張的政策を実施した場合の状況を表している。ここでは、拡張的政策を実施する前の総需要曲線をAD1、拡張的政策を実施した後の総需要曲線をAD2、AD3としている。このとき、ケインズ経済学の拡張的政策の効果に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

ア 拡張的政策を実施する前の均衡国民所得はY2、物価水準はP2である。×

イ 政府が政府支出を増加させ、AD1からAD2へと総需要曲線が右方にシフトした場合、均衡国民所得は増加する。〇

ウ 日本銀行がマネーサプライを増加させ、AD1からAD2へと総需要曲線が右方にシフトした場合、労働市場では非自発的失業が増加する。×

エ 総需要曲線がAD3で表される場合、さらに拡張的政策を実施しても、物価水準は変化しない。×

物価の変化

 物価の変化に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。


ア インフレーションとは、物価が持続的に低下する現象のことをいい、貨幣価値の下落を意味する。×

イ デフレーションとは、物価が持続的に低下する現象のことをいい、債権者から債務者への所得再分配を生じさせる。×債務者にとっては債務の実質的な負担が増大することになり、債権者にとっては債権の実質的な価値が高まることになります。よって、デフレーションは、債務者から債権者への所得再分配を生じさせます。債権者から債務者への所得再分配ではありません。

ウ ディマンドプル・インフレーションは、発生原因が需要サイドにあるインフレである。〇ディマンドプル・インフレーションは、景気の過熱が原因となり、総需要が総供給を超えることによって生じるインフレのことをいい、需要インフレーションともいいます。発生原因が需要サイドにあるインフレです。

エ コストプッシュ・インフレーションは、需要側である総需要曲線が右にシフトすることで発生するインフレである。〇×コストプッシュ・インフレーションは、賃金や原材料費などの高騰が原因となり、生産費用(賃金、原材料、燃料費など)が上昇することによって生じるインフレのことをいい、コスト・インフレーションともいいます。発生原因が供給サイドにあるインフレです。需要側である総需要曲線が右にシフトすることで発生するインフレは、ディマンドプル・インフレーションです。

ディマンドプル・インフレーション

 需要側である総需要曲線が右にシフトすることで発生するインフレ

コストプッシュ・インフレーション

 総供給曲線が左にシフトすることで発生するインフレ

 デフレーションが経済に及ぼす影響

 デフレーションが経済に及ぼす影響に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

ア デフレーションにより、実質利子率は低下する。×デフレーションの進行はインフレ率(物価上昇率)がマイナスとなりますので、実質利子率を上昇させることになります。実質利子率は低下するのではありません。

イ デフレーションにより、貨幣の実質価値は低下する。×貨幣の実質価値は高まります

ウ デフレーションにより、債務者から債権者への所得再分配が生じる。〇債務者から債権者への所得再分配を生じさせる

エ デフレーションにより、名目賃金が一定であると、実質賃金は低下する。×実質賃金は、名目賃金を物価で割ることによって求められます。デフレーションが生じると、名目賃金が一定である場合、実質賃金は上昇します。実質賃金は低下するのではありません。

デフレーションとは、物価が持続的に低下することをいいます。このデフレーションが経済に及ぼす影響には、次のようなものがあります。

 ●実質利子率の上昇

 ●貨幣の実質価値の向上

 ●債務者から債権者への所得再分配

 ●デフレスパイラル

 ●実質賃金の上昇

フィリップス曲線

 フィリップス曲線に関する次の文中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
 名目賃金上昇率(あるいは( A ))と( B )の関係を表した曲線がフィリップス曲線である。フィリップス曲線は、( A )が高い状況では( B )が低下し、逆に( B )が高いときは( A )が低下することを意味しており、これは、インフレーションと失業の( C )を示している。グラフでは( D )の曲線として描かれる。フィリップス曲線と横軸が交わる点は、( A )をゼロにするような失業率を表しており、M.フリードマンは、この失業率を自然失業率と呼んだ。

ア A:物価上昇率〇 B:失業率〇 C:トレードオフの関係〇 D: 右下がり〇

イ A:物価上昇率 B:雇用率 C:トレードオフの関係 D:右上がり

ウ A:労働生産性上昇率 B:失業率 C:減少関数の関係〇 D:右上がり

エ A:労働生産性上昇率 B:雇用率 C:減少関数の関係〇 D:右下がり〇

 

名目賃金上昇率(あるいは物価上昇率)と失業率の関係を表した曲線が、フィリップス曲線です。フィリップス曲線は、〈グラフ〉右下がりに表されます。

A.W.H.フィリップスは、19世紀の半ばからの100年間にわたるイギリスの統計から、名目賃金上昇率と失業率にトレードオフの関係逆相関関係)があることを指摘しました。両者の関係を表した曲線がフィリップス曲線です。その後、アメリカの経済学者であるサミュエルソンが、物価上昇率(インフレ率)と失業率にも負の相関関係があることを示しました。これもフィリップス曲線と言われますが、区別して物価版フィリップス曲線と呼ばれることもあります。

 名目賃金上昇率(あるいは物価上昇率)と失業率の関係がトレードオフの関係にあるので、フィリップス曲線をグラフで表すと、右下がりの曲線となります。

物価と景気の関係

 景気循環の過程で、デフレーションは抜けたものの、まだインフレーションになっていない状態を表す用語として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


【解答群】

ア リフレーション〇

イ ディスインフレーション〇×

ウ スタグフレーション

エ ハイパーインフレーション

オ コストプッシュ・インフレ

リフレーションリフレ

 景気循環の過程で、デフレーションは抜けたものの、まだインフレーションになっていない状態

ディスインフレーションディスインフレ

 景気循環の過程で、インフレーションは抜けたものの、まだデフレーションになっていない状態

スタグフレーション

 景気が停滞しているにも関わらず、インフレーション(物価上昇)が続く状態

ハイパーインフレーションハイパーインフレ

 猛烈な勢いで進むインフレーション

消費の理論

 消費の理論に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。


ア ケインズは、消費は所得の絶対水準に依存し、所得が上昇しても平均消費性向は一定であるとした。×消費は所得の絶対水準に依存し、所得が上昇すれば平均消費性向は低下するとしたのが、ケインズの消費関数理論です。これは、所得の絶対水準が上昇すれば消費が増大するので絶対所得仮説ともいわれます。

イ モジリアーニ、ブランバーグ、安藤らは、消費は生涯所得に依存するとし、時間的相対所得仮説を提唱した。× F.モジリアーニ、R.ブランバーグ、A.K.安藤らは、消費は生涯所得に依存するとし、ライフサイクル仮説を提唱しました。時間的相対所得仮説ではありません。

ウ フリードマンは、消費はもっぱら恒常所得に依存するとし、恒常所得仮説を提唱した。〇M.フリードマンは、現在の所得を恒常所得と変動所得に分け、消費はもっぱら恒常所得に依存するとし、恒常所得仮説を提唱しました。

エ デューゼンベリーは、消費者の消費水準を決定するのは、現在及び過去の所得のうちの最高所得水準であるとし、ライフサイクル仮説を提唱した。 J.S.デューゼンベリーは、消費者の消費水準を決定するのは、現在及び過去の所得のうちの最高所得水準であるとし、時間的相対所得仮説を提唱しました。

ライフサイクル仮説(F.モジリアーニ、R.ブランバーグ、A.K.安藤ら)

 個人の今期の消費は、今期の所得ではなく、一生の間に得られる所得によって決められる

恒常所得仮説(M.フリードマン

 消費は恒常所得によって決められる

相対的所得仮説(J.S.デューゼンベリー

 ・時間的相対的所得仮説

 消費は現在の所得のみに依存するのではなく、過去の最高所得にも依存する

 ・空間的相対的所得仮説

 消費は自己の所得のみならず周囲の同一所得階層の社会的平均消費にも依存する

投資の理論

 投資は、国民所得の変化分に比例して変動することを表す用語として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


【解答群】

ア ケインズの投資の限界効率理論

イ 加速度原理〇

加速度原理とは、投資は、国民所得の変化分に比例して変動するというものです。加速度原理においては、必要とされる資本ストックの調整が各期の設備投資によって完全に達成されるものとし、資本ストックの調整速度が1であると仮定しています。資本ストックの調整速度とは、望ましい資本ストックへの調整のうち、各期の設備投資によって実際に調整される比率のことをいいます。
資本係数Vは、資本ストックと生産量の比率を表す定数となります。加速度原理では、資本係数は一定だという仮定を置きます。すると、次のように表されます。

 投資額=VX国民所得の増加額

ウ ストック調整原理〇×

エ トービンのq理論

ケインズの投資の限界効率理論

 投資の限界効率と利子率が等しくなる水準まで投資は行われる

加速度原理

 投資は、国民所得の変化分に比例して変動する

ストック調整原理

 今期の望ましい資本ストック水準と前期末の資本ストックとの間の一定割合だけ投資が実現される

トービンのq理論

 企業の市場価値と現在の資本ストックとの比較によって、投資は決定される

 トービンのq>1のとき → 投資は実行される

 投資とは、固定資本形成のことで、投資は資本の増加分に相当することに注意してください。投資には、設備投資、在庫投資、住宅投資、公共投資があります。

トービンのq

 トービンのqに関する説明として、最も適切なものはどれか。

ア トービンのqによれば、投資の限界効率が利子率を上回る場合に、投資が実行される。

イ トービンのqは、資本の再取得価格を企業の市場価値で除したもので求められる。

ウ トービンのqは、資本の現在の収益性も、将来の期待される収益性も反映していない。

エ トービンのqが1より大きい場合、企業はその投資案を採択することになる。〇

トービンのq理論とは、企業の市場価値と現在の資本ストックとの比較によって、投資は決定されるという理論です。ト―ビンのqは、次のように示されます。

トービンのq = 企業の市場価値 ÷ 資本の再取得価格

 トービンのqにより、投資案について、次のように判断します。

 ●トービンのq > 1の場合

 企業は投資案を採択します。

 ●トービンのq < 1の場合

 企業は投資案を採択しません。

トービンのqは、「企業の市場価値」を「資本の再取得価格」で除したもので求められます。

 トービンのqは、資本の現在の収益性も、将来の期待される収益性も反映しています。なぜなら、トービンのqの計算式における「資本の再取得価格」は資本の現在の収益性を反映しているものであり、「企業の市場価値」は将来の期待される収益性を反映しているものだからです。

トービンのqが1より大きい場合、資本ストックの価値よりも企業の市場価値の方が大きく、これは市場が資本ストックの価値を超える企業評価をしていることになります。すなわち、その資本ストックを使って企業が生み出す利益の方が、企業が保有する資本ストックを市場で売却した金額よりも大きいことを表しています。したがって、追加的な投資をすることによって投資を上回る収益を期待することができるため、企業は投資を実行することになります。

貨幣の理論

 貨幣の理論に関する次の文中の空欄A~Dに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 ( A )とは、マネーサプライの増加は( B )水準を変化させるだけで実物経済には影響を与えないとする考え方をいう。また、( C )とは、経済の実物部門と貨幣部門とは明確に2つに区分されており、貨幣は実物経済に何ら影響を及ぼさず中立であるという考え方のことをいう。( A )において、( C )が成り立つ場合、名目マネーサプライがn倍になれば、( B )水準も( D )になる。

ア A:流動性選好説 B:利子率 C:貨幣の連携性 D: n倍

イ A:流動性選好説 B:物価 C:貨幣の連携性 D: 1+n倍

ウ A:貨幣数量説 B〇:利子率 C:貨幣の中立性〇 D: 1+n倍

エ A:貨幣数量説 B:物価 C:貨幣の中立性〇 D: n倍〇

貨幣数量説

 マネーサプライの増加は物価水準を変化させるだけで実物経済には影響を与えないとする考え方

貨幣の中立性貨幣の二分法貨幣のヴェール観

 経済の実物部門と貨幣部門とは明確に2つに区分されており、貨幣は実物経済に何ら影響を及ぼさず中立であるという考え方

 貨幣数量説では、貨幣需要は、名目国民所得によって決まると考えます。ケインズ型の貨幣需要関数と比べると、利子率の影響が含まれていない点に注意しましょう。

貨幣数量説とは、マネーサプライの増加は物価水準を変化させるだけで実物経済には影響を与えないとする考え方です。貨幣数量説は、「マネタリズム」と呼ばれるマクロ経済学の学派によって提唱されています。


 貨幣の中立性とは、経済の実物部門と貨幣部門とは明確に2つに区分されており、貨幣は実物経済に何ら影響を及ぼさず中立であるという考え方のことをいいます。これは、貨幣の二分法貨幣のヴェール観と呼ばれることもあります。

 貨幣数量説において、貨幣の中立性が成り立つ場合、名目貨幣供給がn倍になれば、物価水準もn倍になります。

国際貿易の理論

 為替レートは、自国通貨と外国通貨の購買力の比率によって決定されるという考えを表す用語として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。


【解答群】

ア マンデルフレミングモデル〇×

イ 購買力平価説〇

ウ 金利平価説

エ Jカーブ効果

購買力平価説

 為替レートは、自国通貨と外国通貨の購買力の比によって決まる

金利平価説

 為替レートは、自国通貨と外国通貨の金利の差によって決定される

Jカーブ効果

 邦貨建て為替レートが上昇(低下)し、円が減価(増価)し、円安(円高)になったとしても、価格は素早く反応するのに対して輸出入数量が変化するまでには時間がかかり数量調節が遅れる(マーシャル=ラーナーの条件が短期的に満たされない)ため、一時的に、貿易収支(経常収支)が悪化(改善)し、時間の経過とともにマーシャル=ラーナーの条件が満たされるに従って、貿易収支(経常収支)が改善(悪化)する」といった現象

 マクロ経済学におけるある国の通貨の購買力とその国の物価水準との関係は、ミクロ経済学における実質所得と価格の関係と同じと考えると理解しやすくなります。ミクロ経済学においては名目所得を価格で割ったものは実質所得とよばれますが、これは購買力を表している点に注目しましょう。

為替レートは、自国通貨と外国通貨の購買力の比によって決まるという考えを、購買力平価説といいます。 一国の通貨の購買力は、その国の物価水準の逆数と等しくなります。ある国におけるある財の価格の逆数は、その国の通貨1単位でその財を何単位購入することができるかを表します。これを一国全体ですべての財について集計化したものが物価水準ですので、ある国の物価水準の逆数は、その国の購買力を示します。よって、為替レートは、自国通貨と外国通貨の物価水準の逆比によって決まることになります。

 固定相場制

 次の図は、マンデルフレミングモデルに関して、固定相場制において、拡張的財政政策を実施した場合の状況を表している。国内利子率をr、海外利子率をr*とし、当初の均衡点はA点で表されるものとする。いま、小国モデル、完全資本移動、固定相場制、物価の硬直性、静学的な為替レート予想を仮定する。このとき、固定相場制における財政政策の効果に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

ア 仮定のうち、完全資本移動とは、資本移動は完全にできないことをいう。×

イ 国際収支は、BP曲線の上方では赤字、下方では黒字となる。×

ウ 政府支出が増加すると、IS曲線が右方にシフトし、新たなIS曲線と当初のLM曲線の交点においては資本流出が生じる。〇×

エ 固定相場制においては、財政政策は均衡国民所得を増加することに対して、有効である。×〇

 為替相場 (為替レート) とは、自国通貨と外国通貨の交換比率のことをいい、外国為替レート外国為替相場ともいわれます。

 ●固定為替相場制

 為替レートを一定水準に固定する制度

 マンデルフレミングモデルIS-LM-BP分析

財政政策 ⇒ 有効

金融政策 ⇒ 無効

完全資本移動」とは、内外資産は完全に代替的であり、資本移動は完全に自由であることをいいます。資本移動は完全にできないということではありません。なお、他の仮定については、次のとおりです。「小国モデル」とは、自国の経済変数が海外の経済変数に影響を与えないほど自国経済規模が世界経済に対して十分に小さいと仮定したモデルのことをいいます。「固定相場制」とは、為替相場(為替レート)を一定水準に固定する制度のことをいいます。「物価の硬直性」とは、物価は一定であり、物価水準は時間を通じて変動しないことをいいます。「静学的な為替レート予想」とは、将来の為替レートは現在と変わらないと予測すること(静学的期待)をいいます。

イ ×:

 BP曲線とは、国際収支を均衡させる国民所得Y と利子率rの組み合わせを表す軌跡のことをいいます。資本移動が完全に自由な場合、国内利子率が海外利子率を上回っていれば資本流入が生じ、国内利子率が海外利子率を下回っていれば資本流出が生じるため、国内利子率が海外利子率と一致しない限り資本移動が生じることになります。よって、国内利子率は海外利子率に等しくなるように調整がなされるので、次の図のように、BP曲線は横軸に対して水平となります。このときの国際収支は、BP曲線の上方では黒字、下方では赤字となります。上方では赤字、下方では黒字ではありません。

ウ ×:

 次の図において、当初、IS曲線(IS0)、LM曲線(LM0)、BP曲線がE0点において交差し、財市場、貨幣市場、国際収支が同時に均衡しています。このとき、均衡国民所得はY0であり、均衡利子率はr*です。ここで政府支出が増加すると、IS0からIS 1へとIS曲線が右方にシフトし、IS曲線とLM曲線の交点はE0点からE1点へ移動します。E1点では、均衡国内利子率r1は海外利子率r*よりも高くなります。すると、国内の高い利子率を目当てに資本流入が起こり、自国の中央銀行には大量の外国通貨がもち込まれます。資本流出が生じるのではありません。よって、記述は不適切です。

エ ○:

 資本流入が生じると、外国為替市場では外国通貨売りが増加し、外国通貨の超過供給が生じるため、外国通貨が減価し、外国通貨安・自国通貨高の圧力が働きます。固定相場制においては、固定為替相場(固定為替レート)を維持するために中央銀行は外国為替市場に介入して外国通貨買い・自国通貨売りをし、中央銀行はもち込まれた外国通貨に対して自国通貨への交換に応じなければなりません。

 中央銀行が自国通貨で外国通貨を購入すると、外国通貨が市場から吸収され、自国通貨が市場に供給されるので、政府が不胎化政策を行わない限り、マネーサプライが増加します。ここで、不胎化政策とは、政府が国内に流通しているマネーサプライを一定にすることをいいます。マネーサプライが増加すると、LM0からLM1へとLM曲線は右方にシフトします。このような中央銀行の買い介入は国内利子率が海外利子率より高い限り続くので、国内利子率が海外利子率と一致する水準まで右方にシフトし、LM曲線はIS曲線およびBP曲線と同時に交差します。よって、IS曲線とLM曲線の交点はE1点からE2点へ移動します。E2点において、IS1曲線、LM1曲線、BP曲線が交差し、財市場、貨幣市場、国際収支が同時に均衡し、均衡国民所得は増加しY2となります。したがって、固定相場制において、財政政策は均衡国民所得を増加することに対して有効となります。よって、記述は適切です。

 変動相場制

 次の図は、マンデルフレミングモデルに関して、変動相場制において、拡張的財政政策を実施した場合の状況を表している。国内利子率をr、海外利子率をr*とし、当初の均衡点はE0点で表されるものとする。いま、小国モデル、完全資本移動、変動相場制、物価の硬直性、静学的な為替レート予想を仮定する。このとき、変動相場制における財政政策の効果に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

ア 均衡点E0点において、政府支出を増加し拡張的財政政策を実施すると、LM曲線が右方にシフトする。〇× 均衡点E0点において、政府支出を増加し拡張的財政政策を実施すると、次の図のように、IS0からIS1へとIS曲線は右方にシフトし、均衡点はE0点からE1点へ移動します。LM曲線がシフトするのではありません。

イ IS曲線が右方にシフトした後のLM曲線との交点では、資本流出が起きる。×図のように、IS曲線は右方にシフトした後のE1点では、均衡国内利子率r1は海外利子率r*よりも高くなります。すると、国内の高い利子率を目当てに資本流入が起こり、自国の中央銀行には大量の外国通貨が持ち込まれます。資本流出ではありません。

ウ IS曲線が右方にシフトした後のLM曲線との交点では、貿易収支が改善される。〇変動相場制においては、資本流入による自国通貨の需要増大のため自国通貨建て為替相場が下落し(自国通貨が増価し)、自国通貨高・外国通貨安となります。自国通貨高・外国通貨安により、自国の輸出製品の価格が上昇し、輸入製品の価格は下落するため、輸出が減少し、輸入が増大して、純輸出が減少します。そのため、貿易収支が悪化します。貿易収支が改善するのではありません。

エ 変動相場制においては、財政政策は均衡国民所得を増加することに対して、無効である。×〇

E1点において、輸出が減少し、輸入が増大すると、純輸出が減ります。純輸出は総需要を構成する要素の一つです。ですから、総需要が減少します。総需要が減ると、IS1からIS0へとIS曲線は左方へシフトします。この左方シフトは均衡国内利子率が海外利子率r*に一致するまで続きます。結局、IS曲線は元のIS0の位置まで戻るため、均衡点はE1点からE0点へ移動します。E0点において、IS曲線、LM曲線、BP曲線が交差し、財市場、貨幣市場、国際収支が同時に均衡し、均衡国民所得は変化せずY0のままとなります。したがって、変動相場制において、財政政策は均衡国民所得を増加することに対して無効となります。



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